Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

『カネ恋』プロデューサーに聞く、TBS火曜ドラマが目指すもの 「元気が出るドラマを届けたい」

リアルサウンド

20/9/15(火) 12:00

 松岡茉優が主演を務めるTBS火曜ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(以下『カネ恋』)が9月15日にスタートする。

 本作は、『凪のお暇』を手がけた大島里美のオリジナル脚本で、「お金」と「恋」をテーマにしたラブコメディ。おもちゃメーカーの経理として働く清貧女子と、お金にルーズな浪費男子。真逆の金銭感覚を持つ2人にラブは芽生えるのか!?

 初回オンエアに先駆けて、リアルサウンド映画部では東仲恵吾プロデューサーにインタビュー。取材を重ねる上で、多くの女性が抱える「恋(感情)」「お金(現実)」のギャップも見えてきたそう。今、『カネ恋』で描きたかったこと、そしておもちゃメーカーならではの見どころについても聞いた。

「ムダ」の中にある「幸せ」を考えたい


――「お金」と「恋」と聞くと、「現実」と「夢」というくらい相容れない言葉に感じてしまうのですが、それをなぜあえてテーマにしたドラマを企画されたのでしょうか?

東仲恵吾(以下、東仲):そうですよね。一見ものすごくかけ離れているもののように見えますが、恋の先に結婚となった場合、急にお金の話をしなければならなくなる。ちょうど企画が立ち上がったのが「老後に2000万円の貯蓄が必要ですよ」とアナウンスされたころで、そのリアクションが実に様々だったのが興味深く思いました。実は、恋愛や、もっといえば生き方とお金の使い方って、私たちが思っていた以上にリンクしてるんじゃないかなと。そこを見つめるドラマを作ってみたら面白いんじゃないかというのが始まりですね。

――現実的な問題を見つめながらも、おもちゃメーカーとはまた夢を感じさせる舞台ですね。何か狙いがあったのでしょうか?

東仲:お金の話ではあるけれど、どこか楽しさというか、ギスギスしない雰囲気にできないかと考えていました。その中で、おもちゃというのは、心を満たしてくれる象徴でもあると思うんです。ちょっと乱暴な言い方をしてしまえば、生活にどうしても必要な実用品ではないという意味では「ムダ」なものですが、悲しいときには元気をもらえるし、あったら心や人生がより豊かになるもので。そういうところにどれくらいお金をかけるか、というのもこのドラマのテーマに繋がっていると考えて、おもちゃメーカーを舞台にしました。大手メーカーのバンダイさん、ロボットベンチャーのGROOVE Xさんともコラボして、いっぱいおもちゃを作ってセットに配置しているので、ぜひ細部までチェックして楽しんでほしいです。

――たしかに大人になると趣味にどれだけお金をかけるかって、すごくその人の価値観が出ますね。本人にとっては幸せこの上ない大人買いも、他の人から見たら「ムダ」遣いということも……。

東仲:そうなんです。劇中に、ペットとして「LOVOT」という家族型ロボットが登場するんですけど、性能の高さは世界トップクラスなんです。それだけの高い技術力を駆使して、人を癒やすためだけに集中させて作られたもので、これも一見すると、技術の「ムダ」遣い。でも、そこにロマンを感じる人はたくさんいるんですよね。金額の大小はありますが、その「ムダ」なところにこそ、人の幸せがあるように思えて。そこを一緒に考えられるドラマになればいいなと思っています。

世界がガラリと変わって、台本も急きょ変更に


―― 正反対な金銭感覚の男女を描く上で、「清貧女子」と「浪費男子」という形にしたのは、何か思いがあってのことですか?

東仲:やはり、火曜ドラマ枠なので主人公は、芯の通った女性にしたいと思いました。一見すると、周りから「変わり者」と言われるけど、信念を持って生きているような女性を描きたいと考えていて、実は、東京オリンピックに向けて、社会はもっと浪費傾向になっていくんじゃないかなと当時は思っていました。多くの人が大量購入、大量消費をしている中で、モノを大切に使うようなヒロインを描いて、「浪費男子」のようにたくさん買ってしまうことにも共感できるけど、「清貧女子」のように自分なりの価値観も大事だなって胸に手を当ててもらえるように……と考えていたんですが、情勢も目まぐるしく変わり、どちらかと言えば社会全体が「清貧女子」の価値観にグッと引き寄せられた形になって驚いています。

――このコロナ禍で、外出自粛中に断捨離をされた方も多く、そのとき自分に本当に必要なものは何かと見つめ直すタイミングにもなりましたね。

東仲:なので、台本をもう一度見直して、いろんな部分を変えました。多くの人が共感する価値観が逆転してしまった。それだけ社会が変わったんだと実感しながら。でも脚本家の大島里美さんは、すごく人を見つめる目というか、本当に共感できるキャラクターを作り上げるのが上手な方なのでとても丁寧に紡ぎ上げてくれました。「清貧女子」「浪費男子」の2人に限らず、お母さんだったり、元彼女だったり……十人十色のお金の使い方をしている人が出てくるので、「自分はこの人タイプだな」と投影したくなるキャラクターに出会える形になっていると思います。

――モノを大切にしている清貧女子がヒロインということで、衣装などにもこだわっているのでしょうか?

