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TikTokで話題のラッパー Rin音に初インタビュー SNS世代だからこそ伝えたい、人と人とが接することの大切さ

リアルサウンド

20/6/10(水) 18:00

 今年2月にリリースした「snow jam」がTikTokで話題となり、Spotify国内バイラルチャート1位に輝き、YouTubeでも530万回再生を突破(6月3日現在)。各方面で注目を集めている大学生ラッパー・Rin音が、1stアルバム『swipe sheep』を6月10日にリリースする。

 “日本の四季”をテーマに作られた本作には、変わりゆく季節や何気ない日々の「一瞬」を鮮やかに捉え、彼独特のワードセンスによって綴られたリリックが並んでいる。柔らかく儚げな声で歌われるメロディが、チルでメロウなトラックの上でたゆたうさまは、夢と現実、日常と非日常の狭間を行き来するような、どこかモラトリアムなリリックの持つ世界観を体現しているかのようだ。なお、ゲストには同世代ラッパーの空音やクボタカイをはじめ、気鋭のシンガーソングライター・asmiらが参加している。

 自分の身の回りのこと、手に触れられるものをモチーフに曲を作り続けているというRin音に、アルバム制作についてはもちろん、リリースまでの経緯や、コロナ禍で思うことなどたっぷりと聞いた。(黒田隆憲)

『swipe sheep』や「snow jam」などタイトルの由来は?

ーーラップバトルを観たのがラッパーになろうと思ったきっかけだったそうですね。

Rin音:はい。もともと僕は歌うことが好きで、カラオケにもよく行ってたんですけど、最初はYouTubeの動画でラップバトルを観て、そこでラッパーたちが即興でリリックを作って戦っているのがメチャメチャ面白くて。そこからどんどんはまっていって、『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)は番組が始まった当初からずっと観ていました。

 ただ、周りにラップが好きな人が全然いなかったので、まずは布教活動というか(笑)。友人に「これ、かっこよくない?」って見せるなどしてラップ好きを集めることから始めました。それが高校3年生の頃ですね。最初は見よう見まねで遊んでいた感じで、サイファーと呼べるほどのクオリティでもなかったんですけど、みんなで集まってラップを披露し合っていました。

ーーラップに興味を持つまではどんな音楽を聴いてたんですか?

Rin音:親が聴いている音楽に触れるくらいで、基本的にその時に流行っているものを聞いている程度でした。父親から聞いた話だと、AIRさんの「Last Dance」(2002年)という曲がお気に入りだったみたいです。自分では全然覚えていなかったんですけど、改めて聴いてみると「なるほどな」と思うところがありますね。

Rin音

ーーでは、ラップのスキルは独学で磨いていった感じ?

Rin音:そうです。最初は模倣というか、バトルを観て誰かのバースを取り入れ、それをちょっといじって使っていたのを少しずつ自分のオリジナルにしていった感じでした。あとは、『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』(BSスカパー!)とかに出ていたT-Pablowさんが好きでしたね。ラッパーによってスタイルがいろいろあるじゃないですか。最初は大阪出身のK-razyさんの韻の踏み方を参考にしていて、そうすると今度はフロウの凄さにも気づき始めて、それで鎮座DOPENESSさんのフロウを観て「これ即興でやるのヤバいな」みたいな感じでどんどん取り入れていきました。

ーーそのうち、地元福岡のラップバトル選手権に出場するようになっていったのですね。

Rin音:福岡にいるラッパーはみんなこぞって参加していた『天神U20MC battle』というイベントがあるんですけど、最初は1回戦落ちだったのが、二度目の出場ではベスト8まで行ったんです。それで、3回目で優勝することが出来ました。その翌々日くらいに『KMB』(小倉MCBATTLE)では、決勝で裂固さんに負けちゃって準優勝だったんですけど、バトルで勝てるようになってくると楽しいから、色々な大会やイベントに出るようになって。少し前には、『チュリトリスワールド』というこれも小倉で開催されているラップバトルイベントに出てそこでも優勝しました。

 自分のラップって福岡周辺のクラブでやると、結構浮いてしまうことが多かったんですよ。当時はトラップが主流で、そのちょっと前にはブーンバップが流行っていたので、それこそ僕とかクボタカイみたいな音楽性は珍しい部類だったんです。でもブーンバップからトラップに変わっていく時に、いろんなスタイルが認められ始めて。僕自身もラップバトルに出て結果を残すようになっていたので、徐々に「いい」って言ってくれる人も増えてきて。クラブやライブハウスにも呼んでもらえるようになっていきました。

