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今期もっとも観るべきドラマは? 評論家が選ぶ、2020年秋の注目作ベスト5

リアルサウンド

20/11/10(火) 6:00

 2020年最後のクールとして現在放送されている秋ドラマ。新型コロナウイルスの影響により4月スタート予定だったドラマはほとんどが延期を余儀なくされたが、6月、7月と放送がはじまると『半沢直樹』(TBS系)など一大ブームを起こした作品も生まれた。ようやくどのドラマの放送回も足並みが揃い、各局、力の入った作品が並ぶが、今期観るべきなのはどのドラマだろうか。ドラマ評論家の成馬零一氏に、秋ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。(編集部)

1.『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)

 『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)は水曜夜10時から放送されている恋愛ドラマ。脚本は連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『スカーレット』(NHK)の水橋文美江。物語は緊急事態宣言が発令された2020年4月からはじまる。

 産業医の大桜美々(波瑠)が自粛期間中にゲームの中で知り合った「檸檬」という顔も経歴も知らない相手に恋する姿を描いたラブコメだが、一番の特徴は登場人物が外出時に、ちゃんとマスクをしていること。緊急事態宣言によって自粛期間だった4月~5月と現在(10月以降)の空気の違いを丁寧に掘り下げており、今クールのドラマの中で、もっともコロナ禍を意識した作品となっている。

2.『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)

 『姉ちゃんの恋人』は、火曜夜9時から放送されている恋愛ドラマ。主演は有村架純、脚本は岡田惠和という朝ドラ『ひよっこ』(NHK総合)の2人が再集結。岡田が得意とするコメディテイストの物語に仕上がっている。

 優しいやりとりの裏側で、不安の気配が見え隠れするというのが岡田作品の特徴だが、その背景にあるのは、コロナ禍の空気と、主人公の安達桃子(有村架純)が体験した両親の死で、桃子が恋心を抱く吉岡真人(林遣都)の秘められた過去も不穏なムードに拍車をかけている。劇中のコロナ禍の描写は、半年前に大変なことが世界中で起こったが、今は落ち着いているというニュアンス。コロナという言葉は意図的に避けており、登場人物もマスクをつけていない。(ただ、回想シーンの職場の場面ではマスクを付けていた)。コロナという言葉を使わずにコロナ禍を描く見せ方は『2020年 五月の恋』(WOWOW)でも展開された距離の取り方で、岡田らしい物語の抽象度を高める作劇手法だ。

 コロナ禍の描写は浮きあがって見えるが、今後、恋愛劇とうまくリンクしていけば、より面白くなるのではないかと思う。

3.『共演NG』(テレビ東京系)

 『共演NG』は、テレビ東京系で月曜夜10時から放送されている中井貴一主演のドラマ。元恋人同士やライバルといった「共演NG」の俳優たちが共演する恋愛ドラマの内幕をコミカルに描いている。企画は秋元康。演出・脚本は『モテキ』(テレビ東京系)の大根仁がつ務めている。

 80年代にフジテレビで作られた業界ドラマのテイストで、近作では中井が主演を務めた『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)に近い。こういうドラマがテレビ東京で作られたこと自体は面白いのだが、テレビ業界関係者の内輪ノリが強いため、観る人を選ぶところはある。コロナ禍の描写は、記者会見やドラマスタッフの見せ方に現れている。印象としては演出家の井上剛がコロナ禍を舞台に制作したドラマ&ドキュメント『不要不急の銀河』(NHK)に近い。どちらも自己言及的な作品で、コロナ禍のドラマ現場を撮ったセルフドキュメンタリーにも見える。

 この3作はコロナ禍を舞台にしたドラマだが、アプローチには微妙な違いがある。一番の差は、登場人物がマスクをつけているかどうかで、『#リモラブ』以外は、設定によって使い分けているという印象。おそらく、物語上の必然性がない限りは俳優がマスクを着用しないという方向で今後のドラマは作られるのだろう。時代劇におけるお歯黒に近い見せ方となっており、「ドラマだから省略する」という形に落ち着きそうだ。

4.『35歳の少女』(日本テレビ系)

 『35歳の少女』(日本テレビ系)は土曜夜10時から放送されている遊川和彦脚本のドラマ。1995年に事故で昏睡状態になった少女・望美(柴咲コウ)が10歳の心のまま2020年に目を覚ましたところから始まる。

