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映画の面白さを最大限引き出す音響で、キング・オブ・カルト特集が京都で開催

ナタリー

21/4/12(月) 21:45

「boid sound映画祭 キング・オブ・カルト特集」チラシビジュアル

「boid sound映画祭 キング・オブ・カルト特集」が、4月16日から22日にかけて京都・京都みなみ会館で開催される。

映画評論家の樋口泰人が主宰するboidは、爆音映画祭や映画配給、書籍の出版などを手がけてきたレーベル。boid sound映画祭は劇場にライブ向けの音響機器をセッティングする爆音映画祭とは異なり、機材は持ち込まず、映画館の音響能力を最大限生かした形で上映を行う。

樋口は特集の開催に向けて「とにかく新たな機材はなにも入れない。ただ単に、可能な範囲でボリュームを上げ、会場の響きを聴きながら映画の面白さを最大限に引き出す微調整をする。スイッチひとつで通常の設定にも戻せるし、その映画のためにチューニングされた音にすることもできる。今はそれを『boidsound』と呼んでいる。ボリューム大きめの適音上映。たったそれだけのことで映画が変わる。映画館が歌い始める。閉じられた空間が世界に向けて広がり始める」とコメントしている。

ラインナップには、“ホラー映画の父”の異名を持つマリオ・バーヴァの「血ぬられた墓標」「呪いの館」、トビー・フーパーの「悪魔のいけにえ」「マングラー」、ジョン・カーペンターの「ゼイリブ」「ゴースト・オブ・マーズ」、デヴィッド・リンチの「イレイザーヘッド」「ロスト・ハイウェイ」が並んだ。4月17日と18日は全作上映前に樋口による解説を実施。さらに17日の「ゴースト・オブ・マーズ」では映画作家の篠崎誠、18日の「ロスト・ハイウェイ」では文筆家の五所純子が樋口とアフタートークを行う。

boid sound映画祭 キング・オブ・カルト特集

2021年4月16日(金)~22日(木)京都府 京都みなみ会館
料金:一般・シニア 1800円 / 学生・会員 1000円
<上映作品>
「血ぬられた墓標」
「呪いの館」
「悪魔のいけにえ」
「マングラー」
「ゼイリブ」
「ゴースト・オブ・マーズ」
「イレイザーヘッド」
「ロスト・ハイウェイ」

樋口泰人 コメント

小さな音から始める
―京都みなみ会館boidsoundホラー特集に寄せて

映画館の音響機材の能力を最大限に使いたい。うまくやれば大爆音は無理でもそれだけで十分にすごい音を出すことができるし、映画も俄然面白くなる。常々そう考えていた。とにかく爆音上映は燃費が悪い。上映のたびに重く大きな機材を運び込み、調整する手間と経費を考えるだけで、簡単にはやれなくなる。そんな大事にしなくてももっと気軽に軽い気持ちでやれないか。たまたま入った映画館の音がすごく気持ちよくて映画も思わぬ面白さ、こんなことならまた来週も来よう。そんな気持ちになるような上映。
そんな呼びかけにみなみ会館が応えてくれた。とにかく新たな機材はなにも入れない。ただ単に、可能な範囲でボリュームを上げ、会場の響きを聴きながら映画の面白さを最大限に引き出す微調整をする。スイッチひとつで通常の設定にも戻せるし、その映画のためにチューニングされた音にすることもできる。今はそれを「boidsound」と呼んでいる。ボリューム大きめの適音上映。たったそれだけのことで映画が変わる。映画館が歌い始める。閉じられた空間が世界に向けて広がり始める。
みなみ会館スクリーン1の機材は劇場引っ越しの前から使用している古い機材だが、その歴史が作り出す暖かい音がする。うまくバランスが取れたときには身体の隅々までその音が浸透し、心が温まる。すでに上映された「ラスト・ワルツ」や「大和(カリフォルニア)」の割礼とGEZANのライヴシーンの音を聴いた方は、すでにその音の暖かさと世界の広がりと変容を体験されたことと思う。とにかく一度聴いてほしい。新しく立派な機材も面白いが、古い機材のこの感触。
とんでもない大音量が出るわけでもない。クリアで鮮明な音がわれわれを宇宙の果てまで連れて行ってくれるわけではない。だがそれでもわれわれは宇宙の果てに立つことができるのだ。本当に簡単なことだ。単に一歩、小さく踏み出せばいい。その小さな足音が世界を変える。そしてそれはさまざまな世界とつながっていく。そこからはさまざまなものが飛び出してくる。今回のホラー映画特集は、そんな異世界との交流の場ということにもなる。広がり始めた世界の果てで、別世界の異物に触れる。その感触。それはおそらく人生の始まりと呼んでもいい、誕生の喜びに満ちているはずだ。

4月16日から1週間。京都みなみ会館の新しい音の祭を是非体験してみてください。

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