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むぎ(猫)が語る、メジャーデビューと音楽活動への思い 「やさしい気持ちにさせたい」

リアルサウンド

19/3/18(月) 19:00

 猫が木琴を叩きながら歌い踊るシュールな様子と、真っ直ぐなメッセージが込められた胸に響くシンプルな歌が話題となって、『FUJI ROCK FESTIVAL ‘17』や、昨年の『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018』など夏フェスでも人気のむぎ(猫)が、3月20日にアルバム『君に会いに』でメジャーデビュー。一度は永眠したものの2014年に天国から舞い戻り、人を楽しませることに新たな“ニャン生”を賭けるむぎ(猫)。なぜ木琴なのか? どんな思いで歌っているのか? 「いつも命について考えている」という言葉からは、アーティストとしての真剣な姿が見えた。(榑林史章)

“出オチ”にならないように! 

ーーむぎさんが、音楽活動を始めたきっかけは何でしたか?

むぎ(猫):天国から帰ってきたときは、音楽活動をするつもりはまったくなかったんです。カイヌシも、ただ街中をお散歩させてくれるだけだったんですけど、あるときからSNSで「猫のイベントをやるので出てもらえませんか」というお声がけが増えていって。最初に声をかけてくださったのが、喫茶店で開催する猫のイベントでした。むぎもただ立っているわけにもいかないので、じゃあそこでライブをやろうと思って、その日に向けて曲を作って練習したのが最初です。

ーーライブでは、木琴を演奏していますね。

むぎ(猫):そもそも木琴は、カイヌシのゆうさくちゃんの得意楽器で、むぎはそれを教わって、レコーディングやライブでも使っているんです。カイヌシは、もともとピアノを習っていて、木琴を習い始めたのは10歳のとき。東京の音大に入るために沖縄から上京してきて、ホームシックになったときにむぎを飼い始めたそうです。

ーー木琴を選んだ理由は、何だったんでしょうか?

むぎ(猫):すごく不純な理由だったみたいですよ(笑)。カイヌシは6歳からピアノを習っていたのですが、周りの男の子はサッカーや野球をやっていて、ピアノをやっていることに女々しさを感じたらしくて。自分のできることで、何かもう少し格好いいことはないかと探しているときに、「木琴のレッスンをしませんか」というチラシを見つけて。「こっちのほうが格好いいんじゃないか?」、つまり「モテるんじゃないか?」と思って、10歳から木琴を習い始めたんです。

ーー実際にモテたんでしょうか?

むぎ(猫):いえ、まったくみたいです(笑)。やっぱりスポーツマンには勝てなかったみたいです。

ーーメジャーデビューすることについては、どういう心境ですか?

むぎ(猫):沖縄で音楽をやっていたときは、まさかメジャーの道にくることまでは想像していませんでした。確かにライブのオファーは途切れることはなかったですし、沖縄のライブハウス界隈では、むぎの存在はほとんど知れ渡っていましたけど……東京の事務所の方と出逢ったり、頻繁に東京でライブをするようになるとは、考えてもみなかったです。でもいろんなところでライブをするのは楽しいし、事務所に誘ってもらったことも、いろんなところでライブをするのと同じくらい嬉しかったので、お誘いを受けようと思いました。だから、面白そうだと思うことを続けていたら、自然とメジャーデビューの道に繋がっていった感じです。

ーー道が繋がっていったのは、むぎさんに魅力があればこそだと思いますが、むぎさん自身は何が魅力になっていると思いますか?

むぎ(猫):いちばん力を注いでいるのは、ライブです。絵を描いたり動画を作ったり、いろいろなことをやっていますけど、みんなの前で演奏してみんなが笑顔になってくれる、その反応を直接見られるのがライブです。そこでみんなを飽きさせないようにして、楽しませることに力を注いでいます。

ーー見た目でとてもインパクトがあるので、出てくるだけでみんながパッと笑顔になりますよね。そのぶん曲に対するハードルが、上がるようなことはありませんか?

