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“驚異の16歳”が鳴らす、ドライで痛快なロックンロール! ザ・ストライプス来日公演レポート

リアルサウンド

13/10/13(日) 14:00

20131013strips-01.jpgザ・ストライプスのライヴ模様

 2011年に平均年齢16歳のメンバーで結成されたアイルランド出身のバンド、ザ・ストライプスが現在、日本ツアーを行っている。各地の公演チケットはほぼソールドアウトで、10月18日には『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)への2度目の出演も決まっているという。洋楽の若手バンドとしては久々に大きな盛り上がりを見せる、彼らの魅力とはいったい何なのか。音楽ライターの青木優氏が、10月9日の恵比寿リキッドルーム公演の模様と、バンドの横顔をレポートする。(編集部)

 ザ・ストライプスは、間違いなく、最新型のロックンロール・バンドだ。再び日本を襲来した4人の雄姿を目撃して、あらためてその思いを強くした。

 僕が見ることができたのは、今回の日本ツアー2日目の10月9日、恵比寿リキッドルーム。9月にリリースしたデビュー・アルバム『スナップショット』が全英で初登場5位を獲得した勢いに乗っての再来日公演である。

 ステージでの4人は1時間強、ひたすら演奏しっぱなしで、それに対するフロアはただただ熱狂が続く。リーダーにしてギタリストのジョシュ・マクローリーのMCも「トキオ、楽シンデル?」「今日は特別な日だよ。ジョン・レノンの誕生日なんだ!(この直後、ビートルズを演奏)」「みんな、ダンスしてくれる?」といった程度。あとはシャープなブルース・ロックやリズム&ブルースが次々にプレイされるばかりなのだ。彼らがシーンに現れた当初は、10代半ばの子たちがこんなに渋くてレトロなロックをやっている! という驚き方をされることが多かったが、幾多のライヴで鍛えてきた4人の演奏からは、むしろ経験をしっかりと積んだ実力の確かさのほうを感じる。彼らは全員が進学の道を捨て、ロックの世界に飛び込んだ。若くして、人生を音楽に捧げる決意をしたのだ。

 セットリストにはボ・ディドリーやニック・ロウのカバー、あるいはドクター・フィールグッドがレパートリーにした曲など、ロックンロールの先達者たちの作品が多い。もっとも、アルバムが完成した現在ではオリジナルの比率が増えたが、たとえば人気曲の「ミステリー・マン」や「ブルー・カラー・ジェーン」にしても、ロックンロールの伝統スタイルから逸脱する楽曲構造では決してない。

 では、何がこのバンドの独特さであり、新しさなのか? それはひとえにエイトビートのロックンロールのエクスタシーを抽出し、それを無心で放射していくような、まっさらな感覚にある。4人のパフォーマンスは、パワーよりもスピード、雰囲気よりも瞬発力に懸けている気配が強い。だからとにかく歯切れがいいし、テンポがいい。熱量もありながら、それ以上に痛快で爽快なのだ。

20131013strips-02.jpgリードヴォーカルのロス・ファレリー

 ここからは、メンバーについて触れよう。彼らの雰囲気は、ワイルドでもタフでもなく、むしろエレガントでスウィート。ヴォーカルのロス・ファレリーは、ステージ上ではサングラスをかけ、時にはしわがれた声でシャウトを轟かせ、ブルースハープも吹くが、実は最年少の16歳で、ふだんはメンバーの中で一番シャイで控えめ。マイクを持っているのにMCはほとんどしない。ギターのジョシュ18歳でバンドの司令塔的な立場。ソングライティングにおいても中心的な存在だ。ベースのピート・オハンロンは17歳という年齢のわりに落ち着いた雰囲気の持ち主で、ベースプレイに卓越したセンスを見せる。達者なリズムを叩くドラムスのエヴァン・ウォルシュも17歳、このメンバーが集まり、バンドを始めるきっかけになった存在だ。

 簡単にバンドのおさらいをすると、彼らの地元はアイルランドのキャヴァンという田舎町。ロス以外の3人は同じ学年で、エヴァンの家に集まっては両親のレコード・コレクションを聴きあさっていたという。そこで、みんなで遊び半分で楽器をやっていたところにロスが加わり、バンドとして正式に活動を始める決意をする。それがわずか2年前のことだ。以下は、4月の来日時に僕がインタビューした時の彼らの発言である。

「(親たちは)最初からすごくサポートしてくれる。とくにエヴァンの両親はね。僕らは彼の家で過ごした時間が長くて、そこでチャック・ベリーやドクター・フィールグッドを聴いて育ったんだ」(ジョシュ)

「子どもの頃からそういう家だったし、僕の父さんはギグがあると車を運転して、みんなを連れてってくれたし。実は今もマネジメント・チームの一員で、向こうの部屋にいるよ」(エヴァン)

