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デーモン閣下

私が嫉妬したアーティスト Vol.3 デーモン閣下が感服した2人の男

ナタリー

19/11/1(金) 17:00

第一線で活躍するアーティストに、思わず嫉妬するほど衝撃を受けた人物やバンドについて話を聞くこの連載。今回は鮮烈な地球デビューから早34年、10月16日には劇団☆新感線とのコラボレーション作品「うた髑髏(どくろ) -劇団☆新感線劇中歌集-」をリリースするなど、今なお精力的にアート活動を続けるデーモン閣下に登場していただいた。10万56年生きてきた悪魔でさえもうらやむアーティストとは。

聖飢魔IIでもできなかったパフォーマンス

吾輩が嫉妬を覚えたアーティストは数少ないが、そのうちの1人がDJ OZMAだ。魔暦8(2006)年の「NHK紅白歌合戦」の常識破りなステージを観て、うらやましくなってしまったのだ。DJ OZMAの話をする前に、まずは聖飢魔IIとNHKの思い出を話しておこう。魔暦前7(1992)年のことだが、我々は「NHK青春メッセージ」という番組に出演した。ご存知の通り成人の日に放送されていたNHKの看板番組だが、この番組には今の天皇陛下、当時の皇太子殿下が毎年ご出席なさっていた。注目度が高く、しかも生放送。「いまだかつて誰もやらなかったパフォーマンスをガツン!と見せつけてやる」と吾輩が楽屋で言い出したのだ。「例えば消防法を無視して、ステージで火を吹くのはどうだろう?」などと話し、構成員(バンドメンバー)も「それは面白そうだ。NHKだからといって、聖飢魔IIがかしこまって演奏するのはカッコよくない」と盛り上がっていたのだが、当時の我々の侍従長が「ちょっと待って」と。「NHKを出禁になる覚悟あるのなら、それもいいでしょう。ただ、聖飢魔IIをこの番組に出演させるために動いてくれたレコード会社の担当者たちも同じく出禁になる可能性があります。彼らの人生を踏みにじってまでやることですか?」……そう言われ「確かにもっともだな」と思い直し、特に問題が起きるようなことはやらず真面目に出演したのだった。

ところが! DJ OZMAはあっぱれというか、紅白歌合戦に全裸に見える衣装で登場し、あの騒動を巻き起こした。吾輩はつい「我々もこういうことをやりたかったのだ!」と思ってしまったのだ。DJ OZMAはNHKを出禁になったが、彼の思い切りのよさ、面白さにシンパシーを覚えたアーティストもたくさん存在するだろう? その後、綾小路翔は「氣志團万博」を立ち上げるが、あのフェスティバルの盛り上がりは、言うまでもなく彼自身と出演アーティストのつながりから生まれている。聖飢魔IIも「氣志團万博」に出演したことがあるが、気持ちよくもてなしてもらったし、ほかの出演者も彼を絶賛していた。そう考えると、何かを敵に回すということは、逆に仲間を増やすことになるのかもしれないね。

ちなみに諸君は聖飢魔IIと氣志團に意外なつながりがあるのは知っているかな。劇団☆新感線の舞台にも出演していた明星真由美という女優がいたのだが、彼女は聖飢魔IIのファンだったのだ。ところが彼女は、デビュー前の氣志團を見て「絶対に関わりたい」と女優をいったん辞め、氣志團のマネージャーになってしまった。そのこともあり、初期の氣志團のギグでの演出は、聖飢魔IIの影響をかなり受けていたらしいぞ(笑)。

歌えなかった歌

魔暦20(2018)年3月、吾輩は谷村新司氏が司会をしていたBS日テレの「地球劇場~100年後の君に聴かせたい歌~」最終回に出演した。ゲストはなんとAlice。「谷村氏もAliceじゃないか!」という話だが(笑)、魔暦21(2019)年の再始動に向けて、Aliceの歴史や楽曲を紹介する内容だったのだ。吾輩は世を忍ぶ仮の中学生だった頃からAliceの大ファン。きっかけは、当時の親友がAliceのファンだったこと。彼がレコードをカセットテープに録ってくれて、それを聴いているうちに吾輩も大好きになったのだ。ちなみにその友達とは毎日のように相撲を取っていて……まあ、それはいいか(笑)。話を戻すが、谷村氏の番組には吾輩のほかにChage氏、平原綾香嬢も出演していた。それぞれAliceの曲を歌ったのだが、吾輩は谷村氏と「冬の稲妻」をコラボレーションさせてもらった。もちろんありがたいことなのだが、実は「谷村氏と『冬の稲妻』を歌うのは3回目なんだよな……」と思っていたのだ。失礼な話だがな(笑)。なのでChage氏が堀内孝雄氏と「遠くで汽笛を聞きながら」を歌っているのを観て、「いいなあ、吾輩も歌いたいな」と、うらやましくなってしまった。それを嫉妬と呼ぶなら、そうかもしれないね。

この話には続きがある。5月からAliceが全国ツアー「ALICE AGAIN2019-2020=限りなき挑戦=」を行っているだろう? その前半の公演を振り返る番組があり、吾輩がAliceのお三方との座談会で話の回し役をやらせてもらったのだが、収録の合間に谷村氏に「実は夢があるんですよ。楽曲提供をしてもらえないかと思っていて」と話してみたら、事務所の社長でもある谷村氏の奥方が「それ、面白いね!」とご本人よりも先に食いついてくれたのだ。吾輩もこれ幸いと「できれば作詞が谷村氏、作曲が堀内氏、ドラムで矢沢透氏も参加してもらえれば」と言ってみたら──つまり、Aliceと共演したいということだな──またしても奥方が「いいね! 考えてみたら、Aliceがほかのアーティストをプロデュースしたことないもんね!」と盛り上がり、「やるんだったら8月!」とその場でほぼ決まってしまったのだ。Aliceの制作現場に行けたのもいい経験だった。バンドのみんながオケを録る日に「できれば仮歌を歌いに来てほしい」と言われてスタジオで歌ったのだが、仮歌のレコーディングであんなに緊張したのは初めてだったな。その曲は谷村氏、堀内氏がコーラス、矢沢氏がカウンターアレンジとドラムというぜいたくな曲で、素晴らしい仕上がりになっているので、ぜひ期待していてほしい。

デーモン閣下

魔暦前14年(1985年)にロックバンドの姿を借りた“悪魔集団”聖飢魔IIの歌唱・説法方として地球デビューした“悪魔”。魔暦前10年(1989年)に発布した大教典(アルバムの形式をとる)「WORST」でハードロック / ヘヴィメタル界では初となるオリコンアルバムチャート1位を記録し、「NHK紅白歌合戦」に出場した。魔暦7年(2005年)にはデビュー20周年を記念したベストアルバム「LE MONDE DE DEMON」を発表。魔暦21年(2019年)10月16日には劇団☆新感線とのコラボレーションアルバム「うた髑髏(どくろ) -劇団☆新感線劇中歌集-」をリリースした。また、和の伝統芸能との共作活動を30年間にわたって展開中。純和楽器と朗読劇の新機軸追求シリーズ「デーモン閣下の邦楽維新Collaboration」は20年目で公演数82回に至る。上海万博では文化交流大使を執務した。広島県がん検診啓発特使や早稲田大学相撲部特別参与などとしても活躍している。

取材・文 / 森朋之

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