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OKAMOTO’S オカモトショウのマンガビレッジ

マンガ史に残る名エンディング!  人間の奥底を描く『先生の白い嘘』

隔週連載

第46回

20/8/31(月)

レイプ、男女間の性の不平等といったテーマを中心に据え、高校を舞台にした異色の人間ドラマを描き切った『先生の白い嘘』。『おはようおかえり』『おんなのいえ』などで知られる鳥飼茜の問題作をオカモトショウが独自の視点で解説します!

── 今回取り上げるのは、鳥飼茜先生の代表作の一つ『先生の白い嘘』。これは問題作と言っていいんでしょうか……?

オカモトショウ(以下、ショウ) そうだと思います。実はこの前、鳥飼先生にお会いする機会があって。とても素敵な方でした。

── マンガはかなりエグく、シリアスですよね。『先生の白い嘘』の主人公は、レイプ・サバイバーの24才の高校教師。性の悩みを抱えた男子生徒、レイプ犯の男との関係や、学校内のクラスカーストなど複雑で深刻な人間模様が描かれています。

ショウ 以前から読んでいて好きな作品だったんですが、自粛期間に読み直してみて、やっぱりすごいなと。レイプ、DV、男女の性の捉え方の問題なども描かれていますが、高校を舞台にした“日常系”みたいなところもあるんですよね。主人公の女性はレイプ被害に遭ったことで、自分の身体が汚された感覚を抱えていて、精神的にも崩れていく。誰かを求めたり、愛するということがわからなくなって、自分で自分を否定し続けているんですよね。

── 他のキャラクターも自己肯定力が低いですよね。それぞれトラウマやコンプレックスを抱えている。

ショウ このマンガのなかでは拡大解釈して描いているところもあるんですが、同時に、いまの日本社会にも通じている気もしています。自分を肯定できない感じというのかな。そういう意味では、共感できる部分も多いマンガだと思います。レイプする側の男も、いろんなものを抱えているんですよ。初めてセックスしたときに、痛がって嫌がる女性の顔を見て、「女ってこれだ」と思ってしまったり。じつはその男も子供のときに父親から暴力を受けていて、無抵抗な母親の姿がトラウマになっていることも後々わかるんですが……。

── 主人公と親友の女性がじつは蔑み合ってたり、人間の怖さ、不安定さが滲み出ています。

ショウ 人間の奥底にある、フタを開けたくない感情をしっかり描いているんですよね。人によっては読んでるうちに滅入っちゃうかもしれないですが、ただただ悲惨だったり、単にエグイだけじゃなくて、「こういうことって、実際にあるかも」と思わせるリアリティがある。たとえばスクールカーストの描き方もそうですけど、イヤな人間関係からどうしても抜け出せず、がんじがらめになっていく。そういう表現がめちゃくちゃ上手いんです。すごく人のことを観察してるし、洞察が深い。そこも鳥飼先生の漫画家としての素晴らしさだと思います。

── キャラクター同士の会話も緊張感がありますね。

ショウ セリフ回しもいいですね。それも観察眼から来てると思うんですが、核心の部分を言葉にしないで、しっかり心情を伝えてるんですよ。「こういう理由だから、私はイヤです」とは言わないで、別の言葉を話すんだけど、読者には「この人、イヤがってる」ってわかる。しかもマンガのなかでは意思の疎通がぜんぜん出来ていないせいで、どんどん関係がこんがらがってしまう。そのあたりも上手いですよね。登場人物も多くないし、スケールが大きい作品でもないんですが、音楽に例えると“プロダクト”がいいんです。歌詞、メロディ、アレンジ、録音がしっかりしていて、派手なポップソングではないんだけど、めっちゃいい。終わり方も素晴らしいです。「マンガ史に残る名エンディング」みたいな企画があったら、絶対に入れたい(笑)。

── 最終巻、名セリフがたくさんあって。主人公の「反省しているのは 私が 愛っていうものを信じられなかったことです」もそうですね。

ショウ 終わらせ方をどうするかって、マンガの大命題じゃないですか。この連載でも何度か話してますけど、しっかり締めるのか、それとも締めないで「日々は続いていく」ということにするのか。『先生の白い嘘』のエンディングはここでは言わないですけど、もちろんただのハッピーエンドではない。マンガのなかで描かれたすべての関係を拾い上げながら、それぞれがキレイに光るものを見つけて、それを持って前に進む──本当に美しい終わり方だし、これだけ重い題材を描きながら、よくぞやったな!って。ぜひ、みなさんもこの感動を味わってほしいです。

── 最後にOKAMOTO’Sの近況についてはいかがですか?

ショウ 新作のEP『Welcome My Friend』が8月26日(水)にリリースされました。TVアニメ「富豪刑事:Balance UNLIMITED」のエンディング・テーマ「Welcome My Friend」を始め、6曲収録されています。「Welcome My Friend」はMVも公開されましたね。MVでは髪をオールバックにしていつもと違った雰囲気になっているので、ぜひ観てください。あとは、9月6日にCreepy NutsとOKAMOTO'Sの対バン生配信ライブ(「CreepyNutsとOKAMOTO'S オンラインショー」)をやります。いろいろと決まってきて対バンならでは配信ならではの面白い企画になるので、こちらもぜひ観てください!

(取材・構成=森朋之)

プロフィール

オカモトショウ(OKAMOTO’S)

1990年生まれ、ニューヨーク出身。 OKAMOTO'Sのボーカル担当。
2010年3月、「S×SW2010」に日本人男性としては最年少での出演を果たす。そのまま全米6都市を廻るツアーをおこない、5月に1st.アルバム『10'S』でデビュー。
その後もオーストラリアツアーや夏フェスなどに出演。11月には2nd.アルバム『オカモトズに夢中』、翌年9月には3rd.アルバム『欲望』と、ライブを続けながらもアルバムを立て続けにリリースする。
2017年、7thアルバム『NO MORE MUSIC』を発売し、中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを成功。2019年、8thアルバム『BOY』を発表し、7月には日本武道館でのワンマンライブを成功させる。その他、2018年よりNHK教育テレビ「ムジカ・ピッコリーノ」のベルカント号・船長、ジュリオとして出演中。

Label : Sony Music Labels
HP : http://www.okamotos.net/


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