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海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

キアヌ・リーヴス

連載

第44回

20/12/8(火)

── 今回は『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』で頑張っているキアヌ・リーヴスをお願いします。ふたりの中年ロック野郎が、未来人から世界が滅亡すると知らされ、時空をかけめぐって世界を救おうとするお話です。

渡辺 この映画のキアヌくん、とてもかわいいですよ。というか、ノリがこのシリーズの1作目(『ビルとテッドの大冒険』(89)を作ったときとほとんど変わっていない。違いは老けたところだけ。単純でおばかなところはもちろん、身体をゆすって喋るところも同じ。

ウワサだとキアヌくん、ビルを演じているアレックス・ウィンターとはずっとつきあいがあるようで、アレックスの監督・脚本・主演作『ミュータント・フリークス』(93)にも顔を出している。

『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』 12月18日(金)より公開

── 義理堅いんですか?

渡辺 そうだと思いますよ。キアヌって、ネームバリューもあるし、ハリウッドではスターなんだろうけど、そういうらしさはまるでない。

キアヌが公園のベンチにひとりぼっちで座っている、いわゆる“ぼっちフィギュア”が作られたり、路上生活者とお酒を飲んでいる姿を写真に撮られたり、電車の中で女性に席を譲っている動画が流れたり、すべてがまるでスターっぽくない。洋服もいつも同じようだし、靴に至ってはガムテープで補強していたときもありましたからね。そういうことには無頓着なんだと思いますよ。

上記の“ぼっちフィギュア”の基になった、衝撃の“キアヌぼっち飯”写真。2010年5月、N.Y.はソーホーの公園で、独り質素なランチを堪能しているところで、手前の鳥さんの存在感もイイ感じ。

── ハリウッドで仕事をやり続けて、そういうライフスタイルを守り続けるって、なかなかできないんじゃないですか?

渡辺 キアヌはそういうところには足を踏み入れないんですよ、きっと。スターが集うパーティとか高級レストランとか……と言って思い出したんですが、一度ロスのイタリアンレストランで目撃したことがありました。そのレストラン、ハリウッド人が使っていることでも知られていて、私もマイケル・マンやロブ・ライナーを見かけたことがある。

そのときのキアヌくんは、服装はまともだったけどヒゲぼうぼうでした。つい見つめちゃったら笑いかけてくれた(笑)。

── キアヌのインタビューはどの作品が最初だったんですか?

渡辺 『マトリックス リローデッド』(03)だったと思います。その後も『マトリックス レボリューションズ』(03)、『コンスタンティン』(05)、『スキャナー・ダークリー』(06)、そして最近は『47RONIN』(13)と『ジョン・ウィック』(14~)シリーズでインタビューしましたね。

彼がデビューした頃、エキゾチックで美しいルックスが注目されて、女性人気が高かったんですよ。確かに雰囲気はあるんですが、演技の方がまるでダメで、私はちょっと。

軽めの枯れた声も苦手だったんですが、『ビルとテッドの大冒険』では、その声がぴったりだった。彼がいい役者なのかもと思うようになったのは、もしかしたら『ビルとテッドの大冒険』からかもしれませんね。

1989年、『ビルとテッドの大冒険』での若き日の雄姿。2作目の1991年『ビルとテッドの地獄旅行』以来、約30年ぶりの新作となるのが今回の『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』。

── インタビューのときは、どんな感じなんですか?

渡辺 やっぱり身体が揺れていた(笑)。『コンスタンティン』のときのキアヌって、白いステンカラーコートを着て世界を救うんですが、肺ガンという設定なので凄くスリムでかっこいいんですよ。

ところが、インタビューのときの彼はヒゲぼうぼうで、頭も寝起きのごとくグチャグチャ。顔も赤くむくんでいて、目も腫れていた。路上のおっさんとのツーショットの写真どおりでした。仕事のときはちゃんとするけど、オフのときはどーでもいいタイプなんでしょうね。

このとき、コンスタンティンはヒーローになりたくないのに、なってしまう感じだったけど、「あなたもスターになりたくないのになっちゃったタイプなのでは?」と聞いたんですが、こんな言葉が返ってきました。

「もし僕をスターと言ってくれるなら、そこに何の反感もないよ。僕にとってスターであることは、これまで僕がやって来た仕事を認めてもらえたということだと思えるから。スタジオが僕をスターだと思っているのなら、それは次の映画に出演できるチャンスがあることを意味している。自分の好きな仕事を認められるのはとても嬉しいこと。そういう意味ならスターになりたいと思うよ」

── 控えめですてきな返答ですね。

渡辺 つまり、名声が欲しいとか、スターの扱いを受けたいわけじゃないということですよね。こういうスターの定義をする人は他にもたくさんいるんですが、キアヌの場合は本当に名声もスターとしての扱いも受けなくても文句言わないんですから偉いんですよ。来日するときだって、映画会社にオファーするのは「このラーメン屋に行きたい」だけだと聞きましたよ。

── ラーメン好きなんですね(笑)。

渡辺 そう、大好きみたいです。しかも、ちゃんと調べていて、ウワサの店を選んでくるんですって。担当さんがお店に予約をしようとしたら、うちは予約を取ってないと言われ、当日キアヌと一緒に列に並び、カウンターで食べたそうです。周囲の人もびっくりですよね。キアヌが隣でラーメンをすすっているなんて。

── やっぱりかわいいですね(笑)。

渡辺 『マトリックス』シリーズのときも、作品が大ヒットして法外なギャラをもらうことになったんですが、そのお金でスタントマンたちにハーレーダビットソンをプレゼントしたり、SFXなどのスタッフたちにお金を均等に配ったりして話題になっていました。お金に執着がないんすよ、きっと。

それに、白血病を患っている妹のためにもお金を使ったというニュースも流れました。彼女のために家を買い、最新の医療で支えていると聞いています。自分のために使うお金は、大好きなラーメンとバイクだけなのかもしれない。

ラーメンと同じくらい(!?)大好きなのがバイク。写真は、ウエストハリウッドをバイクで乗り回す最中に、路肩の芝生に座り込んで休憩&電話をするキアヌ。公道でリラックスしすぎ!?