東仲:「清貧」とは「清く」「貧しく」と書くのですが、その姿が素敵でなければ、ただの「ケチ」に見られてしまいかねません。だから劇中に出てくる服やカバン、ハンドメイドのアクセサリーには、彼女なりの美を追求していることが見える形になっています。自分の好きなモノを、好きな形で使うっていうのが、可愛らしく思えてくるはずです。リメイク服なんかは、衣装さんが実際に手縫いで作られているので、注目してください。それから、自宅のセットも彼女の趣味のものが、独自のルールのもとで配置されているので、そこも注意深く見てもらえると、面白いと思います。

火曜の夜に明るく元気になれるドラマを


――前クールの『私の家政夫ナギサさん』も大好評でしたし、火曜ドラマ枠を制作される上で、共通して意識されているものというのはあるのでしょうか?

東仲:やっぱり女性が活躍している時代ですし、明るく楽しくなれるっていうのは、火曜ドラマとしては目指すべきところという認識はありますね。曜日の感覚としても、月曜に仕事して、火曜ってちょうど疲れが出るタイミングだと思うので、そのときに、「観てよかった」って元気が出るドラマを届けたいというのは、共通した思いです。今回ラブコメにしたのも、人生にはいろいろなスパイスがありますけれど、やっぱり恋愛って特別なものだと思うので、そういう恋愛のワクワクをちゃんと描きたいなと思っています。

――火曜ドラマだけではなく、この夏はTBS全体が盛り上がっていましたが、「ドラマのTBS」として大事にされているものは?

東仲:教えてもらったものというか、心血注いでドラマを作っていた諸先輩方の背中を見て、学ばせてもらったことを大事にしながらやっているという感じです。登場人物の心情を丁寧に描くということをとことん教え込まれました。「こういうことがあったら、こういうふうに思うはずだよね」と、気持ちのリアリティみたいなものは常に気をつけて作っているつもりです。

――リアルな心情を描くために、取材なども?

東仲:そうですね、今回は本を作っていくなかで、大島さんと平野監督と僕とでキャラクターの色分けというか、「こういう人だよね」と固めていく段階で、それぞれが聞いてきた話を持ち寄って、共感できるところをどんどん当てはめていきました。

――どんなお話が出てきましたか?

東仲:例えば、一緒に出かけたとき割り勘って言い出していいものかどうか、とか。自分の名義で貯めたポイントを恋人のために使えるか、とか。恋愛の相手がお財布の紐が固いと「ケチ」なんですけど、結婚相手としたら「倹約家」になるから不思議ですよね(笑)。なかでも興味深かったのは、彼氏と3年付き合って今年で29歳の女性が、「これだけ投資したんだから、絶対結婚しないといけない」という話。ダメなヤツだったら結婚なんてしないで別れたほうがいいじゃん、って男性の僕なんかは思っちゃうんですが、女性からすると「お金も、貴重な20代の時間も費やしたんだから、もう先がないし」「わかる、わかる」と盛り上がってましたね。

――なんてリアルなエピソード(笑)。

東仲:やっぱり恋愛中ってお金の話をしにくいものだと思うんです。付き合ったばかりのタイミングで「給料いくら? 貯金ある?」なんてお金の話を持ち出すと、急に現実を突きつけられた感じがして、恋が冷めがち。でも、もう少しお金と楽しい付き合い方みたいなのができたらいいなと思うんです。例えば、コンビニのお菓子で「これが200円は高いから買わない」みたいな。本当にその値段の価値があるかどうかを気軽に恋人と話せるようになったらいいなと思います。

――それでは、最後に視聴者へひと言お願い致します。

東仲:これまで築いてきた全く違う価値観を持つ男女がお互いに影響されて、人間として成長していく姿を、そして正反対の2人だからこそ生まれるキュンを、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。

■放送情報
火曜ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』
TBS系にて、9月15日(火)スタート 毎週火曜22:00~ 22:57放送
※初回15分拡大
出演:松岡茉優、三浦春馬、三浦翔平、北村匠海、星蘭ひとみ(宝塚歌劇団)、大友花恋、稲田直樹(アインシュタイン)、中村里帆、八木優、河井ゆずる(アインシュタイン)、キムラ緑子、ファーストサマーウイカ、池田成志、南果歩、草刈正雄
ゲスト出演:梶裕貴、岡本莉音、トミー(水溜りボンド)、登坂淳一
脚本:大島里美
演出:平野俊一、木村ひさし
プロデュース:東仲恵吾
主題歌:Mr.Children「turn over?」(トイズファクトリー)
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/KANEKOI_tbs/
公式Twitter:https://twitter.com/kanekoi_tbs

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む