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「お芝居をすることと両思いになれた」 舞台『キオスク』出演、大空ゆうひインタビュー

ぴあ

21/1/14(木) 7:00

大空ゆうひ 撮影:源賀津己

舞台『キオスク』が、石丸さち子の演出でストレートプレイ版として日本初演される。オーストリアの人気作家ローベルト・ゼーターラーによるベストセラー小説を、原作者自身が戯曲化した本作。1937年、時代のうねりにのみ込まれていくオーストリアを舞台に、17歳の主人公・フランツ(林翔太)の青春を、みずみずしく切なく描いている。稽古開始後間もない12月某日、本作に出演する、元宝塚歌劇団宙組トップスターで俳優の大空ゆうひに話を聞いた。

エネルギッシュな石丸演出

──『キオスク』の出演が決まった時の心境を教えてください。

まず、脚本を読ませていただいて、1回で理解しきれる本ではなかったんですけれど、作品の持つ不思議なみずみずしさがとてもいいなと思いました。私は、その中で様々な役割を演じます。これは何かトライできることがあるんじゃないかなと思いました。 演出の石丸さち子さんとは、以前に舞台『まさに世界の終わり』(2018年)でご一緒させていただきました。その時に石丸さんから感じたパワーが圧倒的で、エネルギーをもらい、また、違う作品で石丸さんの作品世界にチャレンジしたいと思いました。

──本作では様々な役を演じられるとのこと、なかなか想像がつかないのですが……。

まだ全貌が本当に分からないですし、正直、これからです。(演出の石丸さんは)今は一番ストーリーとして大事な主軸を作っていらっしゃる段階だと思います。今の状況をこのまま練っていって初日を迎えるというよりも、まだ二転三転するでしょう。日々、その日の風が吹くと思って、自分もそういう気持ちで稽古に臨みたいなと思っています。稽古場では、何かうごめいているものが、エネルギー体としては存在しているんですけど、まだはっきりとしたものは見つけていない。徐々に何かが見えてくる。そんな段階でしょうか。

──それは役に関してもそうですし、石丸さんの演出がそういう演出なのでしょうか。

特に今回はそうですね。毎日がエチュードをやっているというか、何を振られるか分からない状況。びっくりするような演出や、思いついたアイディアを試してみようという段階です。ここからもっと発展させていくのだろうなと思います。

──“びっくりするような演出”というのは具体的にどういうことですか。

思っていたよりも、書かれていないところに、いろいろなことが起きるんです。それは幕が開いてのお楽しみになるかもしれないですけど。シンプルな木枠がいろいろな窓になったり、電車になったり。そういうものを自分たちで表現していく際に、決定稿みたいなものはないので、私たちも想像力を使って更にひろげたい。無茶ぶりと思えるようなリクエストにも何か落とし所を見つけていく。毎日驚いたり、面白がりながらやっています。

──改めて、石丸さんはどういう演出家だと思いますか。

 

エネルギーがすごいです。パワーの塊みたいな感じです(笑)。石丸さんの中にある熱いものを作品に全力でぶつけていらっしゃるので、役者も同じような誠実さで持って、しっかりと何かを持って稽古場に行かないと、その熱量に負けてしまう。熱量を準備しながら、日々の稽古に臨みたいと思わせるような方だと思います。

──前回ご一緒された『まさに世界の終わり』から2年ほど時間が経ちました。何か変化はお互いに感じられますか。

石丸さんは私のことはどう思っていらっしゃるか分からないですけど(笑)、石丸さんはいい意味で全く変わっていらっしゃらないですし、パワフルさにも全く衰えがないです。稽古中も「あーそうそう、この感じ!」というように思います。 1回ご一緒していますが、私の立ち位置も前回とは違うので、ちょっとヒートアップした石丸さんにツッコミを入れられるような場面を見つけていきたいですね(笑)。厳しさも楽しみながら。少しでも演出家の意図を理解して受け入れていくみたいなことができるといいなと思います。

主人公と同じ17歳の時憧れた一路真輝との共演

──共演者についてお伺いします。宝塚の先輩である一路真輝さんや、主演の林翔太さんの印象を教えてください。

この作品の少年は17歳なんですけど、私が17歳で初舞台の時に、初めてお会いした、そのときのスターさんが一路さんでした。当時の自分のことを思い出しつつ、今回は稽古場でお隣に座らせていただいて……。女優さんとしての見習うべき点がたくさんあり、とても魅力的な方だと思います。私が17歳だった頃にはとても想像できなかったほど気さくに話しかけてくださるし(笑)。居方も演技もいろいろ勉強させていただきたいなと思っています。

