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BOYSぴあSelection 第21回 塩野瑛久

塩野瑛久 Part2「泥臭さが、いちばんの武器」

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PART2

19/7/24(水)

PART1でデビューまでの歩みを語ってくれた俳優・塩野瑛久くん。PART2では、「やっと本気になれるものが見つかった」と熱を込める俳優業について、たっぷりとおうかがいしました。

精巧な人形のように均整の取れた顔立ち。でもそんな麗しき容貌からは想像もできないほど、素顔の塩野くんは泥臭くて、一途で、一生懸命。きっともっと塩野くんのことが好きになる、そんなインタビューをお届けします。

─── ジュノンボーイを経て、芸能界に足を踏み入れたわけですが、当時の気持ちはワクワク? それとも不安? どっちでしたか?

紆余曲折しましたね。ワクワクもしましたし、不安で押し潰されそうにもなりましたし。ただ、お芝居をすることに対しては欲と希望しかなかったです。もっとこういう役がやりたい、表現の幅を増やしたいっていうことは今も常に思っています。

─── それほど役者という仕事にのめり込んだのはなぜなんでしょう?

すごく影響を受けたのが、劇団☆新感線さんの『髑髏城の七人』(2011年上演版)です。映画館でゲキ×シネ(劇場中継を映画館で上映するもの)のポスターを見かけて、面白そうだなと思ってふらっと入ってみたら、本当に面白くて。もう衝撃だったんですよ。

─── いったい何がそんなに面白かったのでしょう?

まず単純に僕はそれまで舞台という世界を知らなくて。ドラマや映画の場合、カット割りや編集がありますけど、舞台は役者の演じたものが直接伝わるというか。それは熱量もそうですし。身体全体の動きなんかもまるごと見られるわけで。舞台って役者の力がすごく働くものなんだってことを目の当たりにして。その衝撃が大きかったのかなと。

そこでお芝居ってこんなにも魅力的なんだってことを知って、一気に火がつきました。『髑髏城~』はその後劇場に2回行って、DVDも買って、今まで30~40回は見ている作品。自分もこんなお芝居をやりたいと思いましたし、そこからお芝居を見る目も変わりました。

─── では、ご自身の出演作の中で最も自分を成長させてくれた作品と言えば?

『純平、考え直せ』ですね。

─── 塩野さんの初主演舞台ですよね。やはり主演というプレッシャーが成長を促した面も?

プレッシャーというのはそんなに感じていなくて。それよりも、僕は『純平~』みたいなお芝居がずっとしたかったから、そこに出られるワクワクというか。演出家さんがすごく厳しいと有名な方だったので、何か変われるチャンスだとも思ったし。プレッシャーというより、もっと自分を変えたいっていう向上心の方が大きかったですね。

─── 稽古で厳しくされるのは?

わりと好きです(笑)。はっきり言われないとわからないのではっきり言われたいですね。

─── 稽古の中で学んだことは何ですか?

禁止事項が多くて。ポッケに手を突っ込むの禁止、腕を組むの禁止、相手を指差すの禁止、相手にふれるの禁止とか。

─── それはなぜなんでしょう?

言われたんです。板の上に“ただ立っている”ことをしろって。

─── 台詞がないときとか、つい手持ち無沙汰になるから、何かわかりやすいポーズをしている方が落ち着きますもんね。

たぶんそれが守りに入っていることなんだと思います。写真とかでもそうですけど、女の人って、ただすっと立ってと言われても堂々とできちゃうんですよ。でも男はできない。絶対にカッコをつけたがる。守りたがるんですよ、プライドが高いから。自分というものを守りたくて、身振り手振りをつけたがる。

でも、それは必要ないと。言葉だけで伝えられるものに対して、何か身振り手振りを付け加えたくなるのは、伝えたよっていう安心感がほしいから。それが無駄な表現なんだっていうことを学んだし、それはいまだにそうだなと思います。

─── でも、ただ立っているだけで成立させるのって、めちゃくちゃ難しいですよね。

難しいです、板の上でその人として立っているのは。手の行き場が難しいんです。大事なのは重心の落としどころで。ちゃんと地に足がついているかどうか、なんです。でも、そうやってただそこに立っていることができるようになるだけで、舞台の上での居方がはっきり変わりました。

─── 公演期間のあいだで印象的だったことはありますか?

最後に長台詞があるんですけど、それが終わって、そこからずっとカーテンコールが終わっても涙が止まらなかったことがありました。それも千秋楽でも初日でも何でもない日に。

まだ芸歴も浅いくせにカッコつけて、カーテンコールではスンッてしていようって決めていたんですよ。その後、面会に来てくれた人にも会えないぐらい涙が止まりませんでした。

─── なぜそんなにも感情移入したのでしょうか?

何でですかね。わからないんです、それが。何かスイッチが入ったんですよ。もちろんお芝居なんか全然うまくないですし。すごく拙い演技だったと思うんですけど。ただ感情だけは入っちゃっていて。それはいまだに衝撃というか、自分の中でも思い出深いエピソードですね。

─── お話を聞いていると、すごく落ち着いていらっしゃる印象です。自分の性格を自己分析すると?

