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ONE OK ROCK Toru&Taka、プロデューサーとしての手腕 miletやAimer提供曲から浮かんだ共通点

リアルサウンド

20/6/18(木) 12:00

 2019年3月にメジャーデビューしたシンガーソングライター、milet。桑田佳祐が『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(TOKYO FM)での年末恒例企画「桑田佳祐が選ぶ、2019年邦楽シングル・ベスト20」でピックアップしたり、蔦谷好位置やいしわたり淳治が『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で揃って彼女について語ったりと、新人ながら注目を集めている人物だ。

(関連:milet「inside you」MV

 彼女の歌声は非常に印象深い。ハスキーボイスの部類にあたるが、発声時の初速が速いからなのか、輪郭がぼやけていない。むしろはきはきとした歌声に聴こえるのだ。日本語を歌っていても英語のように聞こえる発音も特徴的。そのボーカルとサウンドプロダクトの掛け合わせが聴き手に新鮮な印象を与えている。

 そんな彼女のデビュー曲、「inside you」をプロデュースしたのはONE OK ROCKのToru(Gt)だ。周知の通り、ONE OK ROCKはワールドワイドな活動を志向しているバンド。洋邦の境界を溶かす存在となりつつあるmiletとの邂逅は必然だったようにも思える。milet曰く、「inside you」は、Toruとのセッションを経て生まれた曲とのこと(参照:https://natalie.mu/music/pp/milet06)。作曲がToruとmiletの共同名義の曲は、この他にも「The Love We’ve Made」、「Somebody」があるが、いずれもサビのメロディにおいてmid2G~hiC周辺の音域が使用されている。彼女の歌声がスコーンと抜ける音域に照準を合わせつつ、そのうえで印象的なフレーズを繰り返すような構成を採用しているところに、プロデューサーとしてのToruの手腕を読み取ることができる。

 とはいえ、miletのアプローチは幅広い。たとえば、「inside you」は、midGという女性ボーカリストにとってしては比較的低い音から始まっているにもかかわらず、しっかりと鳴らすことができている。「The Love We’ve Made」のサビでは、同じhiBの音でも地声のときと裏声のときがあり、場面に応じて両者を切り替えている。今年6月にリリースされた初のフルアルバム『eyes』では、Toruの他にも様々なアーティストが楽曲を提供していて、miletの多彩さ、ボーカリストとしてのポテンシャルを垣間見ることができる。本稿では、Toruの携わった曲を紹介するのみに留めるが、ぜひ他の曲も聴いてみてほしい。

 ONE OK ROCKのメンバーが女性アーティストをプロデュースするのはこれが初めてではない。Taka(Vo)は2016年7月、Aimerに「insane dream」という楽曲を提供した。また、同年9月にリリースされたフルアルバム『daydream』では、同曲を含む計5曲を提供している。

「私は今までの自分のイメージに囚われることなく、良い意味でいろんな方向性を試したいと思っていたので、彼がONE OK ROCKでやっているような曲調とか雰囲気の音楽性にもチャレンジしてみたいっていうことは彼には伝えていて。彼も彼で、それはもちろんだけど、自分がAimerに曲を書くとしたらこういうのも歌ってほしい、という希望もあって。そんな感じで、お互いに出し合いながら、激しいONE OK ROCKっぽい曲もあれば、わりと静かでバラードのような曲もあって、お互いがAimerに歌わせたい曲を話し合っていった結果、これだけのものができた、という感じですね」 

――と、Aimerが語っているように(参照:https://spice.eplus.jp/articles/77845)、Takaの提供した曲はざっくり言うと、2種類に分けられる。ひとつは、重めのロックサウンドによる曲で、これがおそらく彼女の言う“激しいONE OK ROCKっぽい曲”。もうひとつは、アコースティック調のナチュラルな空気をまとった曲で、これはおそらく“わりと静かでバラードのような曲”。

 特に前者におけるメロディには、ワンオクイズム的なものを感じる。鍵盤で言うところの黒鍵の音を効果的に用いた、ドラマティックなメロディだ。もしもTakaが同じ曲を歌ったとしても、違和感なく受け入れられるだろう。一方、後者にあたる曲は、Aimerの声質、空間を包むミストのようなハスキーボイスに当て書きしたようなメロディになっている。たとえば、「Higher Ground」のAメロは、抑揚に乏しく、フレージングを感じられるようなメロディラインではないが、これはきっとあえてそうしたのだろう。「h」や「w」といった発音時のアタックが弱くなる子音を多く使用した歌詞や、“歌う”というよりも“息を吐き出す”に近い歌唱法がそこに組み合わさることにより、Aimerだからこそ歌える歌が生まれた。

 ちなみに、Takaはプロデュースに際し、「彼女の声を初めて聞いて感動したあの日からこの楽曲提供にいたるまでの間、2人で何度も試行錯誤して話し合い、セッションをして一緒に作り上げました」とコメントしていて(参照:https://natalie.mu/music/news/187851)、曲の成り立ち方は奇しくもmilet&Toruと一致している。プロデュースする側もされる側もミュージシャンである場合、音でコミュニケーションを取るのがやはり一番スムーズに進むのだろうか。「この人の最も光る魅力を見つけたい」というプロデュースする側の願いと、「今までにない挑戦をしたい」というプロデュースされる側の願い。その2つが重なるところに注目してみると、新しい驚きが見つかるかもしれない。(蜂須賀ちなみ)

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