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小田和正が母校で歌う一夜限りの奇跡 『風のようにうたが流れていた』公開収録レポ

リアルサウンド

19/3/8(金) 5:00

 シンガーソングライターの小田和正がナビゲーターを務める音楽特番『風のようにうたが流れていた』(TBS系/3月29日深夜24時20分から放送)の公開収録が、3月6日に聖光学院中学高等学校・ラムネホールで行われた。クリスマスシーズンの風物詩であった『クリスマスの約束』(TBS系/2001年~)のチームが制作を手がけ、個性溢れるアーティストが参加。観覧者はステージで繰り広げられるアーティストのコラボに心酔しながら、上質な音楽の夜を楽しんだ。

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■小田和正が母校で「YES-YES-YES」(オフコース)を歌う一夜限りの奇跡
 「ここで夢を観た、その場所です」……会場は、聖光学院中学高等学校・ラムネホール。小田が中高6年間を過ごした母校で、ラムネホールは、小田がソロになる以前に組んでいたバンド、オフコースのギタリストでもあった級友の地主道夫が設計し、建てられたもの。そんな小田にとって由緒ある会場で繰り広げられる一夜限りのステージを楽しみに、世代もさまざまな多くの観覧者が集まった。出演者をぐるりと取り囲むように座席が組まれているのは、『クリスマスの約束』と同様だ。至近距離の観客に見守れるようにして歌う出演者もまた、この番組にしかない独特の緊張感を楽しんでいた。

 小田と共にステージを作ったゲストは、杏、熊木杏里、佐藤竹善、JUJU、スキマスイッチ、根本 要(STARDUST REVUE)、水野良樹(いきものがかり)、矢井田瞳、矢野顕子、和田 唱(TRICERATOPS)。ジャンルもさまざまなメンバーが、懐かしの洋楽や歌謡曲、J-POP、映画音楽などを、組み合わせも新鮮なコラボレーションで聴かせる。それぞれのステージとは違った、実にリラックスして音楽を楽しむ表情も見どころだ。転換の間もステージにとどまり、トークで観客を楽しませていた様子も印象的だった。

 「まずは『風のようにうたが流れていた』をみんなで歌って、番組をスタートしようと思います」との、小田の言葉で収録が始まる。出演者が弧を描くように並んで歌い、美しいハーモニーを聴かせる。小田が手で合図を送り、曲をしっとりと締めくくると、大きな拍手が沸き起こった。この楽曲は、小田が初めて取り組んだレギュラー音楽番組『風のようにうたが流れていた』(TBS系/2004年10月~12月)のために書き下ろした楽曲で、毎週テーマソングとして歌われていた。同番組は小田の音楽ルーツをゲストと共に辿る内容でもあったため、それが小田の母校で復活したというところにも大きな意味がある。

 ステージにグランドピアノが置かれると、「もう一人のゲスト、きっとみなさん喜んでくれるでしょう!」と、矢野顕子を紹介した。軽いハグで、久しぶりの対面を喜び合った2人。「ニューヨークに住んで何年になるの?」「住みやすい?」など小田の質問に、矢野顕子は「NYはもう30年、私には住みやすいかな」と、フランクな様子で答える。彼女を迎えて歌った「David」は、矢野のピアノと小田のアコースティックギターというシンプルな演奏。曲の持つ牧歌的な雰囲気が、会場をやさしく包み込み、観客の間には自然と笑顔が広がっていった。何十回もリハーサルを重ねてきたような2人の絶妙なハーモニーからは、同時代を生きてきた戦友といった確かな信頼関係が感じられる。

 「番組を作る上でさまざまな音楽を聴き、そのなかで珍しい人を見つけました。杏ちゃんです。よく来ていただけました」と、紹介された女優の杏。小学校のとき聖歌隊で賛美歌を歌っていた経験もあるそうで、2010年から女優業と並行して音楽活動も行っている。「こんなに豪華なメンバーのみなさんと一緒に歌えて光栄です。でも編曲がシンプルで音数も少ないので、すごく緊張します」と話した杏は、小田と和田唱のギターをバックに、松田聖子の「SWEET MEMORIES」を歌った。同曲は、1983年に松田聖子が歌ったジャズ調のバラードで、杏の低音ボーカルによって艶っぽさが増し、よりブルージーになった雰囲気に観客が酔いしれる。落ち着いた上質の音楽空間は、この番組の魅力の一つだ。

 もちろん小田の人気ナンバーも披露された。この日歌ったのは、「さよなら」と並ぶオフコースの名曲のひとつ「YES-YES-YES」で、ライブでは観客の大合唱が起こることでも有名だ。冒頭の「風のようにうたが流れていた」のように出演者が並んで、全員で順番に歌い繋いでいくと、ステージの両脇には歌詞が映し出され、観客も立ち上がって一緒に口ずさんだ。小田の母校である聖光学院で、オフコースの名曲「YES-YES-YES」が歌われるという奇跡的な瞬間に、会場からは大歓声と拍手がステージ上の小田に贈られた。

 昨年末は『クリスマスの約束』の放送がなく、寂しく思っていた音楽ファンも少なくなかった。そんな声を聞き、「もう少し暖かくなったころに、また何かやりたい」とスタッフと相談して、この日を迎えたという。音楽番組を作るには、制作費以上にリハーサルなどで時間がかかるものだが、またこういった機会が設けられたのは、小田の音楽に対する愛と、上質な音楽を聴きたいというファンの願いがあったからこそ。永久保存版の奇跡の一夜は、ファンならずとも見逃せないものになっている。(取材・文=榑林史章)

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