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Newspeakが投じた「Pyramid Shakes」の意味 バンドの変遷から4カ月連続リリースの背景までを探る

リアルサウンド

20/6/15(月) 18:00

 新型コロナウイルスの感染拡大により、以前のように観客を入れてライブを開催することが難しくなったことを受けて、Newspeakが4カ月連続でシングルをリリースすることを発表。その第1弾となる「Pyramid Shakes」の配信がスタートした。そこで本稿では、あらためてNewspeakとはどんなバンドなのか振り返るところから、彼らの魅力や今回のリリースにあたっての想いに迫る。

 Newspeakは2017年の初めから本格的に始動した。筆者が初めて彼らのライブを観たのは、続く6月に会場限定EP『What We Wanted』をリリースした頃。そのオリジナリティとポップな強度に、例えばOasisやKasabian、Coldplay、The KillersやArctic Monkeys、The 1975といった、インディペンデントな姿勢をスタジアムに響かせ、大衆的なレベルでロックの概念を一歩前に推し進めたバンドの姿が重なった。

Newspeak – What We Wanted (Official Music Video)

 そして彼らは同じ年の『SUMMER SONIC』や『マグロック』といった大型フェスティバルに早くも出演。11月には私がそのパフォーマンスの先に見たスタジアムへの予感が確信に変わるシングル『July』をリリースする。夢も希望も切なさも儚さも、あらゆる感情を凝縮し爆発させたようなメロディと壮大なサウンドスケープは、“圧倒的な牽引力とカタルシス”という彼らのイメージを決定付けたと言っていいだろう。

Newspeak – July (Official Music Video)

 では、なぜNewspeakはこれほどまでにビッグなエネルギーを持っているのか。それはメンバーそれぞれのバックグラウンドに由来しているように思う。

 リヴァプールに在住していた経験があり、ワールドスタンダードなロックやエレクトロニックミュージックと生活の距離が近い環境で育ったRei(Vo/Key)。60年代のブルースロックやサイケデリックロックといったクラシックなギターミュージックに触発され、オンタイムで流れていたインディーロックの洗礼を受け、go!go!vanillasの初代ギタリストとしても腕を磨いたRyoya(Gt)。インディーロックだけでなくニュー・メタルやファンクなどにも没頭していた時期があり、ライブハウスでPAとしても働き音を作るスキルを学んだYohey(Ba)。ポップパンクやメロディックパンクをルーツとしたストロングスタイルのドラミングを得意としながら、音楽プロデューサーとしても活躍する視野の広さや音に対する繊細な一面も持つSteven(Dr)。そんな4人の個性が“ポップを塗り替える”という同じ方向を向いたことによる化学反応と、作曲からマスタリングまで、曲を世に出すまでのすべてを自分たちだけで完結させられるからこその鮮度(衝動)と純度(独自性)を武器に、2018年10月にはミニアルバム『Out Of The Shrinking Habitat』をリリースした。

Newspeak – Lake (Official Music Video)

 続いて2019年にリリースしたアルバム『No Man’s Empire』では、収録曲中「Wide Bright Eyes」のミックスをBeckやBelle And Sebastianを手掛けたTony Hofferに、「Stay Young」はDIIVやArto Lindsayらを手掛けたDaniel J Schlettに依頼し、客観的な視点を加えることで持ち前の魅力はさらに大きくアップデート。

 そのことについて本人たちに質問すると、「Wide Bright Eyes」について、「“みんなに踊ってほしい”ってリクエストしたんだけど、びっくりした。自分だったらあそこまでスネアの音は大きくしない。勉強になった」(Steven)、「クラブのチルスペースでまったりしていたら“踊りやがれ”ってフロアに放り投げられたみたいな」(Rei)と話してくれた。確かに、過去の曲と聴き比べてみるとその進化はよりはっきりとわかる。

Newspeak – Wide Bright Eyes (Official Music Video)

 そして彼らの活動は今回のコロナ禍における4カ月連続シングルリリースに至るわけだが、「自分たちにできることは?」と自問自答した結果だという公式コメントの奥にはいったいどのような想いがあるのだろうか。それは前作『No Man’s Empire』という言葉に連なるものであると筆者は考える。

 同タイトルはどの勢力からも占有されない無人地帯“No Man’s Land”から想像を膨らませた言葉。それは、前述した“圧倒的な牽引力とカタルシス”というNewspeakらしさそのものであり、それに触れる前と後では景色が違って見えるという、優れた表現の本質に向かってひた走りオーディエンスとともに新しい世界を手に入れることへの宣言だとも受け取ることができる。そして今、ウイルスに侵略され現存する人類の誰もが未体験の打撃を受けるなか、自らを強く見つめ直し何がアウトプットできるか考えた結果なのだろう。

 その第1弾である「Pyramid Shakes」は、ウイルスが人々の価値観を揺さぶったことで、良心を再考する良いきっけかができた部分もあれば、心無い言葉が飛び交い胸を痛めることもあるが、いずれにせよエクストリームな異常事態のなかで、何を感じ何を選択すべきなのか、疑問を投げかけているかのような歌詞に、感覚を研ぎ澄ませと言わんばかりのスリリングでダンサブルなサウンドが印象的。この先の3曲に繋がる起承転結の“起”をダイレクトに表現したと考えられる、掴みに相応しいキラーチューンに仕上がっている。

Newspeak – Pyramid Shakes (Official Lyric Video)

 今回のコロナ禍で、人と人とが直接会うことにある種の壁ができてしまった。しかしその壁とは人を思いやる心でもあり、我々は人と人との繋がりの大切さをあらためて強く実感し、新たなアクションを起こすべきフェーズに立っている。そんななか、それぞれの在宅時間が長くなったことにテクノロジーの発達も重なって、個人がデスクトップから発信できる表現の利便性やスピード感、リアルな温度感の追求がますます激化すると言われている。しかし一方で、“お前じゃなきゃいけないんだ”というプリミティブな一蓮托生のバンド物語がどんなムーブメントを起こすのか、Newspeakがこの4カ月を通してどんな世界を描いてくれるのか、それもまた楽しみで仕方がない。

Newspeak「Pyramid Shakes」

■リリース情報
「Pyramid Shakes」
6月12日(金)より配信リリース
配信先はこちら

オフィシャルサイト

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