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輝夜 月、未知の体験尽くしな1st VRライブ 仮想空間のライブハウスに舞台表現の最先端を見た

リアルサウンド

18/9/6(木) 8:00

 バーチャルタレント輝夜 月のファーストライブが8月31日、仮想空間「Beyond the Moon」内にオープンしたライブハウス「Zepp VR」にて行われた。YouTubeのチャンネル登録者数は80万人を突破、動画再生数は平均81万回を誇る、大人気のバーチャルYouTuberというだけあり、7月14日に発売されたチケットは即完、急遽全国15館の映画館でライブビューイングが催されることとなった。今回は、新宿バルト9で行われたライブビューイングの模様をレポートする。

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 開演し、スクリーンに映し出されたのは赤・青・黄色のブロックが積まれたカラフルな舞台。前説に現れたのは動画でもおなじみのジャスティン・エビーバーとパブロッコリー(正式名称はとても長いので省略)だ。ちょこまかと動きながら、「まわりに注意して楽しむこと」「体調が悪くなったらVRグラスを外すこと」など、これから始まる世界初のVRライブを楽しむうえでの注意点を解説した。エビーバーたちが去ると、会場に牧歌的な音楽が流れ出し、ステージに輝夜 月が登場。音楽に合わせた「VRラジオ体操」を披露した。「懐かしの……パラパラ!」「バレリーナ!」などと、輝夜 月らしい自由形のラジオ体操に、仮想空間の参加者たちも体を動かしていた。

 Zepp VRに入場した参加者たちはエビーバーを模したアバターとなっている。手足を動かすほかにも、舞台に対してサイリウムを振ったり、拍手をしたりといった「エモーション」と呼ばれるアクションを返せる仕組みがあり、これによって演者と観客のコールアンドレスポンスを可能にしている。

 準備体操が終わると、輝夜 月はステージの隅から落下して一度退場、軽快な音楽とともにこれまでの彼女の経歴を振り返る動画が上映され、過去に投稿した動画の印象的なシーンと、チャンネル登録者数の推移を伝えた。動画の上映が終わり、拍手のエモーションが鳴り止まぬ中、80年代テクノポップの旗手であり、インタラクティブ・ライブの始祖、平沢進を思い出す重厚なSEが流れ出すと、舞台の上から巨大なミラーボールが降りてくる。ミラーボールがパカッと開き、中から落ちてきたのは輝夜 月。彼女の声が会場に響いた。

「あーあー マイクチェックマイクチェック?」

 ライブ前日に公開された彼女のオリジナルファーストソング、「Beyond the Moon」が始まった。2000年代半ばから2010年代初頭にかけてラウドロックシーンを牽引したバンド・Pay money To my Painのギタリスト、PABLO a.k.a. WTF!?氏が作曲/プロデュースを担当しており、作詞は輝夜 月本人が行っている。ポップでキュートで破壊的な彼女らしい楽曲を、観客のアバターたちもサイリウムのエモーションで盛り上げる。ビューイング会場にもサイリウムを持ち込む観客がいて、会場を彩っていた。

 「Beyond the Moon」を披露した後のMCでは未だ緊張があることを語りつつ、彼女の動画で定番の挨拶となっている「おはよー! こんちはー! こんばんはー!……起きてえええええ!」を、観客とともに行い、一体感を高めた。今日のライブの開催について、観客への感謝を伝え、「みんなは、どんな時に幸せだなあって感じますか?」という問いかけからいきなりの2曲目がスタート。曲の始まりとともに彼女の立つブロックが火を吹いて宙に浮き、縦横無尽に飛んでいく。歌うのは椎名林檎のカバー「幸福論」。1998年に発売された同曲が20年後、VR空間でカバーされることに驚きつつ、疾走感のあるアレンジで生き生きと歌い上げられていたことに、その色褪せない魅力を再認識した。

