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C&K、歌とエンターテインメントでみせた一夜限りのステージ 10周年記念した横浜アリーナワンマン

リアルサウンド

18/11/27(火) 19:00

 2人組シンガーソングライターユニット・C&Kの10周年を記念した、初の横浜アリーナでのワンマンライブ『超無謀な挑戦状〜10周年だョ!全員集合~in 横浜アリーナ』……の本題に入る前に、ひとつ告白しておきたい。ユニット名を聞く機会は多かったものの、筆者がまともに彼らのステージを見たのは、今年の『a-nation 2018』が初めて。うだるような暑さの中ステージに登場した彼らは、目が覚めるほどにソウルフルな歌声とエンタメスピリット全開のステージングで、真夏のスタジアムの空気をわずか数曲で変えたのだった。

 2018年11月20日の横浜アリーナには、デビュー当時から彼らを応援しているファンもいれば、筆者のような“フェス新規”、あるいは初のドラマ主題歌に起用された“『ドラマ』新規”のようなビギナーも少なからずいたに違いない。平日の火曜に全国各地から駆けつけた四池さん(C&Kファンの愛称)たちは、世代も10~60代くらいと見事にバラバラで、男性客やファミリーも多かった。先ごろ行われた全国ツアー『日本全国CK地元化計画~地元です。地元じゃなくても、地元です。2018。期待の新人10周年。~』最終日にCLIEVYが両足の踵骨を骨折というザンネンなニュースの後にもチケットは売れ続け、見事にソールドアウト。C&Kが転んでもただでは起きない2人であり、この日が伝説のライブになることを予感させるような気運を感じた。

 果たしてこの日は、アカペラで始まった「歩きだせ」から“絶対安静の患者が病院から逃げ出した!?”という小芝居へ繋がるという、コントばりの流れでスタート。この部分は2014年のワンマン『CK無謀な挑戦状 in マリンメッセ福岡〜みんなの力でパンパンに愛のシャワーを浴びせてネ』のオマージュ的なものだったそうだが、ライブの随所に過去ツアーのハイライト演出がコラージュされており、アニバーサリーにふさわしい一夜限りのステージが展開されていった。心配されていたCLIEVYの容体だが、「Milky Way」などでキッチュなC&Kロゴ入りカート、「MATSURI」(未音源化)での神輿など、シチュエーションに合わせた乗り物で登場してはステージや花道を爆走。再度のケガを心配してしまうほどパワフルに動き回っていた。

 序盤はCLIEVYとKEEN、そして四池さんにはおなじみDJ TAKEやZEROSEN(ダンサーズ)によるメドレーで飛ばしまくる。おふざけな映像やZEROSEN(ダンサーズ)も加わってのコントのようなやり取りは定番だが、そのゆるい空気を豊潤な音楽体験に変えてしまう圧倒的な歌力が、このユニットの最大の魅力といえる。時に女性のようであり、時に子供のようでもあるCLIEVYの唯一無二なハイトーンボイス、そして安定感のあるミドルボイスに加え絶妙なハモりの腕が光るKEEN。リズム&ブルースの女王こと和田アキ子が2人の歌を絶賛してそのトリビュート盤に参加することになったというエピソードを思い出し「さすが歌にうるさいアッコがおまかせしただけあるな……」と妙に感心してしまった。

 KEENが「もう1つのC&Kの顔を見てくれ!」と叫んでスタートした「BYE BYE BOO」からは、ホーンセクションを含むフルバンドと大勢のダンサーズを従え、極上のバンドサウンド&パフォーマンスで魅了していく。ジェイ・スティック(ドラム)、ザンドレ・Y(ギター)など、国内外の数々のアーティストとの仕事で知られる“精鋭”ミュージシャンたちで固めたこのスペシャルバンドとともに、「DANCE☆MAN (WOKKY WOKKY×BOGGIE WOGGIE)」ではアッパーなファンク、「EVERYBODY」ではラテンテイスト、「精鋭」(未音源化)などではゴスペルと、カラフルなサウンドを披露。C&Kのサウンドについてはさまざまなジャンルのミクスチャーである“JAM”という表現が用いられるが、この日も披露していたEDMサウンドとソカのリズムを組み合わせた「ジャパンパン〜日本全国地元化計画〜」や、ケルト風サウンドとやはりソカのリズムを掛け合わせた「踊LOCCA〜around the world 新たなる冒険〜」といった代表曲の数々が、聴きやすいJ-POPとしての顔も持ちながら挑戦的な構成であることにも改めて驚かされた。随所でダンサーズと振りをしっかりシンクロさせつつ踊るKEENのダンスにも、会場から大きな歓声が。

