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米津玄師が手がける楽曲は、なぜいずれもロングヒット? 関連シングル3作がトップ10入り

リアルサウンド

20/1/11(土) 8:00

参考:2020年1月13日付週間シングルランキング(2019年12月30日~2020年1月5日/https://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2020-01-13/)

 最新のオリコンチャートは、竹内まりや『いのちの歌』が6,875枚で1位、EXILE/,EXILE THE SECOND『愛のために ~for love,for a child~/瞬間エターナル』が6,007枚で2位、Foorin『パプリカ』が5,248枚で3位という結果になった。この週は年末年始で大きな新譜がなかったこともあり、全作品の売り上げが1万枚どころか7,000枚を下回るという珍しい事態に。その結果、米津玄師の関連作がトップ10に3つ浮上している。

(関連:Foorin「パプリカ」試聴はこちら

 今回ランクインしたのは3位の『パプリカ』に続き、5位の『馬と鹿』(3,111枚)と8位の『Lemon』(2,316枚)の3曲。週間ランキングはその週の発売作品が圧倒的に有利なのにも関わらず、2018年に発売した作品を2曲もチャート入りさせ、ロングヒットを見せている。年末に放送された『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)では米津による作詞・作曲・プロデュースの「パプリカ」、菅田将暉「まちがいさがし」、嵐「カイト」が披露されたため、その効果もあったのだろう。本人はコメントのみの出演であったものの、”作曲家としての米津玄師”が世に知れ渡った一夜であった。

 なかでも「パプリカ」は彼のメロディセンスが光る一曲だ。「〈NHK〉2020応援ソングプロジェクト」として作られたこの曲は、2018年の8月~9月の『みんなのうた』(NHK総合)として使用されると日本中の子供たちの間で大ブレイク。ミドルテンポのダンサブルなリズムに口ずさみ易い日本語詞を乗せることで誰でも歌えて踊れるポップソングとして人気を博した。しかしその反面、メロディの端々に米津独特の”寂しさ”や”切なさ”を感じ取れる二面性を持った曲でもある。小中学生5人組のFoorinによる歌唱やダンスは解放的で底抜けに明るいが、楽曲に潜むどこか物寂しいコード感は、逆に心に深く染み渡るようだ。この曲が子供だけでない幅広い人びとの琴線に触れるのは、そうした二面性を持ち合わせているからだろう。

 また、米津作品はいわゆるバンドサウンドもあれば、打ち込み系の楽曲もありつつ、メジャーデビュー後のオーケストラアレンジの施された壮大なものまでその音楽性は多岐に渡るが、どれにも共通する要素としてビートの存在がある。大衆音楽の歴史を語る上でリズム面は欠かせない要素だが、彼の音楽を語る上でもそれは同様。それも単調な四つ打ちではなく、洗練されたビートである。「パプリカ」のリズムも飛び跳ねるような楽しさがあり、ドラムとベースだけでも十分踊ることができる。あの「Lemon」でさえも曲全体に漂う悲壮感の中にしっかりとリズムの”跳ね”を感じ取れる。「馬と鹿」も然りだ。

 彼は常に「普遍的なものを作りたい」と口にしているが、口ずさみ易い日本語詞や、明るさの中にもどこか切なさを感じさせるメロディ、そして跳ねるリズムなど、米津作品に共通するそうした要素は、古今東西のスタンダードナンバーが持つ要素でもある。それを考えれば、彼の作品がこうして多くの人びとに受け入れられているのは必然なのかもしれない。

 YouTubeなどのネットサービスが普及し簡単に曲をチェックできる今の時代、テレビ放送の効果でCDが売れるというのも「物として持っておきたい」「良い音で深く聴き込みたい」という意識の表れだろう。若者のみならずCDで音楽を聴く世代にまで人気が広がっているのは、曲の良さがあってこそである。まさに”作曲家としての米津玄師”の評価をチャートアクションからも実感できる結果であった。今はただ、嵐の「カイト」がどういう形態で、いつ発売されるのかが気になるばかりである。(荻原梓)

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