ーー福岡はある時期まで、わりと強面なヒップホップが主流でしたが、確かにここ最近はRin音さんのほかにもクボタカイさんや週末CITY PLAY BOYZのような、チルなイメージのラッパーが増えてきている印象がありますね。

Rin音:そうですね、自分たちの居場所が増えてきたというか。福岡でMCバトルを開いていたRYOTAさんという方がいて、その人が若い子たちをフックアップしてくれていたんです。それによって若い子たちがどんどん増えてきて、そのぶんジャンルも広がっていったというか。福岡全体のレベルが上がっている気はしますね……って、何目線だよって感じですけど(笑)。

ーー(笑)。Rin音さんの存在が全国的に広く知れ渡ったきっかけになったのは、やはり「snow jam」だと思うんです。TikTokで大きな話題となったことをきっかけに、Spotify国内バイラルチャート1位、 Apple Music総合チャートの9位にまで上昇するなど、各チャートでも軒並みランクインしていますし、この曲はどんなふうに作ったのですか?

Rin音 – snow jam (Official Music Video)

Rin音:最初に思ったのは、歌から始まる曲にしたいということでしたね。それ以外の構成は、逆にほとんどなかったくらい(笑)。歌から始まる曲は昔から「なんかいいな」って思っていて。パラメーターで言うと振り切っている状態というか、とにかくそれがやりたかったんです。リリックも「頑張れ!」みたいなメッセージソングではなく、ただただ自分が思っていることを書いているだけなんですけど、こういう曲構成にしたことで、その世界観に丸ごと浸ってもらえるんじゃないかなと。

ーー曲名もすごく印象的ですよね。

Rin音:曲を作る時はいつもフロウやメロディを先に考えるんですけど、あのメロディに当てはまるいい言葉は何かないかなと考えていた時にふと「snow jam」が思いついたんです。なんとなく語感が可愛らしいし、「traffic jam」(交通渋滞)じゃないですけど、雪がどんどん積もっていく感じと、自分の思いが積もっていく感じをうまく表しているんじゃないかなって。

ーーその「snow jam」も収録されたデビューアルバム『swipe sheep』ですが、何かテーマやコンセプトはありましたか?

Rin音:日本の四季は意識しましたね。自分の生活習慣に深く根付いているというか、夏になれば体育祭があって、秋には文化祭があって……学生時代は季節ごとの行事がいろいろあるじゃないですか。すでに「snow jam」というウインターソングも作っていたし、自分を取り巻く環境が自分の感情を作っているとも思うので、四季に自分の感情を織り交ぜながらアルバムを作ってみるのも面白いかなと思ったんです。

 あと、自分が曲を作る時によく題材にするのが「インターネット」や「睡眠」で、そこも自分のトレードマークだなと思っていて。それでアルバムタイトルも、スマホの操作の一つである「スワイプ」と、寝る時に羊を数えるところから「シープ」を持ってきて、それを掛け合わせてみたんですよね。

「自分にとっての『正しい考え方』が、人にとって正しいかどうかは分からない」

ーー「SNSを愛してる」という曲もありますよね。これはある意味、皮肉を込めて付けたタイトルなのかなとも思ったのですが。

Rin音:解釈は人それぞれあっていいと思っているんですが、SNSって僕のアカウントからメッセージを送れば相手は僕から送られてきたメッセージと認識するじゃないですか。でも、これってたとえば僕の親や友達、もしくは僕の知らない人が、僕のアカウントを使って送っている可能性もあるわけで。それってなんか変だな、本当に信じられるものなのかな、と思ったんですよね。なのにSNSで「相手と繋がっている」と思うのは、本当にそう言えるのかなって。そんな皮肉も込めたつもりです。

 このご時世なのでSNSやインターネットは必要だと思うんですけど、そことの付き合い方は大事なのかなと。あまりにも依存してしまったり、支配されてしまったりしていいのかなという気持ちがあるんです。世の中がどんな変わり方をしても、「人と人とが接する」ということの大切さは変わらないんじゃないかって。

ーーなるほど。それは、今この状況だとより響くものがありますね。そういう意味ではasmiさんをフィーチャリングした「earth meal」も、〈even if the earth is broken 私達ずっと歌っていようよ〉とか〈私達きっと2人ならさ 隕石だって良い天気だって笑ってながせる〉という歌詞にも、そういう効果がある気がします。

