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WANDS、上原大史迎えた“90年代バンドの復活劇”から新章へ 平成の懐かしさと令和の新しさ繋ぐハイブリッドな音楽性

リアルサウンド

20/10/28(水) 16:00

 1990年代と2020年が交わり、WANDSの新たな物語が始まるーー。

 WANDSが10月28日、ニューアルバム『BURN THE SECRET』をリリースした。1999年10月の『AWAKE』以来21年ぶり、“第5期”としては最初のアルバムとなる本作には、ヒット曲を連発した90年代のスタイル、そして、新ボーカリスト・上原大史が加わった新たな音楽性が刺激的なバランスで融合している。

 まずはこれまでのWANDSのキャリアについて、簡単に振り返っておきたい。

 「もっと強く抱きしめたなら」(1992年)「時の扉」(1993年)「世界が終るまでは…」(1994年)などのヒット曲を次々と生み出し、90年代前半の音楽シーンを席巻したWANDS。その後、上杉昇(Vo)、柴崎浩(Gt)がオルタナティブロックを志向し、音楽性の違いから1997年初頭にバンドを脱退。木村真也(Key)に、新たなボーカリストとギタリストを加えて活動を継続するも、2000年に“解体”(解散)に至った。

 WANDSの再始動が発表されたのは、2019年11月。前年からプロデューサーの長戸大幸を中心に再始動に向けた動きは活性化し、最終的に柴崎、木村、そして、三代目ボーカリストに抜擢された上原大史によって“第5期WANDS”がスタートした。

WANDS 「BURN THE SECRET」 【TEASER】

 これまでにリリースされたシングルは、表題曲がTVアニメ『名探偵コナン』オープニングテーマに起用された『真っ赤なLip』、オリコン週間ランキングで3位を記録した『抱き寄せ 高まる 君の体温と共に』。どちらも90年代のWANDSのイメージを継承しつつ、サウンドメイク、アレンジを含め、2020年のシーンにアジャストした音楽性を実現。以前からのファンはもちろん、“初めてWANDSの新曲を聴いた”という10代、20代のリスナーにも訴求し、理想的な幕開けとなった。

 特筆すべきは上原のボーカル。数々のヒット曲を持ち、知名度も高いバンドのボーカルを受け継ぐことは当然、きわめて高いハードルが待ち構えていたわけだが、上原はこれを見事にクリア。WANDSのイメージを損なうことなく、自らの個性もしっかりと打ち出し、ファンからも高い支持を得ている。キャリアのあるバンドが新ボーカリストを擁し、20数年ぶりの活動再開を成功させた例は、日本ではきわめて稀だろう。(10月16日放送の『ミュージックステーション』への出演が決まった際も、SNSでに「WANDSのボーカルを引き受けてくれてありがとう」「Mステ出演だって上原さんがいたから叶ったこと」などのコメントが数多く寄せられた)

WANDS 「BURN THE SECRET」全曲紹介

 活動スタートから約1年を経て届けられた『BURN THE SECRET』は、前述したシングル曲を含む“第5期”のオリジナルが6曲、90年代の楽曲のセルフカバーが4曲。まさに90年代と2000年が交差するハイブリッドな仕上がりになっている。

 まずはオリジナル曲について。オープニング「David Bowieのように」(作詞:上原大史/作曲・編曲:柴崎浩)は、エキゾチックな雰囲気のメロディと鋭利なギターフレーズを軸にしたナンバー。緻密に構築されたアレンジとドラマティックな展開が一つになった構成は、現在のWANDSのスタイルを端的に示している。歌詞もインパクト十分。この先の未来に何もなかったとしても、もう後戻りはできない。〈David Bowie のように綺麗に死ねるのなら/欲望、絶望も、痛みも目を逸らさない〉というラインからは、上原が抱えているWANDSのボーカリストとしての決意が伝わってくる。

 WANDS流のロックをもっとも強く体感できるのは、「Burning Free」(作詞:上原大史/作曲・編曲:柴崎浩)だろう。80年代ハードロックを想起させるサウンドは、柴崎の音楽的ルーツに直結。特にレイドバックしたオルガンとともに炸裂する速弾きギターソロは、このバンドの武器の一つだ。単なる懐古趣味ではなく、精緻に整えられたビート、解像度の高いサウンドメイクを含め、しっかりと2020年のロックミュージックに結びつけていることも記しておきたい。

WANDS 「David Bowieのように」 MV

 アルバムの最後に収められた「アイリメンバーU」(作詞・作曲:上原大史/編曲:柴崎浩)は、作詞・作曲を上原が手がけたナンバー。90年代の織田哲郎を思い起こさせるメロディ、“君”との別れの光景を描いた歌詞はおそらく、WANDSを意識して制作されているはず。“WANDSの上原大史”としてこの楽曲を形に出来たことも、このアルバムの大きな意義だと思う。