 そう、このバンドでは、彼らの親たちの大きなバックアップがあったそうなのだ。それからライヴを中心とした活動を続け(「去年だけで200から250本はやったんじゃないかな」とはピートの弁)、やがて彼らの音はあのエルトン・ジョンの耳に触れ、彼の関係のマネジメントと契約を結ぶことになる。以後、プロデュースにはクリス・トーマス(セックス・ピストルズやピンク・フロイド、ビートルズなど数多くの作品で有名)が参画し、まずはほとんど祖父母の年齢のミュージシャンたちから認められたわけだ。以後、ストライプスのことはポール・ウェラー、ノエル・ギャラガー、ウィルコ・ジョンソン、カール・バラーといった大先輩たちが絶賛し、ブラーも彼らをフロント・アクトに起用した。また、曲作りの面で助力をしたクリス・ディフォード、自身のショー番組にゲスト出演させたジュールズ・ホランドといった元スクイーズ人脈も関わるなど、ストライプスはすでにUKロックの正統筋から認められている感があるのだ。

20131013strips-03.JPG10代という若さながら、全世代のロックファンから注目されている

 そんなストライプスがUKのみならず、日本で受け入れられたのにも理解できる節がある。というのは、現在のTHE BAWDIES、あるいはかつてのミッシェル・ガン・エレファントやルースターズのように、日本のロック・ファンの好みの根底には、シンプルなブリティッシュ系のエイトビートがあるからだ。今回の来日ツアーで興味深かったのは、福岡公演は当初キャパ300のBe-1で企画されていたのだが、チケット発売後、あまりの人気に、2倍強の人数が収容できるDrumLogosに変更となったこと。福岡が発祥の地であるめんたいロック(注釈:先述のルースターズなど)は、ルーツにリズム&ブルースやパブ・ロック(注釈:ドクター・フィールグッドなど)を持つ。ストライプスのロックンロールに、九州のロック・ファンの血が騒いだのでは? と僕は予測する。

 話をライヴに戻そう。今回のライヴで、ストライプスの無二の個性を最も感じたのは、中盤に差しかかるところで披露された「エンジェル・アイズ」だった。スローなブルース・ロックの同曲は微妙なファンクネスもたたえていて、このバンドのビート感の独自性を思わせるのだが、この手のものは従来のブルース・ロック・バンドであればグッとテンポを落とし、リズムを引きずるかのように、ズブズブにブルージーにしたがりがちだ。それがストライプスの場合、意外とアッサリ。音の深みに溺れる領域にまで行かず、スパッと終わるのだ。ここからは完全に私見だが……このへんは彼らの若さゆえの浅さなどではなく、むしろ面白みではないだろうか? そもそもブルース好きは、タバコをくゆらせ、酒も飲みながらギターを弾いて、客に「おっ、渋い!」と言わせたがるものだ(偏見だったら申し訳ない!)。そして、そんな淀んだ空気まで含めたものがブルースの魅力だったりもするわけだが、ストライプスは、そういった不健康なまどろっこしさとは無縁。もっと切れ味が鋭くて、言ってみればドライなのだ。ロックンロールのエクスタシーのコアの部分だけ奪い取って、ザクザク! バシバシ! と演奏してしまう。そこには酒もタバコも(それに、おそらくドラッグも)、今の彼らには不要だ。

 そうしたサウンドの感触はドクター・フィールグッドをさらに発展させたものといえるし、バンドとしてのハイレベルなありようは、比較されることが多いアークティック・モンキーズをやはり思い起こさせる。UKロック・ファンであれば、デビュー時のアークティックが匂わせていた「こいつらは明らかに別のステージに立ってる」感を覚えている人も多いと思うが、あれにちょっと通じるような文体の新しさ、あらかじめ持っている異質さを、ストライプスにも感じるのだ。なお、ストライプスは帰国後から11月にかけて、そのアークティックのUKツアーのフロント・アクトを務める予定である。

 そんなストライプスのオリジナリティは、老いも若きもいっぱいのフロアを熱狂させて当然。そう、今回も会場を埋めたのは、バンドよりも年上のオーディエンスがほとんど。4月の初来日時も「この10代バンドを見てみよう」という、ヘタしたら本人たちより2代ぐらい上のロック・ファンまでが大挙してチケットを求めていた。もっとも、今回はハタチ前後とおぼしきお客さんや学生服姿の子も見かけたので、春以降の話題性やアルバムのリリースを受けて、ファンの年齢層が下のほうにもちゃんと広がっていることが感じられて、うれしかった。

 この10日までで東京の3公演を終えた彼らは、この週末は朝霧JAMと日本のアマチュア・バンドとの共演イベント「全国ロックン・ロール学園祭」に出演。その後は福岡、大阪、名古屋とツアーを廻り、18日には『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に2度目の出演を果たす。ライヴのチケットはいずれもソールドアウトとのことだが、若くて新しいこの才能の爆発、せめてTV越しにでも体感しておいてほしい。

■青木優(あおきゆう)
1966年、島根県生まれ。1994年、持ち込みをきっかけに音楽ライター業を開始。現在「テレビブロス」「音楽と人」「WHAT’s IN?」「MARQUEE」「オリジナル・コンフィデンス」「ナタリー」などで執筆。
ブログ:子育てロック

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