Rin音:そのサビの部分はasmiちゃんが書いてくれたんです。もちろん、コロナでこんな状況になるよりもずっと前に作った曲なんですけど、もともとは、宇宙移住計画に寝坊して行きそびれた2人が、地球に残って過ごしているというストーリーなんです(笑)。移住した先は楽しいのかもしれないけど、「地球に残っていても楽しいじゃん?」って。そこには「流行を追いかけるのだけがいいわけでもないし、好きなことを好きにやってもいいと思うよ」という自分なりのメッセージも込めています。

earth meal feat. asmi

ーーそういう、ストーリーテリングはどんなところから影響されているんでしょう。

Rin音:なんだろう……漫画を読むのはめちゃくちゃ好きですね。家にもたくさんあります。映画を観るのも好き。ファンタジーやSF、超能力系も結構好きですし、ヤンキー漫画も読んでます。そこからの影響も結構あるのかもしれない。漫画を読んで「かっこいい」と思うシーンは、曲に置き換えてもかっこいいと思うし。「面白いな」と思うシーンにしてもそうなんですよね。

ーー音楽からの影響を音楽にするよりも、音楽以外のインプットを音楽でアウトプットした方が、深みが出るかもしれないですね。ちなみにasmiさんとのコラボは、どのように実現したのですか?

Rin音:asmiちゃんは、僕やクボタカイの曲を聴いて自分で音楽を始めた子らしいんです。それで彼女の曲を聴かせてもらったら、僕も好きな感じだったので、ぜひ一緒に曲を作りたいと思って声をかけました。実はまだ直接会ったことは一度もなくて、電話やメールなどでやり取りしながら作業を進めていきました。

ーーそんな経緯があったのですね。そのクボタカイさんと空音さんをフィーチャーした「Summer Film’s feat. 空音,クボタカイ」は、アルバムのハイライトだと思うのですが、この曲はどのようにして生まれたのですか?

Rin音 – Summer Film’s feat. クボタカイ, 空音

Rin音:最初はトラックを自分が一人でラップする用にShun(Maruno)くんに頼んでて。その時に、リファレンスとしてDENIMSさんの曲とか送ったと思うんですが、制作の途中でShunくんが「こんな曲作ってます」みたいな感じでTwitterに動画を上げて、それを聴いた空音が「いいっすね!」ってリプを送ってたんですよ。だったら空音とクボタカイも誘って、3人で一緒に曲を作ろうかなと思って声をかけたんです。

ーーいい流れですね。この曲、夏休みのモラトリアムな感じとか、仲間とわちゃわちゃしているところとか、ちょっとだけスチャダラパーの「サマージャム’95」を思い出しました。

Rin音:確かに3人で福岡に集まってレコーディングして、一緒にワイワイ遊んでいるところをMV用に撮影して、ほんと「思い出づくり」みたいな曲になりましたね(笑)。

ーー空音さんやクボタカイさんと仲良くなったきっかけはありますか。

Rin音:空音とはTwitterで初めてDMし合って連絡を取り合って仲良くなったんですけど、クボタカイは最初に出たMCバトルの時から一緒だし、確か初ライブも一緒だったんです。そこで彼が声をかけてきてくれたのが、仲良くなったきっかけでした。

ーートラックメイカーのShunさんや、「Sweet Melon」で共演しているICARUSさんは同い年なんですよね。

Rin音:Shunくんには、「俺はこんな風なトラックが欲しい」って割とアバウトなリクエストをすることが多いんですけど、それをちゃんと具現化してくれるんですよね。今作に入っている「sleepy wonder」も、かなりふわっとしたイメージを伝えただけなのに、僕が思い描いていた通りのトラックに仕上げてくれたので「こいつすげえなあ」って思いましたね(笑)。

ーーその辺はやはり、聴いてきた音楽が近いから通じる部分なんでしょうかね?

Rin音:いや、聴いてきた音楽に関してはShunくんだけでなく、空音もICARUSもみんなバラバラだと思います。逆に、違うからこそ刺激を受けあっている気がしますね。

ーー聴いている音楽は違うけど、「その音楽をどう聴いているか?」という部分に共通項があるというか。それで言葉で言い表さなくても通じ合うところがあるんしょうか。

Rin音:はい、まさにそうですね。

ーー個人的にはニューリーさんプロデュースの「微睡むミカン」が、ドリームポップっぽい雰囲気も含め一番好きでした。

Rin音:ありがとうございます。ニューリーくんには以前、声をかけてもらって「CEDARWOOD」という曲を一緒に作ったんですけど(ニューリー『IYOKAN』収録)、そのスキルトレードとして今回トラックを作ってもらいました。その時にも曖昧なリクエストを出したんですけど、言うことなしのトラックが送られてきて。自分の周りには、そういう優秀なトラックメイカーばかりいるので本当にありがたいです。