理屈っぽいですね。何でもかんでも言語化したがるクセがあって。何かわからないけど良かったとか、何かわからないけど好きとか嫌いとか。そういうのがあんまり好きじゃなくて。好き嫌いにしても、この人はこうだからっていう理由をちゃんと言語化したくなるんです。

─── それはなぜなんでしょう?

大人って、すぐ「子どもだからわからないよ」「まだ若いから大丈夫」って言うじゃないですか。その言葉が嫌いで。

じゃあどうすればいいかって考えたときに、自分の言葉でどれだけ相手を説得できるかに重きを置くようになった。これこれこうだから、僕はこうしたいんですっていうことをちゃんとプレゼンできるようになりたいって意識していたら、こんな性格になっていました(笑)。

─── 反骨心が、思考力を育てたんですね。周りから理屈っぽいと言われることも?

ありますね。ただ、嫌な顔をされることはあんまりないです。逆に、何か相談を受けたときとか、あやふやじゃない答えを提示できるので、それで頼られることの方が多いかもしれない。

─── 喜怒哀楽は激しいタイプですか?

本来は激しいです。ヘソ曲げたらわかりやすいですし。ただ、大人だし、なるべくそれを見せないようにはしていますけど。たぶん見る人が見たらバレバレだと思います(笑)。

─── 泣くこともありますか?

あります。映画とかでも泣きますし。思い出せる範囲で言うと、最近は『リメンバー・ミー』を見てめちゃくちゃ泣きました(笑)。

─── 人生でいちばんの大泣きは?

はっきりした理由はもう覚えていないですけど、父親とぶつかって、それで大泣きしたことがあります。それこそ枕に顔を埋めるぐらい大泣きして。

僕のベースにあるのは、悔しいっていう感情。ナメられたくないっていう気持ちも、そこから出てるんだと思います。だから、泣くときは怒り泣きというか悔し泣きが多いです。

─── 今後のお仕事で言うと、7月20日から男劇団 青山表参道Xの第2回公演「ENDLESS REPEATERS –エンドレスリピーターズ-」が開幕します。

まだ台本をいただいていないですけど(※取材は稽古開始前)、『Re:ゼロから始める異世界生活』っていうアニメが好きなんですよ。それも死に戻りの話で、今回も死に戻りの話なので、ストーリー的には好きな部類だなと思いました。あとは、どこまで泥臭いものが入ってくるのか、早く台本が読みたいです。

─── 今回は劇団員が3チームに分かれます。

それぞれのチームの個性とかがめちゃくちゃぶつかり合うんだろうなって思います。そこに日替わりゲストも加わるので、同じ回が一度としてない舞台になるのかなと。

─── 他のチームに対するライバル意識はありますか?

あります。旗揚げ公演はみんなでひとつの公演をつくりましたけど、今回は3チームに分かれたことで、自分と同じ役をやる人が出てくるわけだし、チームとしての表現も試されることになる。より一層それぞれの実力が吟味される環境になっていると思います。

─── じゃあ、その中で特にライバル心のある人を一人挙げるなら?

みんなそうですけど、一人と言われたらやっぱり栗山(航)くんですかね。

─── それはどんなところが?

お芝居の仕方が似ているというか。僕も彼もキャラクターで押し切れるタイプではないんですよ。たとえお芝居は拙くても役に個性がはまる人っているんですけど、僕らはそういうタイプじゃない。だからこそ、ちゃんと頭で考えて、ちゃんと表現方法を見出してやらないと戦えない。そういう意味で似てるなって思うし、逆に言うと、いろんなことができるのも僕と栗山くんだと思うので、通じるものもあるのかなって。

─── 多くのライバルがいる中、これだけは負けないという自分の武器は何ですか?

人間の上っ面じゃない根っこの部分とか泥臭さは誰よりも表現できるかなと思います。

─── それは自分自身が泥臭くやってきたから?

というのもありますし。僕自身、決してすごく恵まれた環境ではなかったので。その中で負けずにやってきた。そういう経験が実を結んでくれているのかなと思います。

─── これから仕事の面でもっとこうしたいと、こういうふうになりたいというものはありますか?

いちばんは、もっといろんな役に出会いたいです。自分にとっても思い入れのある役で、見てくれた人にも胸に響いたと言ってもらえる作品に出会いたい。でもそのチャンスにめぐり会うためには、まずは自分が相応の位置にいかないといけないんだなっていうのを最近ひしひしと感じているので、まずはそこをもっと頑張らないといけないです。

─── それはもっと多くの人に知ってもらうという意味で?

もっと顔を売ることももちろん必要だと思っています。でも、そういうことをやるのも全部いろんな役に出会うためだって、その根本だけはズラしたくない。そこは忘れないように、何があっても自分というものを保っていたいです。

やっぱり好きだから、この仕事が。役者っていう仕事に夢中なんです。大好きです。

─── この世界に入るまでやりたいことがなかったのに、そうやって胸を張って好きだと言えるものに出会えてすごく良かったなって、お話を聞きながら思いました。

本当に好きな仕事なので、ずっと好きなままでいられるようにいたい。そう思っています。

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撮影/高橋那月、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/時田ユースケ、スタイリング/山本隆司

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