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『エール』中村蒼は“ずぐだれ”に戻った窪田正孝を救えるか? 堀田真由の“悪女の笑み”も

リアルサウンド

20/4/17(金) 12:00

 「交際の境界線についてはまたあした!」という、独特のエンディングを迎えた連続テレビ小説『エール』(NHK総合)第15話。つづく第16話では、川俣銀行の面々が“交際の境界線”について、「一緒にお酒を飲む!」「手を繋ぐ」と話し合う。肝心の裕一(窪田正孝)は、「僕はお会いしてお話してれば、楽しいんです」と弱気な返事だ。

参考:『エール』に登場の堀田真由 過去出演作からその魅力を紐解く

 そんな裕一に、「接吻ね」と焚きつける昌子(堀内敬子)。動揺して支店長の落合(相島一之)に熱いお茶をかけてしまったが、乗せられてその気になった裕一はアドバイスを活かすべく、想いを寄せる志津(堀田真由)とのデートに臨む。昌子たちの協力も虚しく、キスのチャンス手前で怖気づいてしまった裕一。けれど、「これからは外で会いましょう」と志津に微笑まれたことで、浮かれ気分に浸っていた。

 明るい川俣銀行の人たちに囲まれ、裕一のフナのようになっていた目は再び光を取り戻した。けれど本当のところ、裕一は現実逃避をしているにすぎない。絹織物業が発達した活気ある川俣で浮かれる裕一は、まるで田舎から上京した大学生のようだ。

 そんな裕一の目の前に、成長した幼なじみの鉄男(中村蒼)が現れる。「何やってんだ、おめぇ」と裕一に語りかける鉄男。まっすぐ裕一を見つめる瞳は、驚くほどに、「このずぐだれ(いくじなし)が!」と言い放った幼き日の鉄男の瞳と変わらない。鉄男は父・善治(山本浩司)の借金で夜逃げした以降、消息不明だったが、藤堂先生(森山直太朗)から紹介された福島日民新聞社で記者を務めていた。「得意なことにしがみつけば、必ず道は開ける」という裕一の言葉に励まされ、夢を信じて詩を書き続けてきた鉄男。それにもかかわらず、久しぶりに見た裕一はスーツを着て、浮かれ気分で女性とデートをしているのだ。鉄男はショックだったに違いない。

 音楽に出会い、“ずぐだれ”じゃなくなったと思っていた裕一が、また家庭の事情を言い訳に夢を諦める“ずぐだれ”になっている。そんな裕一を見かねて、「俺が詩を書き、お前が曲を作る。その歌がレコードになり、みんなが聴く。そんな夢を描いてたけど、それもまた夢だな」と言った鉄男の言葉は厳しい。けれど、鉄男はただむやみに相手を傷つけることはしない、心根の優しい男だ。彼なりの、裕一に向けた“エール”に違いない。

 幼なじみにも失望され、伯父の茂兵衛(風間杜夫)からも仕事の姿勢を注意されてしまった裕一は、残っているものは“恋心”だけだと志津のもとへ向かう。「君のことが好きです」という一世一代の告白を、笑い飛ばす志津。その正体は、近所の悪ガキと共に裕一をいじめていた、とみ(白鳥玉季)だった。とみは自分に気づかず、ダンスホールで無視した裕一に仕返しするため、しおらしい演技で騙していたのだ。

 呉服店に生まれ、幼少期は理解ある父親のもとで音楽家を目指し、今や権藤家の養子に入り、銀行の跡取りとして注目されている裕一。夢を諦めなきゃいけなかった裕一にとっては、幸せな生活ではなかったが、周りから見れば恵まれていると思うだろう。一方、とみは実家の店が潰れ、生活費を稼ぐために踊り子になったという。「あんたは昔からそう、そうやって私たちのこと馬鹿にしてんのよ」と、とみは裕一に感情をぶつけ、踊り子の仲間たちと去っていった。

 『エール』第3週「いばらの道」では、裕一の挫折と川俣での新しい生活が描かれた。夢を諦め、落ち込んでいる裕一を川俣銀行の面々が救い、立ち上がったところを再び志津が奈落の底に落とす。怒涛の展開の中、中村蒼が演じた鉄男が唯一の希望のように思える。周りから甘やかされがちな裕一にとって、今後も貴重な存在となっていくだろう。

 毎回視聴者の感想を代弁してくれる“朝ドラ受け”の『あさイチ』(NHK総合)では、キャスターの博多大吉が「でもまあ、これでリセットじゃないですか」とまとめていた。そう、川俣での平和で楽しい生活によって大好きだった音楽の夢を忘れ、仕事にもイマイチ身が入らない裕一が原点に戻るためのリセットなのだ。その気持ちを慮ると少し可哀想だが、裕一を見守っている視聴者からすれば、これで良かったというような気がしてしまう。

 第4週「君はるか」では、裕一の未来の妻、音を演じる二階堂ふみが登場する。初恋に現を抜かしていた裕一とは対照的に、音は何も変わらない。予告では、御手洗清太郎先生(古川雄大)から声楽を教わる姿や、「私は男の後ろを歩くつもりはないから、それが私の信条よ!」と男性の胸ぐらを掴む姿が映し出された。

 そんな音と裕一が、ついに文通で繋がる。強い信条を持った音が裕一にどんな影響を与えるのか。川俣でくさっている裕一が立ち上がり、また音楽の夢を追いかける姿を見守りたい。(苫とり子)

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