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唐沢寿明のユーモラスな人柄が溢れる 『エール』で残した父としての生きざま

リアルサウンド

20/6/12(金) 6:00

 快活でおおらか、冗談を言いながらみんなを笑わせるような男であった。そんな三郎(唐沢寿明)が、すっかり弱り果てた姿で息子の裕一(窪田正孝)と再会することになる。連続テレビ小説『エール』(NHK総合)で、唐沢寿明演じる三郎は、故郷を捨て作曲家としての夢を追う主人公・裕一を支え続け、どんなときも寛容な心で受け入れてきた。唐沢のおおらかでユーモラスな人柄が存分に発揮され、窪田とも息のあった演技を見せたことで話題になった。

【写真】別れのシーンでの父(唐沢寿明)と息子(窪田正孝)の抱擁

 『エール』第11週では久しぶりに福島でのエピソードが描かれる。“福島を捨てた”と言い、東京で仕事をしていた裕一だが、藤堂先生(森山直太朗)からの依頼で故郷の校歌を書き上げたことから、校歌完成披露会に招待された。娘の華が生まれたこともあり、裕一は福島を訪れることを決意する。だが、久しぶりに再会した父は、白髪混じりでフラフラとよろめき、よく蹴躓く。真っ黒の艶々の髪に大きな声、大きな笑い声でいつも裕一を励ましていた以前の三郎とは打って変わった姿で、随分と弱々しい印象を与えるものだった。しかし、三郎はそんな姿になっても裕一を大切に思う気持ちは忘れない。裕一が東京に行くときにかけた「俺はおめえを捨てねえ」という台詞のままに、息子を暖かく迎え入れるのであった。

 唐沢は本作への出演にあたり、『あさイチ』(NHK総合)の5月4日放送のプレミアムトークで、朝ドラ初主演の窪田のために自身の出演を決めたことを明かしている。2人は、2015年からスタートした『THE LAST COP/ラストコップ』シリーズ(日本テレビ系/Hulu)でダブル主演を務めており、唐沢は当時から窪田を息子のように可愛がっていたという。そんな経緯もあり、今回の親子役は特別な思い入れがあったことが見受けられる。さらに『あさイチ』での窪田へのインタビューでは、『エール』で三郎を演じるにあたり唐沢が度々アドリブを繰り広げていたというエピソードも披露された。唐沢の優しい人柄とユーモアは、三郎の父親役としての温かさに見事に昇華されている。

 そんな裕一思いの三郎ではあるが、一家の主としては情けない部分も散見された。息子の力になりたい、物事をうまく収めたいと奔走するも、実は成功したことはない。裕一と音との結婚話のときには、「俺に任せとけ!」と啖呵を切ったにも関わらず話は進んでいなかった。店の経営も軌道に乗らず、騙されて経営が傾いたことさえある。裕一には特別に目をかけ大切にしていたが、そのことで弟の浩二(佐久本宝)から兄に甘すぎると度々指摘を受けていた。福島での古山家は全てが良好で理想的な家族であったかというと、決してそういうわけではなかった。三郎は自身の力で境遇を切り開くこともできなかったのだ。だが、その経験は裕一への期待と愛情に変わる。三郎は自身が不甲斐ないぶん、裕一を自身の考えに縛り付けることなく自由に羽ばたかせ、才能を開花させた。

 思えば裕一と三郎の間にはいつも特別な“空気感”があった。母親のまさ(菊池桃子)や浩二とはまた違った深い繋がりを感じさせる瞬間が幾度となくある。第54話で三郎が裕一を呼び出したシーンも、この特別な関係を感じさせる瞬間の一つだろう。窪田と唐沢だからこその温度感はさらに熱を帯び、臨場感のあるものとなる。2人が築きあげてきた「古山親子」の姿は、多くの人に“親“と“子”の絆について改めて考えるきっかけを与えてくれたことだろう。

(Nana Numoto)

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