 子どもの内面を抱えた大人の女性の心が成長していく姿を柴咲が好演しており、彼女の成長と家族の再生がリンクしている。1995年と2020年の時代の変化を描きながら、コロナ禍に触れていない(登場人物もマスクをしてない)ため、コロナのない世界を描いているように見えるのだが、東日本大震災の起きた2011年に作った『家政婦のミタ』(日本テレビ系)で家族再生の物語を震災からの再生の物語として描いた遊川だけに、コロナ禍に対するメッセージを最後に用意しているのではないかと思う。

5.『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)

 『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』はテレビ東京系で木曜深夜1時から放送されている深夜ドラマ。30歳まで童貞だった平凡な会社員・安達清(赤楚衛二)が、触った人の心の声を聞けるようになったことで、営業部エースの同期・黒沢優一(町田啓太)が自分に好意を抱いていることを知ってしまうことから始まるBL(ボーイズラブ)ドラマ。じわじわと人気が盛り上がっており、今クールのダークホースとなっている。

 どの作品も恋愛ドラマの要素が強いのは面白い傾向だ。やはり、コロナ禍に求められているのは“愛”なのかもしれない。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜23:00放送
出演:波瑠、松下洸平、間宮祥太朗、川栄李奈、高橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、福地桃子、渡辺大、江口のりこ、及川光博
脚本:水橋文美江
演出:中島悟、丸谷俊平
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
チーフプロデューサー:西憲彦
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/remolove/
公式Twitter:@remolove_NTV
公式Instagram:@remolove_NTV

『姉ちゃんの恋人』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:有村架純、林遣都、奈緒、高橋海人(King & Prince)、やついいちろう、日向亘、阿南敦子、那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)、スミマサノリ、井阪郁巳、南出凌嘉、西川瑞 、和久井映見、光石研、紺野まひる、小池栄子、藤木直人ほか
脚本:岡田惠和
音楽:眞鍋昭大
主題歌:Mr.Children「Brand new planet」(TOY’S FACTORY)
演出:三宅喜重(カンテレ)、本橋圭太、宝来忠昭
プロデュース:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ)、平部隆明(ホリプロ)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/anekoi/
公式Twitter:https://twitter.com/anekoi_tue21
公式Instagram: https://www.instagram.com/anekoi.tue21

『共演NG』
テレビ東京系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:中井貴一、鈴木京香、山口紗弥加、猫背椿、斎藤工、リリー・フランキー、里見浩太朗、堀部圭亮、細田善彦、小澤廉、若月佑美、小野花梨、小野塚勇人、森永悠希、小島藤子、岡部たかし、迫田孝也、岩谷健司、瀧内公美、橋本じゅん
企画・原作:秋元康
監督:大根仁
脚本:大根仁、樋口卓治
プロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)、祖父江里奈(テレビ東京)、合田知弘(テレビ東京)、浅野澄美(FCC)
制作:テレビ東京/FCC
製作著作:「共演NG」製作委員会
(c)「共演NG」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kyouen_ng/
公式Twitter:@kyouenNG_tx

『35歳の少女』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:柴咲コウ、坂口健太郎、橋本愛、田中哲司、富田靖子、竜星涼、鈴木保奈美、細田善彦、大友花恋
脚本:遊川和彦
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:大平太、諸田景子
演出:猪股隆一ほか
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/shojo35/
公式Twitter:@shojo35

木ドラ25『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』
テレビ東京ほかにて、毎週木曜深夜1:00〜1:30放送
BSテレ東/BSテレ東4Kにて、毎週火曜深夜0:00〜0:30放送
※放送日時は変更になる可能性あり
出演:赤楚衛二、浅⾹航⼤、ゆうたろう、草川拓弥(超特急)、佐藤玲、鈴之助、町田啓太
原作:豊田悠(掲載『ガンガンpixiv』スクウェア・エニックス刊)
オープニングテーマ:Omoinotake「産声」(NEON RECORDS)
エンディングテーマ:DEEP SQUAD「Good Love Your Love」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
監督:風間太樹、湯浅弘章、林雅貴
脚本:吉田恵里香、おかざきさとこ
プロデューサー:本間かなみ(テレビ東京)、井原梓(テレビ東京)、熊谷理恵(大映テレビ)
制作:テレビ東京 大映テレビ
製作著作:「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」製作委員会
(c)豊田悠/SQUARE ENIX・「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/cherimaho/
公式Twitter:https://twitter.com/tx_cherimaho

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