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『ジョーカー』日本語吹替えを担当した平田広明、「僕の代表作のひとつになる」

ぴあ

20/1/27(月) 18:00

平田広明

昨秋、公開されR指定作品の世界興行収入記録を塗り替え、日本でも50億円を突破する大ヒットを記録した『ジョーカー』のブルーレイ&DVDがまもなくリリースされる。ホアキン・フェニックスが演じた主人公・アーサーの日本語吹替を担当するのは『ワンピース』のサンジ、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウなどでおなじみの平田広明。アカデミー賞最有力とも言われるホアキンの鬼気迫る演技を日本語に吹き替えていく難しさを明かしてくれた。

平田が今回のアーサー役のオーディションを受けたのは、劇場公開(10月4日)以前のこと。近年では、セキュリティ上の問題で、映画の概要やストーリーについて全く説明がないまま、与えられた数シーンを演じるということが増えているそうで「映画の吹替ということ以外、一切情報がないまま手ぶらで(オーディションに)行った」という。

その後、アーサーを演じることが正式に決定し、収録が行われたのは10月の半ば。その前に劇場で本作を観たというが、DCの『バットマン』の世界という枠組みを維持しつつ「独特のアプローチでリアリティのあるドラマになっていて怖かった」とその衝撃を明かす。

売れないコメディアンで母と暮らすアーサーが、徐々に狂気の淵へと転落していき、やがて悪のカリスマ“ジョーカー”となるさまを描く本作だが、特に平田が戦慄を覚えたのが、アーサーが犯す殺人そのものではなく、その後のある行動だという。

「通常の映画では、何か(きっかけとなる)事象が起きて、亀裂が入って、対立があって、ピークに“殺し”が来るというのがだいたいのパターンだけど、この映画は殺しでもまだピークが来ない。(殺人の直後に)無意識にって感じで所在なさげにふたつ、みっつダンスのステップを踏むところに彼のピークが感じられて“怖ぇな、撃った後に踊るんだ……?”と思いました」

アーサー役でゴールデングローブ賞の主演男優賞(ドラマ部門)を受賞し、アカデミー賞の最有力候補とも言われるホアキン。これまでも『8mm』『裏切り者』といった作品で彼の声に日本語をあててきた平田だが、今回のアーサー役の彼を見て「(過去のホアキンの面影を)何ひとつ思い出せなかったですね、別人ですもん。え? これホアキン・フェニックス?」と驚きを禁じえなかったと振り返る。アーサーの独特の、そして状況によって変化していく“笑い声”が非常に印象的だが、吹替をする上で、むしろ難しさを感じたのはそうした特徴的な部分ではなく、むしろごく普通の日常のシーンでの何気ない会話ややりとりだったという。

「静かにごく普通の日常を送ろうとしている、良きアーサーはどこにでもいそうな気の弱い人間なんですよね。そんな何の取柄も華もない男にリアリティを持たせるのが実は一番難しいんです。“普通”って何だよ?という話で、乱暴な言い方だけど、お腹から声を出して笑うのは誰にでもできるんですよ。何でもない芝居を何でもなくできるのが極みだなって思います。わりと最初の方のシーンで、彼がボソッと“つらいな……。もうたくさんだ”と言うんですけど、彼の芝居ってそれだけで(観客は)見てもいないいろんなつらいシーンを想像できちゃうんですよね。ホアキンは表情も込みでやっているけど、こっちは声だけなんだぞ!って言いたくなります」

2008年に公開され、故ヒース・レジャーが狂気のジョーカーを演じて大きな話題を呼んだ『ダークナイト』の日本での興収が約16億円。決してそれと地続きの世界を描いているわけではないが、今回の『ジョーカー』の50億円超えがいかにすごいことなのかがよく分かる。なぜ本作がここまで広く日本で受け入れられたのか? 平田は自身も含めて「誰もがみな、“ジョーカー”な部分を持っているんじゃないか?」と語る。

「やっていることは褒められたことじゃないけど、どこか共感してしまう部分がある。そのリアリティなんじゃないかな? 日本は恵まれていると思うけど、それでも社会の中にいれば文句や不満が出てくる。僕の中にも(アーサーとジョーカー)どちらの部分もあると思うし、アーサーは不幸な環境でそうなっていく。僕らみんな、どこかでアーサーを上から目線で見つつ、同情したり共感できるんじゃないかな?」

「たぶん、僕の代表作のひとつになると思う」――。これまで数々のキャラクターに命を吹き込んできた名声優は、そう本作の手応えを口にした。

『ジョーカー』ブルーレイ&DVD
1月29日(水)より発売、レンタル、デジタルレンタル配信開始
デジタルセル先行配信中

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