日本人のカップル（藤井美菜とオダギリジョー）、地元で有名な韓国の議員とその息子、ギャングや娼婦、詐欺師に謎の老人といった多彩な人々を乗せて出航した退役軍艦の船上で当たり前のように差別が横行し、日本人の青年がそのことに対して文句を言うが……。その導入部を観たときは、これは韓国の鬼才キム・ギドクが独自の視点で『パラサイト 半地下の家族』のような格差社会を描いた映画なのか？と思ったけれど、そんな生ぬるいものではなかった！！ 船が空中の未知の空間に入り、そこから抜け出す手立てが分からなくなる中盤から、限られた食料をめぐる暴動が起こり、酒とドラッグ、セックスにまみれた人間の本性が露になっていく。正義面している優しそうな人間も、極限状態になったらどんな風に変貌するのか分からない。同じ過ちを繰り返し、それを抑えることができない人間という“愚かな”生き物の正体をギドクが手加減なしで炙り出した問題作。覚悟して観よ！