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小野大輔はなぜ愛される? 鉄壁のバリトンボイスと自己プロデュースで輝く個性

リアルサウンド

20/3/31(火) 10:00

 映画『ドクター・ドリトル』でラマ・ミレックの吹き替えを担当し、ゴリラのチーチー役をユーモアたっぷりに演じて評判の小野大輔。Netflixで全世界に『Ψ始動編』が配信されているアニメ『斉木楠雄のΨ難』シリーズでは、モヒカンの強面キャラクターの燃堂力でお馴染みだ。また、映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』では、デジモン研究者の助手・井村京太郎、TVアニメ『ポケットモンスター』(テレビ東京系)では世界最強のポケモントレーナー・ダンデと、演じる役の振り幅の広さは声優界随一と言っても過言ではない。また、声優の仕事に止まらず、ラジオ番組での読み聞かせや、舞台、音楽活動、さらに地元・高知の蔵元である司牡丹の純米酒をプロデュースなど実に多彩。声優デビューから20年近くに渡り最前線で活躍する、小野大輔の魅力とは?

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理論武装したバリトンボイスは鉄壁
 小野大輔の魅力は、ひとつはその声だ。横隔膜に響くような低音のバリトンボイスは世の女性の憧れで、15年ほど前に始まった“イケボブーム”の火付け役のひとりとして、実際に多くのイケメンキャラクターを演じてきた。『黒執事』(MBS/TBSほか)では気品高く冷徹無比なセバスチャン・ミカエリス、『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEシリーズ』(TOKYO MX)では無口だが一本筋の通った性格の皇綺羅、さらに『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ(TOKYO MX)では、シリーズきっての人気キャラクター・空条承太郎を演じた。目を閉じて声を聴けば、どんな人でもイケメンを思い浮かべる唯一無二の声の持ち主。演じた役柄も相まって、“声のカリスマ”と呼んでいいほどの存在感を発揮してきた。

 その一方で、声だけではなく演技力の面でも声優界では一目置かれている。たとえば『おそ松さん』(テレビ東京ほか)では松野家の五男で“明るい狂人”十四松、『はたらく細胞』(TOKYO MX)ではマッチョなミリタリーのキラーT細胞といった、個性豊かなキャラクターの演技も評価が高い。人気ゲームを原作にしたアニメ『ファンタシースターオンライン2 エピソード・オラクル』(TOKYO MX)では、ひとりの命と人類の命の狭間で葛藤する悩める主人公のアッシュを見事に演じた。こうした役を演じる上で、小野のベースにあるのは、ロシアの劇作家であるスタニフスラフスキーが提唱した演技論のひとつ「貫通行動」だという。芝居における演技はその役が目的を叶えるための行動であり、目的が明確になればおのずと演技の道筋も見えてくるというもの。こうした理論に裏付けられた確かな演技があればこそ、どんな役柄にも命を吹き込み、多くの視聴者を魅了することができるのだろう。

自己プロデュースで輝く個性
 小野は、声や演技だけでなく、プロデュース能力が高いことでも知られる。Tシャツなどのイベントグッズに始まり、地酒のプロデュース、現在は個人事務所での活動していることからも、自己プロデュース能力は必須だ。2008年からソロ音楽活動も行い、3月4日に自身がナレーションを務める劇場版『ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』の主題歌「ドラマティック」をリリースしたばかり。これまでに2枚のアルバムと13枚のシングルをリリースし、2ndアルバム『STARTRAIN』(2018年)の表題曲や「オリオンの夜」など、多くの楽曲で作詞を手がけている。また、放送作家らと組んだエアーバンド“MASOCHISTIC ONO BAND”での活動経験や、岩田光央・鈴村健一・森久保祥太郎との4人でホストを務めるライブイベント『Original Entertainment Paradise』(おれパラ)は、毎年開催し昨年12回目を迎えた。

 小野のプロデュース能力はどこからくるのか? 小野大輔は、1978年5月4日生まれの41歳、高知県出身。もともとは放送業界への就職を希望しており、日本藝術大学放送学科を卒業し、ラジオ番組制作に携わった経験も持つ。ちなみに日藝放送学科の卒業生には、脚本家・君塚良一、脚本家/俳優・宮藤官九郎、作家の家田荘子、放送作家/脚本家の小山薫堂など放送業界のエリートが名を連ねる。小野と言えば、声優仲間の下野紘とのコンビによる旅番組『小野下野のどこでもクエスト』(2018年7月~/BS11ほか)が話題になったが、行き当たりばったりの旅をいかに面白くするかは、テレビについて学んだ小野であれば心得たもの。ドタバタ旅が好評を呼んで、今秋BS11などで第2期が放送されることが決定している。演者で表に立ちながら持ち前の裏方気質を併せ持ち、多彩なコンテンツを世に送り出す。日藝で学んだものが、声優としての活動の延長上で生きている。“小野D”という愛称は、案外ディレクターの意味も含んでいるのかもしれない。

 内田雄馬や仲村宗悟など、若手の台頭が著しい現在の男性声優界。彼らが世に出る道筋を立てたのが、小野を初めとしたセミベテランだ。同じ2002年の声優デビュー組には、宮野真守、下野紘、鈴木達央、藤原祐規。同い年の41歳には、福山潤、間島淳司など。また『Original Entertainment Paradise』(通称:おれパラ)で活動を共にする岩田光央、鈴村健一、森久保祥太郎など、いずれも多彩な活動で知られる人物ばかり。そんな個性豊かな仲間たちと共に切磋琢磨しながら、その後の声優ブームの基礎を作ってきた小野。その中に決して埋もれることがなかったのは、頭脳明晰でユーモアにも溢れるナイスガイな人柄があればこそ。先輩のベテラン声優と同胞たちは、そんな彼のことを愛と敬意を込めて“小野D”と呼んでいる。 (文=榑林史章)

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