むぎ(猫):それは、もちろんあります。“出オチ”にならないようにということは常に考えていて。イントロを短くしたりして、1曲が長くならないように意識していますし、すぐ次の展開がくるようにとか、間奏で間髪入れずマリンバソロに行くとかは考えて作っていますね。そのぶん休む暇がなくて、それがライブ中の息切れにも繋がっていますけど(笑)。「無視できない虫」という曲のイントロは、一般的には決して長くはないんですけど、むぎの曲の中では長いほうで、曲の冒頭で〈この曲、ちょっとイントロが長いですよね〉と自分で突っ込んでいます。

ーースマホ世代には、イントロにインパクトがあったり、サビまでの展開が短いほうが入りやすいという話を聞きます。時代の流れに則した曲作りかもしれないですね。

むぎ(猫):むぎも、そういう話は聞きますよ。でも決してスマホ世代に向けた意識はなくて、単にライブの現場で聴いてくれる方をがっかりさせたくないという気持ちの結果です。「次に何が起きるんだろう?」と、ワクワクさせたいんです。曲に入る前に小芝居をやることもあるんですけど、それも毎回同じではなく違ったところから曲に入ったりとか、常に試行錯誤していますね。

ーーライブを重ねるごとに反省点を改善したり、ブラッシュアップして、今の楽曲やライブのスタイルがあるんですね。

むぎ(猫):最初のころのライブは、自分で音出しもやっていたんですよ。でも、「ちょっと待ってね」と、モタモタして“変な間”が空いてしまっていて。その“間”によって空気感が崩れてしまうのが嫌で、音出しをスタッフさんにお願いしてからはスムースになりました。ただ、「モタモタしている“間”が良かったのに」とか「ぎこちなさが好きだった」と言う方もいて、そこは難しいところですね。

ーーまあでも、“むぎ(猫)”という世界感にいかに引き込むか、というところを考えているわけですね。

むぎ(猫):自分で言うのも何ですが、むぎは口が動かないし、ライブ中は常に何かをしていないと、お客さんの観る場所がなくなるんです。見た目はこんなにインパクトがあるのに、それが最初だけで終わっちゃうのが怖いから、飽きさせないようにすることを常に考えます。

むぎ(猫)の新しい音楽を表現 

ーーそんなむぎさんのメジャー1stアルバム『君に会いに』ですが、作るにあたってはテーマやストーリーなど何か考えましたか?

むぎ(猫):事前の構想は特になかったんですけど、できあがって通して聴いたときに思ったのは、今いる場所からどこかを目指して行く曲が多いなと思いました。たとえば表題曲の「君に会いに」がそうだし、「ギフテッド」という曲も〈このまま遠く知らない場所へ〉という歌い出しから始まります。「四輪駆動の飛び出し坊や」もそうだし、「流れ星」は、流れ星を追いかけていこうという曲です。自分の深層心理が表れているじゃないけど、メジャーデビューする気持ちもあって、新しい気持ちでやっていこうという自分の意気込みが、自然に出ているのかもしれないですね。自分を奮い立たせるじゃないけど、自分に向けて歌っている部分もあると思いました。

ーー表題曲「君に会いに」は、遠くの君に会いに行くという前向きさに溢れた、軽快なビートの楽曲。木琴のソロもあって、むぎさんの魅力が凝縮されている。MVではサビで“恋ダンス”のような、キャッチーなダンスも披露されていますね。

むぎ(猫):初めてプロの方に振り付けを付けていただいたことで、自分では思いつかなかったものがむぎの世界に入って、むぎとしても新鮮な気持ちでした。小さいお子さんが、“むぎダンス”をマネして踊ってくれたらうれしいですね。MVにはメロンソーダが出てくるんですけど、撮影現場に行ったら発注ミスでただの透明な炭酸水が用意されていたということがあって焦りました(笑)。そういうハプニングも含めて、MV撮影は楽しかったです。

ーー「CとDと」という曲は、加山雄三ばりのセリフも入った、ちょっと懐かしい感じがするポップソングです。

むぎ(猫):「AとBと」という曲もあって、それは8ビートのリズムに乗せて、「AもBも両方選んじゃいなよ!」と歌った曲でした。「CとDと」はその続編で、ラブソングになっています。タイトルの読みは「シーとデート」、つまり彼女とデートという意味の語呂合わせです。タイトルにちなんで、歌詞には〈Cute & Danger〉や〈Crazy Desire〉など、頭文字がCとDの言葉がたくさん出てきます。実はイントロのコードも、CとDで始まるんですよ。たまたまコードが曲と合っていたので、遊びで入れてみました。ギターでコピーしてくれたら、気づくんじゃないかな。家で何気なく弾いて「あ、これCとDじゃん!」って。

ーーじゃあ、次回は「EとFと」ですね。

むぎ(猫):むぎもそう思って考えてはいるんですけど、「EとFと」はいくらひねり出しても、まったく語呂合わせが浮かばなくて。何か思いついた方は、ぜひご一報ください(笑)。

ーーアルバム『君に会いに』の収録曲で、ぜひ聴いてほしい曲はどれですか?

