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『名探偵コナン』怪盗キッド/黒羽快斗の魅せる華麗なるショータイム

リアルサウンド

20/4/26(日) 14:50

 怪盗1412号――人呼んで怪盗キッド。変幻自在にして神出鬼没。白いタキシードに身を包む”月下の奇術師”で、鮮やかに獲物を盗み出す創造的な芸術家。彼を称する形容詞には事欠かない。

関連:【画像】工藤新一が登場する『まじっく快斗』4巻書影

 怪盗キッドは世間を騒がす大怪盗でありながら、作中世界には彼のファンが多い。ひとたび予告状が届けばニュースに取り上げられ、犯行現場には熱烈なファンが詰めかける。そして、彼を「キッド様」と呼んで慕うファンは、こちらの世界でも増え続けている。昨年公開された劇場版シリーズ第23作『名探偵コナン 紺青の拳』でも、シンガポールを舞台に大活躍し、また新たなファンを獲得した。

 さて、獲物も人の心も盗んでしまう困った怪盗の正体の話をしよう。工藤新一とそっくりな容姿で、マジックが得意な男子高校生・黒羽快斗。彼こそは、青山剛昌の初連載作品『まじっく快斗』の主人公である。『名探偵コナン』の怪盗キッド=黒羽快斗は、主人公・江戸川コナンのライバルであると同時に、彼自身が一つの物語を背負った存在なのだ。

 25年以上連載している原作漫画『名探偵コナン』で、怪盗キッドが登場した事件は、実は20にも満たない。しかし、これらの”キッド回”と呼ばれるエピソードは、その名の通り”主役級”のキャラクターが客演として参戦している、超豪華な特別回なのである。

■絶対外せない”キッド回”といえば?

 『名探偵コナン』の”キッド回”と呼ばれるエピソードから、特にチェックしておきたいものを紹介しよう。

 まずは、コミックス16巻収録の「コナンvs.怪盗キッド」のエピソード。「漆黒の星(ブラックスター)」を狙う予告状の解き明かしたコナンは、月に照らされた屋上で、怪盗キッドと出会う。相容れない存在である探偵と怪盗の初邂逅。この場面は一度見たら忘れられない。

 次に、コミックス30巻収録の「集められた名探偵! 工藤新一vs.怪盗キッド」。毛利小五郎を始めとする名探偵たちに届いた「黄昏の館」への招待状、その差出人は怪盗キッド……? 館で起こる事件にハラハラしていると、キッドにアッと言わされること間違いなし。

 64巻、65巻収録の「怪盗キッドvs.最強金庫」は、人間味あふれるキッドを楽しめるエピソード。難攻不落の金庫『鉄狸』に挑もうとするキッドが、コナンに正体を見破られるのだが、実はその目的は……。鈴木次郎吉との友情(?)にも注目だ。

 82巻収録の「怪盗キッドVS京極真」は、劇場版『紺青の拳』からキッドの魅力に目覚めた人にぴったり。空手家・京極真が恋人の園子を虜にするキッドに敵対心を燃やし、”世界最強の防犯システム”としてキッドの前に立ちはだかる。キザなキッドと、京極と園子の強い絆、どちらもグッと来る人は多いはず。

 さて、ここまで『名探偵コナン』のキッド回を紹介してきたが、「怪盗キッドの全てを知りたい!」という人におすすめなのは、実はコミックス『まじっく快斗』1~5巻だ。こちらでは、作中世界のファンが憧れる「キッド様」ではない、男子高校生・黒羽快斗の素顔を楽しむことができる。

 ちなみに、もし『名探偵コナン』一筋のファンであっても、『まじっく快斗』4巻は必読だろう。なんと、怪盗キッドが主役の物語に、あの工藤新一が”客演”するエピソードが収録されているからだ。『名探偵コナン』の”キッド回”を反転させたような構図で、工藤新一が「強敵」として描かれる。キッドは予告現場にコナンが現れるたびに、こんな「強敵」を相手にしているのだと思うと、少し見え方が変わるかもしれない。

■映画ごとに、異なる魅力を放つ怪盗キッド

 怪盗キッドの客演は、劇場版シリーズでも定番となっている。歴代劇場版23作品の中から、6作品の”キッド映画”を紹介しよう。これらの作品は、DVDや配信はもちろん、フィルムコミックやノベライズでも楽しむことができる。

 まず鉄板といえば、第3作『世紀末の魔術師』。怪盗キッドが銀幕デビューを果たした作品で、今なおファンに語り継がれる傑作でもある。

 第8作『銀翼の奇術師』は、コナンVSキッドの対決と、互いの能力を信じた連係プレーが楽しめて、二重に美味しい一作だ。あっと驚きたい人は、第10作『探偵たちの鎮魂歌』がオススメ。初見の方はぜひネタバレを避けて、物語の隅々までお見逃しなく。

 キッドとコナンの関係性を楽しむなら、第14作『天空の難破船』。絶体絶命となったコナンを助けたり、渋々ながら協力関係を結んだり……。決して敵対するだけではない2人が描かれる。

 ”ヒール”な怪盗キッドを味わえるのが、第19作『業火の向日葵』。世界を手玉に取り、コナン達を困惑させる姿は、神出鬼没の大怪盗というキッド像への原点回帰と言えるかもしれない。

 そして、昨年公開された第23作『紺青の拳』。本作では、キッドがお宝のもとに潜入するドキドキワクワク過程を、”キッド本人の視点”で楽しむことができる。キッド視点のパートでは、どこか『まじっく快斗』で描かれる素顔の”黒羽快斗”らしさが滲む。ちなみに、お互いを警戒しながらも、盗みと殺人事件のために手を結ぶコナンとキッドは、『天空の難破船』にも近い関係値に感じられる。

 ”キッド回”を楽しみ尽くす秘訣は、フィナーレを迎えた後、もう一度最初から見直すことだ。お宝を巡る背景、詩的な予告状、アッと驚くトリック。それらの謎が“種明かし”されると、その物語には怪盗キッドの姿が浮かび上がり、新たな輝きを放つ宝石となる。

 コナンとキッドの対決エピソードは、コナンが謎を暴く推理物であると同時に、怪盗キッドが魅せるマジックショーなのかもしれない。さあ、キッドの華麗なるショーをとくとお楽しみあれ!

(文=宮崎栞)

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