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『IT/イット』監督&プロデューサーが、原作者スティーヴン・キングとの制作秘話を語る

ぴあ

『IT/イットTHE END“それ”が見えたら、終わり。』の監督アンディ・ムスキエティと、彼の姉で製作のバルバラ・ムスキエティ

子供たちを次々と血祭りに上げる邪悪なピエロ、ペニーワイズ。小学校のはみ出し者グループ“ルーザーズ”はその夏、“それ(IT)”と戦い、からくも勝利した。

全世界で7億ドルを上回る大ヒットを記録し、ホラー映画の歴史を塗り替えた『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』。スティーヴン・キングの大長編小説にはまだ続きがあり、その第2章、『IT/イットTHE END“それ”が見えたら、終わり。』が公開される。監督は前作の功労者アンディ・ムスキエティ。製作は彼の姉バルバラ・ムスキエティ。原作者スティーヴン・キングも絶賛する本作のお楽しみポイントを、ふたりに語ってもらった。

第1章が“子供編”とするなら、第2章の本作は“大人編”。あれから27年、大人になり都会で暮らしていたルーザーズたちが、故郷に残っていたメンバーのひとりから連絡をもらい帰ってくる。“それ”がまた現れたからだ。

「第1章では、子供の純粋さを描きたかったから子供時代だけに絞ったんだが、第2章では大人編と子供編を交互に描くと最初から決めていた。彼らは子供時代のトラウマに出会わなきゃいけないし、それが原作どおりでもあるからね」(アンディ)

「原作どおり」なのはその構成だけではない。原作は出版当初、“モンスター小説”と呼ばれたほどモンスターが登場するのだが、本作はそれもしっかり踏襲している。ただし、そのモンスターは原作がミイラ男や狼男などのユニバーサルホラーのキャラクターも登場していたのに対し、映画はほとんどがオリジナルなのだ。

「原作の子供時代は50年代。当時のモンスターと言えばユニバーサルホラーが定番だったんだけど、映画の子供たちが生きているのは80年代。その時代だったらミイラ男はないだろうと考えオリジナルにしたんだ。でも、どんなものでもいいというわけじゃない。ルーザーズのひとりひとりが抱えるトラウマを象徴するようなモンスターにしたんだ」(アンディ)

その中で原作者キングがこだわったのがアメリカの民話に登場する巨人、ポール・バニヤンの等身大の像。

「私たちの最初の脚本では、大人になったリッチーがその像と対峙するだけだったんだけど、スティーヴン(・キング)の“リスト”には、“子供時代のリッチーにも会わせてもらいたい”と書かれていたの」(バルバラ)

「で、そのとおりにしたんだ。結果、とても良かったと思っている。ちなみに、そのリストは、“原作者によるチェックポイント”ではなくて、“ファンのお願いリスト”のようだったんだけどね(笑)」(アンディ)

このエピソードからも伝わるように、キングは本シリーズをとても気に入っている。各メディアやSNSなどで讃辞を発信し続けているくらいだ。

「とてもうれしいし名誉なことだよ。僕たちも今回、かなり早い段階でスティーヴンに脚本を見せたんだが、非常に気に入ってくれて、大好きだと言ってくれたんだ」(アンディ)

そのキング、本作ではカメオ出演している。

「アンディがスティーヴンに提案したのよ。彼はとても喜んでくれて、孫を連れ、ロケ地だったトロントの郊外にある小さな町にやってきた。撮影はほんの数時間で終わったのだけれど、彼は3日間も私たちと一緒にいて、映画作りを楽しんでいたの」(バルバラ)

本作にはキングの他にもグザヴィエ・ドランや監督のピーター・ボグダノヴィッチ(『ペーパー・ムーン』)らがカメオ出演し、さらにはさまざまな映画のオマージュも! そのひとつはジョン・カーペンターの『遊星からの物体X』。有名なクリーチャー、“スパイダー・ヘッド”と同じようなモンスターが登場するのだ。

「僕はカーペンターが大好きで、とりわけ『遊星からの物体X』は最高だと思っている。そのモンスター、最初はオマージュのつもりじゃなかったんだ。でも、ソイツと対峙するビル(・ヘイダー)が「おいおい、こりゃあ『遊星からの物体X』じゃないか!」と言い出し、「だったらセリフも同じにしようぜ」となって同じ(You've got to be fucking kidding)にしちゃったんだよ(笑)」(アンディ)

もうひとつ、大きなオマージュはスタンリー・キューブリックの『シャイニング』。とはいえ、キングはキューブリック版を気に入ってないことで知られているのだが。

「そう、以前はね。でもスティーヴンも、さすがに時間が経って、映画と小説は違うことをしっかり理解するようになったし『シャイニング』に対しても大らかになった。最近は、映画化のOKを出したら潔く手放しているようだよ。僕はあのシーンを、世界中の『シャイニング』ファンのために撮ったんだ。みんな、喜んでくれるとうれしいよ」(アンディ)

が、みんながもっとも喜ぶのはそのラストの方かもしれない。キングの原作とは異なる、映画だけのオリジナルなエンディングが待っている。

「もちろん、原作のエンディングを使うことも考えた。でも、あれでは、それまで命をかけて闘ってきたルーザーズが悲しすぎると思って今回のバージョンにしたんだ。スティーヴンはこの変更を快く受け入れてくれた。それどころか、とても喜んでくれたくらいだった」(アンディ)

2時間49分のその最後には、美しいエンディングが待っているということ。つまり、ホラー映画の歴史を塗り替えたシリーズの“THE END"にふさわしい出来栄えになっているということだ。

取材・文:渡辺麻紀

『IT/イットTHE END“それ”が見えたら、終わり。』
11月1日(金)より全国公開

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