むぎ(猫):もちろん全部聴いてほしいんですけど……インディーズで出した1枚目のアルバム『天国かもしれない』は、むぎが天国から帰ったストーリーを交えた自己紹介的なものになっていて。それがあったからこそこのアルバムは、音楽的にも歌詞的にも自由に作ることができたと思っています。それがよく表れていると思うのが「夢から醒めた夢」や「流れ星」で、むぎの新しい音楽が表現されているのでぜひ聴いてほしいです。

ーー「流れ星」は、クラシックっぽいイントロから始まるアッパーの楽曲で、歌詞も前向きで力強いですね。

むぎ(猫):「むぎはオスだぞ!」という気持ちで、勢いを付けて作りました。すでにライブでも歌っていて、お客さんはタオルを回して盛り上がってくれています。もともとタオルを回してほしいと思って作った曲で、歌詞に出てくる〈闇に螺旋の輪を描け〉や〈空を切る緑の光〉は、むぎのグッズのタオルが緑色なので、そのタオルを回してくれている様子をイメージしました。昨年いろいろなフェスに出させていただいたときに、「フェスでみんなが参加して楽しめる曲があったらいいな」と思ったのが、この曲を作ったきっかけでした。

ーーパンクロックの「四輪駆動の飛び出し坊や」という曲もありますが、もともとどんな音楽から影響を受けているんでしょうか?

むぎ(猫):カイヌシが聴いている音楽をむぎも聴くのですが、カイヌシは、最初にお話したように6歳からピアノを習っていて、クラシックをやりつつもJ-POPやロックも普通に聴いていたみたいです。最初に買った“レコード”はチェッカーズで、小学生のときにはTHE BLUE HEARTSのファンクラブに入っていたそうです。

ーーカイヌシさんの世代が、ちょっとわかりました(笑)。これらの楽曲の曲作りは、どうやっているんでしょうか?

むぎ(猫):ひと節ごとにメロディを鼻歌で歌ってレコーダーに録りためておいて、あとでそれをまとめる形です。レコーディングはむぎとカイヌシの共同作業で、宅録でやっています。おうちにドラムセットとギターもあって、打ち込みのドラムの曲もありますけど、「るすばん天国」は、むぎがドラムを叩きました。ただベースはカイヌシもむぎも弾けないので、シンセベースを使っています。

ーー録音機材も揃っているんですね。

むぎ(猫):大したものではないですが、マイクや楽器をデジタルレコーダーに繋いで録って、それをMacに移してGarageBandで編集していますね。今回のアルバムは、さすがにメジャーデビューですから、ミックスとマスタリングをお友だちのエンジニアさんにお願いをしました。

むぎ(猫)を楽しくイジってほしい 

ーー『君に会いに』は、満足のいくできあがりになりましたか?

むぎ(猫):ほどよく手作り感が残っていて、それは良かったと思っています。今までも、「手作り感がいい」と言ってくれる方が多かったですし、それが魅力の1つになっていると思っているので。

ーー基本的にメロディがシンプルで、言葉もわかりやすいものを選んでいると思いました。スッと耳に届きます。

むぎ(猫):ありがとうございます。歌詞は、ライブで初めてその曲を聴いた人でも、頭から順にわかるようにと考えて書いています。その場で理解できるようにと思って。もちろん後で歌詞カードを読み返して歌詞がわかる楽しさもあっていいと思いますけど、その場で聴いてわかったときの気持ち良さがあると思うので、そういうものを目指したいと思っています。

ーー音楽活動をする上で、大切にしていることは何ですか?