 記念日であるこの日には、彼らをメジャーへと導いた盟友・九州男が登場し、爽快なレゲエテイスト全開の「Sun Son Sound feat. 九州男」でコラボ。現在は活動休止中で、この日が実に4年ぶりのステージとなる九州男を前に「くっすー(九州男)に出会えなかったら僕らもここに立つことはなかったと思う」と、CLIEVYが振り返った。ゲストはまだまだ続き、「ドラマ」では『サバイバル・ウェディング』に出演していた俳優&ダンサーの山根和馬(元DA PUMP)が参加し、華麗なブレイキンをキメるなど大活躍。そして「母からの手紙」コーナーでは2人の実母に加え、初期のC&Kを支えたマネージャー“MIE姉”がC&Kの母として2人の思い出エピソードを読み上げた。さらに2人が公私ともに親交の深いWBA世界バンタム級王者の井上尚弥、WBC世界バンタム級5位の井上拓真兄弟も駆けつけ、お祭りムードに華を添えた。

 にぎやかな演出は枚挙にいとまがなかったが、終盤の「にわとりのうた」付近からの畳みかけ方は圧巻だった。同曲や続く「MENDOKUSE」で、CLIEVYが宙吊りトロッコで“アナログでフライング”(本人談)する様はなんともパンキッシュに映った。両親をモデルにしたという「ジェニファー何度もあなたに恋をする」や「1日の向こう側」といったバラードをじっくりと聴かせたかと思えば、アッパーなダンスチューン「終わりなき輪舞曲」からディスコテイストのメジャーデビュー曲「梅雨明け宣言」にかけては、怒涛の如く会場全体を盛り上げていく。

 そんなC&Kのステージを支えているのが、熱狂的といえるほどノリのいい四池さんたちの存在だ。ほとんどの席が固定されているにも関わらず、芝生席からアリーナ、スタンドまで大小無数のサークルが発生した「踊LOCCA~」、歌詞に合わせた「S・P・A!」コール&ザ・ドリフターズの「いい湯だな」をモチーフにした振付で爆発的に盛り上がるスカ・ナンバー「入浴」、アンコールでのゴスペルナンバー「愛を浴びて、僕がいる」での力強い1万人の大合唱は感動的ですらあった。この日何度も感謝の言葉を口にしつつ、C&Kバラードの代表格といえる「Y」では〈君は僕の希望さ〉と歌いながら、客席をじっと見つめていたCLIEVYの表情が忘れられない。

 アンコールのMCでは「僕らは神奈川の大学で出会って、それから10年もC&Kをやるなんて、当時は思いもしなかった。結成の地・横浜でこうやってたくさんの人に見守られて、この大切な1日をこうやって空けてもらったということに感謝の気持ちでいっぱい」とCLIEVYが挨拶。KEENは「涙は(常々目標として語ってきた)紅白まで取っておきたい」と語り、拍手喝采を浴びていた。エンディング曲「帰れ」でゲストやバンドメンバーを帰していき、最後にCLIEVY がKEENの肩を借りながらゆっくりとはけていく後ろ姿に、この先も変わらないであろう2人の関係性を思い、とても温かな気持ちになった。

 現在はCLIEVYのケガにより延期となっているアルバム『TEN』のリリースが待たれる彼ら。年末には恒例のカウントダウンライブも決定しているが、1人でも多くの人の目と耳にC&K流の“めんどくせえ”エンターテインメントがふれることを願ってやまない。

(文=古知屋ジュン/写真=鳥居洋介、三浦知也)

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