林くんとは初共演。今マスクをして稽古をしているんですけれども、きっとマスクをとってお芝居をしたら、全然違うんだろうなと。まだまだきっと知らない林くんがいっぱいあるんだろうなと思います。

──コロナ禍ならではのエピソードですね。

「え、そんな顔だったの?」って、コロナ禍あるあるです(笑)。どんな表情をしているのかも受け取る情報量が少ない、それでも伝わって来るものを大切に稽古しています。

──2020年は演劇界にとっても大きな年でした。いろいろなことを感じられたと思いますが、コロナ禍でも舞台に立つ意味や思いをお聞かせください。

舞台公演が中止になって、生の舞台ができない時期は、自分たちの仕事の意味や、俳優という仕事の役割を多少は考えましたが、舞台が再開できたときに、以前よりも、舞台で何かを伝えるということ、自分が置かれている日常とは違うものを劇場でライブで体感するということは、とても素敵なことなんだなと思ったんです。これまでも、「舞台が好き」とは思っていたんですけれども、今更ながらその芸術性を感じましたし、人間にとってそういうものは必要なんだなということを改めて感じることができて。

仲間たちと一緒に作品を作ることが当たり前じゃないし、それができることに感謝するようになりました。それが、自分が舞台に立つエネルギーにつながったのかもしれないです。以前より、楽しめるようになったし、ただ楽しいだけではなくて、舞台に立っているときの気持ちが強くなりました。一回離れたことで、お芝居をすることと両思いになれたような気もして。その点、私にとってはいいこともあった期間でした。世界的には不安な状況ですし、マスクをしての稽古など、今まで想像もつかないような景色を見ているんですけれども、そうしながらも、何かを発信していくことはきっと続いていくだろうなというようなことも考えました。

コロナ禍で上演することの意義

──このコロナ禍で上演される『キオスク』。大空さんはこの作品を今上演する意義をどのように感じられますか。

不穏な時代、不安の時代というのは、心情的に、とても現状の私たちと重なることが多いと思います。ピュアで多感な17歳の少年の目を通して、その世界を見る。自分たちがどこに向かっているのか分からないですし、正確な道標はないと思うんですけれども、作品の中で、純粋な目で、世の中や社会情勢を見ることで、迷い込んだ状況からちょっと視界がクリアになったり、絶対的に大丈夫という保証はないけれども、微かな希望が見えるかもしれない。 今この作品を上演して、お客様がご覧になってくださることによって、きっといろんなことを感じられるはず。心が動くことも大事なこと。何かを提供できる作品だと思います。

──大空さんは、宝塚歌劇団を退団されてから、ストレートプレイからミュージカル、インタビュアーとしても活躍されています。幅広いお仕事の中で、ストレートプレイはどういう位置づけなのでしょうか。

私の中では、あまり位置づけをしたことはありません。私はミュージカルであれ、ストレートプレイであれ、歌の仕事であれ、表面的な形よりも、もう少し奥にある根底を見ていて、その作品や音楽が持っている、一番核となる部分をいろいろな手法で表現していく。奥にあるものを感じ取って表現するお仕事をしているという感覚です。 たまたまそこで歌った。たまたまそこに音楽があった。それは、表現するための必然性。もちろんそれは作り手にとってはジャンルは違うのだと思うんですけど、私の中ではあまり境界線を引かないようにしています。

──最後に、お客様へメッセージをお願いします。

2020年から、様々な葛藤や不安を抱えて過ごした方が多いと思うんです。世の中全体が厳しい状況の中ではありますが、何か人間らしさや、人間の心、大切な温かいものが、まだ人々の中に残っていて。この『キオスク』という作品は、そういうところに触れてくれるような、だけれども警告も含まれる作品だと思います。きっと何かを持って帰っていただけると思うので、たくさんの方に劇場にいらしていただけたらと思います。



取材・文:五月女菜穂 撮影:源賀津己
ヘアメイク:大宝みゆき スタイリスト:SAKAI



『キオスク』
作:ローベルト・ゼーターラー
翻訳:酒寄進一
演出:石丸さち子
出演:林翔太 橋本さとし
大空ゆうひ 上西星来(東京パフォーマンスドール) 吉田メタル 堀文明
一路真輝 山路和弘

【兵庫公演】
2021年1月22日(金)~1月24日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

【東京公演】
2021年2月11日(木・祝)~2月21日(日)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス

【静岡公演】
2021年2月23日(火・祝)
会場:静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール

【愛知公演】
2021年2月25日(木)
会場:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール

【広島公演】
2021年2月27日(土)
会場:JMSアステールプラザ 大ホール

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