むぎ(猫):いろんな人を、やさしい気持ちにさせたいと思っています。むぎは天国帰りの猫で、二度目の人生ならぬ“ニャン生”を生きているので、いつも命について考えるんです。他の動物の命に対してもそうですけど、まずは自分の第二の“ニャン生”を大事に生きたいと思っていて、だからこそ聴いてくれるみんなの人生も大事だと思えるんじゃないかと思うんです。みんなにも自分自身が大事だと思ってもらえるような曲を、これからも書いていきたいですね。

ーー悲しい事件のニュースがたくさんありますからね。

むぎ(猫):ニュースはニュースサイトやSNSで観ることが多いんですけど、このニュースを見たからこの曲を作ったというような、そういう直接的なものはないですけど、どんな事件でも最終的には命の尊さに繋がっていると思っていて。そういうニュースを見たときは、自分の命も人の命も同じく大事だと思う人が増えたらいいのになと思います。きっとそれが、自然と曲や歌詞に表れるんだろうと思います。

ーーSNSと言えば、エゴサが好きと聞きましたが。

むぎ(猫):座右の銘は「地獄の底までエゴサーチ」です!(笑)。 お客さんが撮ってあげてくれた動画をチェックしたり、いろいろ活用しています。一昨年初めて『FUJI ROCK FESTIVAL ‘17』に出演したときは、「今年のフジロックは、むぎ(猫)が収穫だった」というツイートがけっこうあって。うれしかったですけど、「農家みたいなことを言ってる」と思って笑いました。

ーーそのときは、ビョークのライブを観て感銘を受けたそうですね。

むぎ(猫):はい。ひとりで、あれだけのお客さんを同時に感動させることができる力は、本当にすごいと思いました。何万という人の耳を同時に自分に向けさせるパワーがすごかったです。それを考えると、こんな猫の言葉に耳を傾けてくれるお客さんは、本当にやさしいなっていつも思います。

ーーミュージシャンとしての野望は何かありますか?

むぎ(猫):今まで野望もなく、その都度これが面白いかもしれないと思うものを選んでここまできました。だから大きな野望はありませんけど、しいて言うなら、ライブ活動を長く続けることですね。できれば人気が続いて、いつもどこかで歌っていられればいいなと思います。まずは初めての全国ツアーが6月〜7月にありますので、アルバムのタイトルの通り、全国の君に早く会いに行きたいという気持ちでいっぱいです!

ーーMAN WITH A MISSIONとのコラボとか、どうですか?

むぎ(猫):できるなら、もちろんやりたいです! それに同じ事務所には、猫を噛むねずみのバンド(キュウソネコカミ)もいますし(笑)。動物繋がりでなくても、猫好きな人間のアーティストの方とも繋がれたらうれしいですね。とにかく、むぎを可愛がって遊んでくれる人が増えたら、もっと面白くなると思っています。「一緒に遊ぼうぜ!」と、むぎを楽しくイジってくれる方なら、どんな方とも共演してみたいです!

(取材・文=榑林史章/写真=林直幸)

■リリース情報
『君に会いに』
発売:3月20日(水)
初回盤(CD+DVD) 価格:¥3,500(税抜)
通常盤(CD) 価格:¥2,500(税抜)
<CD収録内容>
1. 木の下で -instrumental-
2. 君に会いに
3. 猫と学校
4. 夢から醒めた夢
5. 無視できない虫
6. ギフテッド
7. CとDと
8. るすばん天国
9. 四輪駆動の飛び出し坊や
10. 流れ星
11. ちいさなうた
12. 小さな庭 -instrumental-

<DVD収録内容>※初回限定盤のみ
『Wonder Nyander 2018 東京編 at 東京キネマ倶楽部 2018.11.01』
全6曲 (40分収録)
収録曲
1.四輪駆動の飛び出し坊や
2.ギフテッド
3.るすばん天国
4.夢から醒めた夢
5.天国かもしれない
6.どんなふうに

3月20日よりiTunesほか主要ダウンロードサイト及び、Apple Music , Spotifyほか定額制聴き放題サービスで配信予定

むぎ(猫)オフィシャルファンクラブ「ハチワレ天国」
むぎ(猫)をもっと楽しめる、ファンクラブ会員だけの特典情報あり
PC/スマートフォンから利用可能。

■「君に会いに」ミュージックビデオ
フルバージョン
ショートバージョン&特典ダイジェスト

■ツアー情報
『むぎ(猫)TOUR~君に会いに~』
6月20日(木)名古屋TOKUZO
6月23日(日)東京Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
7月6日(土)広島HIROSHIMA BACK BEAT
7月7日(日)福岡ROOMS
7月10日(水)仙台darwin
7月12日(金)札幌クリエイティブスタジオ
7月20日(土)京都磔磔
7月21日(日)大阪Music Club JANUS
7月28日(日)沖縄桜坂劇場ホールA

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