── すごい、キアヌ!

渡辺 私、実はキアヌって、すぐに消えるだろうと思っていたんです。でも『スピード』(94)が大ヒットしてアクションスターとして注目されて沈静化。すると、今度は『マトリックス』シリーズが始まった。さらに、その後忘れ去られるかと思っていたら『ジョン・ウィック』シリーズですからね。

運も実力のうちといいますが、彼は本当にラッキーだと思う。やっぱり日々の生活態度がいいからでしょう、きっと(笑)。

── なるほど(笑)。

渡辺 ハリウッド人種とは価値観が違うから、『ジョン・ウィック』のように、愛犬を殺されてブチ切れる役というのが妙にハマっている。とてもキアヌっぽいですよ。

反対に『ノック・ノック』(15)というサスペンスでは若い女子に弄ばれるおじさんを演じていましたが、これがまったく似合わなかった。もう十分おっさんの年齢なのに現実的なキャラがダメなんですよ。面白いなあって。

ちょっと下心を出したために散々なメに遭う『ノック・ノック』のキアヌ。似合うかどうかは別として、いろんなキアヌを見るという意味ではゼヒの作品。

── 言われてみたら、そういうキャラクターはあまり演じてませんね。やっぱりアクションの印象が強い。

渡辺 本人もそっちの方が好きなんでしょうね。ちなみに『ジョン・ウィック』の監督、スタントマン出身のチャド・スタエルスキはキアヌのことを「キアヌはとても頑張ってくれる。彼の努力のおかげでアクションがレベルアップしているんだ。現場でも臨機応変に対応してくれるから、こちらもどんどんアイデアを出すことができる」と絶賛していましたね。

役者とスタントマンコンビのバート・レイノルズとハル・ニーダムの関係に似ていると言ったら、「それは僕たちに対する最高の誉め言葉。僕とキアヌは彼らの通って来た道を踏襲しようとしている」と言ってましたね。

── ふたりは、まだ『ジョン・ウィック』シリーズを作るんですよね?

渡辺 調べてみると4作目と5作目が企画されているようです。とても気が合うようで、キアヌも「自分が(アクションができないことで)チャドの足を引っ張るようなことだけはやりたくない。だから1作めが終わった後もずっと銃の練習や柔道のトレーニングはやり続けていた。チャドのビジョンを具現化するために、自分のスキルをもっともっと伸ばさなきゃいけないんだ」と熱く語っていました。

── ふたりはどんなところが合うんですか?

渡辺 映画の趣味等が合うとスタエルスキは言ってましたね。ちなみにその映画はオーソン・ウェルズの『市民ケーン』(41)や『審判』(62)、『上海から来た女』(47)、そして『燃えよドラゴン』(73)だそうです。『燃えよドラゴン』は分かるけど、ウェルズの映画をキアヌが好きとはあまり思えませんが(笑)。

『ジョン・ウィック:チャプター2』(17)のプロモーションで来日した際、帰国の成田空港で激写されるキアヌ。“オフ”のときはだいたいこんな感じのヌケた服装で、年季の入った茶色の靴を多用。キアヌよりも“チョイワル”な雰囲気の後ろの男が、近年の盟友チャド・スタエルスキ。

── 確かにそうですね。

渡辺 でも、『マトリックス』のときも、ウォシャウスキー兄弟監督に大きな刺激を受けたらしく「本をたくさん読んだよ。ボードリヤールや(ミシェル・)フーコー、ケヴィン・ケリーの『複雑系を超えて』とかね。自己の生物学や自然に酷似したデジタルシステムなどについて考えるのは素晴らしい経験だった」って。

この本のチョイスも言葉もかなりキアヌらしくないんだけど、「ウォシャウスキーと話すのはとても楽しいんだ」と言っていましたから、彼らの話についていけるよう頑張ったんじゃないですかね。

── 背伸びしたんでしょうか?

渡辺 うーん、背伸びというより、やっぱり頑張ったんですよ。

キアヌって、もう56歳にもかかわらずピュアな感じがするので、彼らのような個性的な監督の影響を受けやすいのかもしれない。でも、その素直な性格のおかげで、自分の知識や経験が増えていくから、本人も成長し次に進めている。だから、決して仕事がなくならない。

また彼は「映画がただのスペクタクルな娯楽ではなく、それなりの意味をもってほしいと願っている。だって、そういう部分がまるでないなんて、ちょっと寂しすぎると思わないかい? 観客が、映画の中で何かを見つけてくれたら、僕はとっても嬉しいよ」と言っていました。きっと自分も「何かを見つけたい」から、ちゃんと勉強するんですよ。

今度はまた、ウォシャウスキー姉妹と組んで『マトリックス4(原題)』(21年公開予定)をやっていますし、12月10日に発売される『サイバーパンク2077』というアクションゲームのカギとなるキャラクターをモーションキャプチャーで演じ声も当てています。メイキングを見たら、すっごく楽しそうそうだった。その前にも『トイ・ストーリー4』(19)でバイク乗りのノー天気キャラクターの声を嬉しそうにやってましたからね。

今だにあらゆる分野で引っ張りだこ。さすがキアヌだと思います。

※次回は12/22(火)に掲載予定です。

文:渡辺麻紀
Photo:AFLO
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