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CYNHN、2部構成の配信ライブに感じた成長ぶり 映像演出とアコースティック、それぞれ用いて伝えた“歌”を聴いて

リアルサウンド

20/7/27(月) 19:00

 2020年7月25日にCYNHNが開催した無観客配信ライブ『CYNHN Streaming LIVE「Ordinary Blue」』は、彼女たちの成長ぶりを驚くほど伝えてくるものだった。

(関連:CYNHN、新体制初シングル『水生』での決意 結成3年を経た心境の変化も明かす

 2部構成で、第1部は映像演出を使ったライブ、第2部は初のアコースティックバンドを迎えてのライブ。「Ordinary Blue -AM2:00」と題された第1部は、14時に開演。メンバーが次々とフュージョンスクリーン上に映しだされていき、ライブは幕を開けた。スクリーンを使った演出は過去のワンマンライブでも行われてきたが、今回の映像演出はさらに凝り、配信ライブに独自の価値を与えていた。

 ライブは、2020年9月9日にリリースされるシングル曲「ごく平凡な青は、」でスタート。MVはすでに公開されているが、ライブでパフォーマンスが披露されるのは初めてだ。スクリーンにはグラフィックや歌詞が投影されていき、リアルタイムで演出が施されていく。その一方、メンバーの力強い歌声は、ライブができない期間も歌い続けていたであろうことを感じさせた。そんな「ごく平凡な青は、」は、新しいアンセムの登場を予感させる。

 また、空間芸術のような演出上、メンバーのアップよりも、ステージ全体を写す引きの映像が多く、過剰な動きをしないカメラワークも視聴体験として快適だった。他の配信ライブを見ていても、カメラのスイッチングを的確に行うことは非常にハードルが高い。結果的にそうしたストレスからかなり解放されることにもなった。

 内面を描きだすような楽曲が多いCYNHNにおいて、「ラルゴ」もまた複雑なニュアンスに満ちている楽曲だ。配信だからこそ、各メンバーのボーカルの表現にもじっくり対峙することができた。「解けない界面論」のMVでは、メンバーの綾瀬志希がアニメーションのイラストを手がけていたが、ライブの映像にそれが同期されていくのも新鮮だった。

 「雨色ホログラム」「絶交郷愁」と続き、ロックナンバーの「wire」へ。フロアにファンがいなくても、メンバーの熱量で乗りきっていく。そして、2019年の1stアルバム『タブラチュア』の最後を飾っていた難曲「Pray for Blue」が、平然とライブの中盤に置かれていたのには驚いた。この楽曲もまた、未明の「青」を過ごすときの内面の葛藤を描いていく。

 深夜の街の映像を挟んで、スクリーン上で扉が開くと、そこにCYNHNがいる。そんな演出から「2時のパレード」へ。2020年に5人体制となり、その再スタートを飾ったロックナンバー「水生」では、一瞬のユニゾンでも一切ブレないボーカルに感動した。さらに、CYNHNが“ヴォーカルユニット”と名乗るようになった大きな転換点となった2018年の「はりぼて」へと続き、第1部の本編が終了した。

 Twitterで公募された、ファンが撮影した「青」の写真が流されてからアンコールへ。再び歌われた「ごく平凡な青は、」では、メンバーも笑顔も見せるなど、よりリラックスした雰囲気に。同じ公演なのに別バージョンを聴いているかのような変化だった。

 第2部の「Ordinary Blue -PM:2:00」は18時に開始。バンドセットが置かれたステージにCYNHNが再登場した。「水生」から「空気とインク」と続いたが、かつて「空気とインク」でメインボーカルを務めたメンバーはもういない。それでも、ミュージカルを見ているかのような感覚になるほど豊かな表情で歌いあげるメンバーたちの姿に心打たれた。

 「トゥインクルスター」からは、アコースティックギター、ドラム、キーボードを伴奏にしたアコースティック編成へ。シンプルなサウンドになり、個々の歌の表情がより前面に出てくる。「アンフィグラフィティ」に続いて歌われた「So Young」では、メインボーカルを務める青柳透が実にいきいきとした表情で歌った。

 CYNHNは、もともとオーディションのグランプリが崎乃奏音、準グランプリが綾瀬志希であり、審査員特別賞を受けたメンバーとともに結成されたという経緯がある。そのため、崎乃奏音と綾瀬志希がボーカルを牽引してきたが、歌のニュアンスも深くなった青柳透、表現力がより豊かになった月雲ねる、明らかに声量の増した百瀬怜と、全員による底上げも目覚ましい。そんな成長ぶりも配信ライブで再確認した。

 緊急事態宣言中にリモート撮影したMVが公開された「Redice」では、やっと5人揃って生で歌われたことに感慨を抱いた。そして、綾瀬志希は背後のミュージシャンたちのほうを向き、演奏に呼応しながら歌う。

 「リンクtoアクセス」からは再びオケに。「タキサイキア」ではメンバーがカメラに近づいて歌い、画面越しに見ているファンへと歌いかけていた。「ラルゴ」に続いて、この日3回目となる「ごく平凡な青は、」へ。ユニゾンは鮮やかにして美しい。ロシア語で「青」を意味するグループ名のCYNHNだが、未完を意味する「青」から着実に脱していることを感じさせた。

 アンコールでは、この日が3rdワンマンライブだったことや、新体制で初めてのワンマンライブだったことも語られた。配信後に明かされたが、この日の会場は、1,100人キャパの横浜ベイホール。本来なら、ここにファンを集めるはずだったのだ。

 CYNHNは、2021年9月23日までに3,000人キャパの会場を埋めるという目標を2019年9月23日の2ndワンマンライブ以来掲げているが、百瀬怜はその目標を諦めていないと明言した。崎乃奏音は涙が溢れるなか、「私たちをたくさん引っ張ってきてくれた曲で、3,000キャパにみんなとこの曲を連れていきたい」と語り、「はりぼて」が最後に歌われた。

 コロナ禍は、エンターテインメントのあり方を根底から揺さぶっている。しかし、現在のCYNHNは、初期を知る者にとっては感慨深いほどの歌声を聴かせてくれた。それは希望に他ならない。無観客でも、配信でも、現在のCYNHNは歌で聴く者の胸を揺さぶることができる。そんなことを確信させてくれたのが『CYNHN Streaming LIVE「Ordinary Blue」』だった。(宗像明将)

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