ーーこの曲もそうですし、「Summer Film’s」にしてもギターの印象が強いトラックが並んでいますよね。

Rin音:確かに。僕自身はギターも弾けないしトラックも作れない、細かい専門用語も全然分からないんですけど、聴いていていいなと思えるトラックにギターが入っていることが多くて。別に普段からギターの入っている曲を聴いていたり、今回も意識して「ギター入れて」とリクエストを出したりしているわけではなくて、僕が伝える曖昧なイメージを具現化すると、ギターが入ったトラックになるみたいです(笑)。

ーー「甘ったるいタルト」は、Pri2mさんの冒険的なトラックが印象的です。

Rin音:同じことをずっと続けるのは楽しいと思えなくて、いろいろ挑戦したくなるんですよね。例えばAをやったら次はBをやりたくなるし、その次はCがやりたくなる。で、Cをやった後にまたAをやって、どれだけ成長できているのかを確認したいんです。BやCを経て、いろんな技術を身につけてAをやってみた結果、それがDに進化していたらいいなって。なので、「これ、ラップするの難しそうだな」と思うようなトラックを渡されても、そこにチャレンジしたくなる自分がいるんですよね。

Rin音

ーーたとえば「夢」と「現実」の狭間を歌った「sleepy wonder」が特に象徴的ですが、他にも「恋」と「友情」の間を歌っていたり、夏休みといういわば「モラトリアム」な状況を歌っていたり、どっちつかずの状態についての楽曲が本作には多く並んでいるように思いました。

Rin音:眠りにつく時間帯ってなぜかナイーブになったり、考え込んでしまったりすることがあるじゃないですか。あるいは、疲れて寝落ちする寸前に観るYouTube動画が幸せだったり。そういう時って平常心じゃないというか、自分の「本心」みたいなものがふわっと浮き出しているんだけど、でも眠たいから輪郭ははっきりしないみたいな、朦朧としている感じなんですよね。そこで思っていることは、たとえ矛盾していても面白いし、その人間臭さをうまく曲に出来たらいいなと思っています。

Rin音 – sleepy wonder (Official Music Video)

ーー掴みどころのない、次の瞬間には形がすっかり変わってしまうような一瞬の感情をキャプチャーしているような感じというか。

Rin音:本当にそんな感じです。

ーーまさに現在のコロナ禍も日常から隔絶された「どっちつかずの状態」だと思うんですけど、そんな中でRin音さんはどんなことを考えて過ごしてきましたか?

Rin音:自分にとっての「正しい考え方」が、人にとって正しいかどうかは分からないので、お互いに否定し合うのはやめた方がいいのかなと思います。個人的に争いがあまり好きじゃないので……。もちろん、パニックになってしまう人の気持ちも理解できるし、「もっと冷静になれよ」という人の気持ちも分かるじゃないですか。そこで「どちらが正しいか?」を争うのではなくて、「じゃあどうしよう?」というところでみんなが前を向いていたら、きっといい方向へ進んで行けるんじゃないかなと。

ーーでは最後に、本作『swipe sheep』をどんな時に聴いて欲しいか改めて聴かせてもらえますか?

Rin音:僕が作る曲はどれも「頑張れ!」みたいな強いメッセージがあるわけでもないし、誰かを責めたり貶したりするわけでもなくて。どちらかといえば、「俺はこんなふうに考え、こんなふうに頑張って生きているから、そこに共感してもらえたら嬉しい」みたいな気持ちなんです。なので、日々の生活に疲れた時とかサラッと聴いてもらえたらいいなと思っています。

swipe sheep
『swipe sheep』

■リリース情報
『swipe sheep(スワイプシープ)』
発売:2020年6月10日(水)
価格:2,273円(税抜)
発売元:ROOFTOP

トラックリスト:
01.snowjam (prod by RhymeTube) 
02.Sweet Melon feat. ICARUS (prod by maeshima soshi)
03.earth meal feat. asmi (prod by Henrii)
04.Naked Loving Summer (prod by Taro Ishida)
05.%BOY (prod by Taro Ishida)
06.甘ったるいタルトalbam version(prod by Pri2m) 
07.ネオネットヤンキー(prod by Taro Ishida)
08.Cherry Blossom (prod by Shun Maruno)
09.Summer Film’s feat. 空音,クボタカイ(prod by Shun Maruno) 
10.微睡むミカン (prod by ニューリー)
11.sleepy wonder (prod by Shun Maruno)
12.SNSを愛してる (prod by Shun Maruno)
13.swipe sheep (prod by maeshima soshi)

Rin音 OFFICIAL YouTube CHANNEL
Rin音 Twitter
Rin音 Instagram

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