 2曲目を歌い終わると会場は暗転し、同時にビジョンのテロップよりアンコールが促される。VR会場ではエモーションが、ライブビューイング会場では歓声がアンコールを求めて湧いた。

 歓声に答えた輝夜 月は宙に浮いた大きなエビフライにまたがって再登場。ここからはトークタイムとなり、あらかじめTwitterで募集していた質問に答えていった。会場を自由に浮遊しながらトークを進める輝夜 月と、即座にエモーションを返す観客たちのやり取りが楽しい。エモーションには今回のライブ用にエビーバーやパブロッコリーのアイコンが用意されており、観客達は思い思いのエモーションを送信していたのだが、エビフライのエモーションを送った数に応じて、ステージ上にあるエビーバーのアイコンがどんどん膨らんでいく、という演出があり、観客たちがエビフライを連打した結果、会場上空を覆うほど巨大なエビーバーが誕生、輝夜 月も慌てふためくなかで突如大爆発。彼女の「死んだ……(笑)」という声とともに会場は白い光に包まれた。

 再び会場の全貌が映し出されると、舞台中央にはなんとエビーバーと合体した輝夜 月が。再度流れ出す「Beyond the Moon」に会場が揺れる。ライブらしく一部の歌詞を変え、「今日からみんな友達だ!」と声を張った。最後には会場上空に夏の終わりを飾る花火が打ち上げられ、大爆発とともにステージは白い煙に包まれた。

 煙が晴れると、そこに映し出されたのは爆発で吹き飛んだステージの残骸だ。屋根が吹き飛んだZepp VRの外は、仮想空間「Beyond the moon」。地平は月面のようにも見え、彼方には地球の姿もある。宇宙をじっと見ていると、「KAGUYA LUNA Live@Zepp VR “Beyond the moon” 2018.0831 Thank you for Coming today!」の文字が現れ、輝夜 月の声がライブ終演を告げる。「現実にお帰りください」と楽しそうに言う彼女の声でライブは終了した。

 歌あり、トークあり、最後には大爆発と、快活であっけらかんとした輝夜 月らしいファーストライブを楽しめた。ライブ全編を通して、彼女の「感謝」を感じられたのも印象的だ。

 これまでも、仮想空間に暮らすキャラクターが現実世界のシステムに則ってライブを行うことは数多くあった。例えば初音ミクの場合には『マジカルミライ』プロジェクトでライブを行っているし、任天堂のゲーム『スプラトゥーン』に登場するアイドルユニット「シオカラーズ」もニコニコ超会議でライブを行った過去がある。しかし、これまでのVR・ARライブが「キャラクターたちが現実世界にやってきてライブを行う」という形を取っていたのに対して、今回のライブは「観客が仮想空間に赴いてライブを楽しむ」という形で行われた。

 仮想空間でのライブは世界初の試みとだけあって、これまでの”劇場体験”とは全く違うものだった。どこまでもせり上がる舞台はやがて空を舞い、輝夜 月はステージから開放されて縦横無尽に飛び回った。観客の送るエモーションはリアルタイムで反映され、演者もそれを確認できる。エモーションに応じてどんどん巨大になるエビーバーが目の前で爆発すると、早着替えが終わり、最後には会場ごと大爆発……いずれも今までのライブでは不可能な未知の演出であり、舞台表現の最先端にあることは間違いないだろう。観客がこの体験を同空間で共有できることの価値は計り知れない。

 また、これらの強烈な演出が、次回以降のライブでさらに研ぎ澄まされるのも楽しみだ。輝夜 月に限らず、他のバーチャルYouTuberもライブをすることになれば、ますます仮想空間でのライブの可能性は広がるだろう。VRライブは無限の拡張性を秘めている、そう思えるライブを見られたことに感謝しつつ、今回、ライブビューイングでの参加となったことが少し悔しい。次のライブは絶対VRグラスを着けて参加したい! と思える体験だった。(白石倖介)

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