WANDS「抱き寄せ 高まる 君の体温と共に」 MV

 セルフカバーは「Secret Night ~It’s My Treat~ [WANDS 第5期ver.]」(作詞:上杉昇/作曲:栗林誠一郎/編曲:柴崎浩)、「明日もし君が壊れても [WANDS 第5期ver.]」(作詞:坂井泉水/作曲:大野愛果/編曲:柴崎浩)、「もっと強く抱きしめたなら [WANDS 第5期ver.]」(作詞:魚住勉・上杉昇/作曲:多々納好夫/編曲:柴崎浩)、「世界中の誰よりきっと [WANDS 第5期ver.]」( 作詞:上杉昇・中山美穂/作曲:織田哲郎/編曲:柴崎浩)の4曲。全曲に共通しているのは、原曲のアレンジを変え過ぎず、さらなるビルドアップを図っていること。イントロのフレーズ、楽曲の構成を含め、原曲のイメージをしっかりと残しながら、各楽器の音の精度、全体的なダイナミズムを大きく向上させているのだ。

 中心を担っているのはもちろん上原の歌。もともとの声質が初代ボーカリストの上杉昇に似ていることもあるが、原曲の魅力を引き出すと同時に、新たな生命を吹き込むことに成功している。アダム・ランバートがQueenを復活させたように、上原はWANDSの楽曲を蘇らせた……と言えば、少々大げさだろうか。だが、少なくても彼がWANDS復活の最大のポイントだったことは間違いないだろう。

 10月31日、11月1日に初の有料配信ライブ『WANDS Streaming Live〜BURN THE SECRET〜』を開催。“BURN THE SECRET”というタイトル通り、初のオリジナルアルバムによって、全貌を明らかにした第5期WANDS。ここから始まる新たなキャリアは、“90年代のバンドの復活劇”というストーリーとともに、日本の音楽シーン全体に大きな示唆を与えることになりそうだ。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■リリース情報
『BURN THE SECRET』
10月28日(水) リリース
初回限定盤(CD+DVD):¥3,500(+税)
【特典DVD】 MUSIC VIDEO
「真っ赤なLip」「抱き寄せ 高まる 君の体温と共に」「Secret Night 〜 It’s My Treat 〜 [WANDS 第5期 ver.]」Short ver.

通常盤(CD):¥2,700(+税)
初回生産分のみの封入特典
「抱き寄せ 高まる 君の体温と共に」「Secret Night 〜 It’s My Treat 〜 [WANDS 第5期ver.]のMVメイキング映像が視聴できるSPECIAL MOVIE視聴用シリアルナンバー入り

<収録曲>
1.David Bowieのように 作詞:上原大史 / 作曲・編曲:柴崎浩
2.抱き寄せ 高まる 君の体温と共に 作詞:上原大史 / 作曲・編曲:柴崎浩
3.賞味期限切れ I love you 作詞:上原大史 / 作曲・編曲:柴崎浩
4.Secret Night ~ It’s My Treat ~ [WANDS 第5期ver.]  作詞:上杉昇 / 作曲:栗林誠一郎 / 編曲:柴崎浩
5.Burning Free 作詞:上原大史 / 作曲・編曲:柴崎浩
6.真っ赤なLip 作詞:上原大史 / 作曲・編曲:大島こうすけ
7.明日もし君が壊れても [WANDS 第5期ver.]  作詞:坂井泉水 / 作曲:大野愛果 / 編曲:柴崎浩
8.もっと強く抱きしめたなら [WANDS 第5期ver.]  作詞:魚住勉・上杉昇 / 作曲:多々納好夫 / 編曲:柴崎浩
9.世界中の誰よりきっと [WANDS 第5期ver.]  作詞:上杉昇・中山美穂 / 作曲:織田哲郎 / 編曲:柴崎浩
10.アイリメンバー U 作詞・作曲:上原大史 / 編曲:柴崎浩

■ライブ情報
『WANDS Streaming Live〜BURN THE SECRET〜』
2020年10月31日(土)Day1  WANDER-LAND NEO Special Edition (ファンクラブ[WANDER-LAND NEO] 会員限定)
2020年11月1日(日)Day2 一般公演
チケット購入、ライブ詳細情報はこちら
配信メディア:Thumva
【アーカイブ配信期間:2020年11月2日(月)10:00〜2020年11月9日(月)18:00】

WANDS Official Website

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