Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

立川直樹のエンタテインメント探偵

ビートルズの名作を観ながら話したり、ユージン・スミスの『ジャズ・ロフト』について濃いトークをしたり…。気分はどこか“伝道師”。

毎月連載

第73回

『ジャズ・ロフト』から (c) The Heirs of W. Eugene Smith.

前回のエッセイの冒頭で6月7日に立川のシネマ・シティで『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』の上映に合わせたトークイベントをやったことは書いたが、その9日後の16日にはよしもと有楽町シアターでダイノジの大谷ノブ彦クン、こがけんと客席でお客さんと一緒に映画を観ながら生解説、トークを行うという前例のないROCKムービー上映会「Rock Talks Movie Lab.~A HARD DAY'S NIGHT~」を企画・プロデュースした。上映した映画はビートルズ主演の名作『ハード・デイズ・ナイト』。『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE! 』という抜群におもしろい本も出して、ロック・フェスでDJもしているROCK狂の大谷クンのツッコミがいい感じで、客席からは笑いもあがり、とても楽しいイベントになったが(次回は8月15日に今度はボブ・ディランのドキュメンタリー『ドント・ルック・バック』を上映する)、7月は3日に「ピーター・バラカンが選んだ音楽映画フェスティバル」と銘打って角川シネマ有楽町で2日から15日まで催されたイベントにゲストとして呼ばれ、9月にロードショー公開される映画『MINAMATAーミナマター』で脚光を浴びる写真家ユージン・スミスが遺した写真や録音テープで構成された『ジャズ・ロフト』について濃いトークをした。

ドント・ルック・バックから
(C)2016Pennebaker Hegedus films.Inc

気分はどこか“伝道師”。ピーターとは7月24日に「円盤寄席」と銘打って金沢の北國新聞赤羽ホールで、レコードをかけてトークをする2時間近いイベントまで実現させてしまったが、その1週間前の7月17日には大阪の堂島に1年前にオープンしたZentis Osakaの1周年記念イベントとしてその日が命日のビリー・ホリデイの名唱を極上のオーディオで聴くというサロン・コンサートも企画・プロデュースした。うれしいことに昼夜とも満席。お客様の満足そうな顔と文字通り天国からビリーが降臨してきたような空間では昼からふたりでワインを2本もあけてしまう人達もいて、アナログ盤の値打ちを改めて実感できたが、7月8日にLUNA SEA/X JAPANのSUGIZOをゲストとして招いてシネマ・シティでミック・ロンソンのドキュメンタリー『ビサイド・ボウイ ミック・ロンソンの軌跡』の上映とトークのイベントを催した時に客席を埋めつくしていた若い観客を目にすると、レコードや映画というメディアが確実にエンタテインメントとして存続していることが実感できた。

ビサイド・ボウイ ミック・ロンソンの軌跡から
(C)2017 BESIDE BOWIE LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

Zentis Osakaでは9月28日にはマイルス・デイヴィスの命日に合わせたイベントが決定。ビリー・ホリデイが亡くなった7月17日がマイルスと並ぶジャズ界の巨匠ジョン・コルトレーンの命日でもあったので、名曲『ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ』の聴き比べもしたが、マイルスが降臨する夜はまず僕自身が一番楽しい時間を過ごせるのかも知れない。

物に接するのには絶対にそれなりの時間が必要だー『マン・レイと女性たち』、サイモン&ガーファンクルのセントラル・パークコンサート…。エンタテインメントの旅は永遠に続いていく。

『マン・レイと女性たち』
All images: Photo Marc Domage, Courtesy Association Internationale Man Ray, Paris (1 and 10: Courtesy Association Internationale Man Ray) © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2020 G2374

そう、確実に言えるのは物に接するのには絶対にそれなりの時間が必要だということ。Bunkamura ザ・ミュージアムで9月6日まで開催されている展覧会『マン・レイと女性たち』もアメリカとフランスを舞台にダダ、シュルレアリストとして活動し、世界的な人気を誇る芸術家の素晴らしい仕事を250点を超える作品で振り返ろうとする展示は丁寧に見ていくと、絶対に1時間以上はかかるし、7月24日にNHK BSプレミアムで見ることができたサイモン&ガーファンクルの1981年のセントラル・パークでのコンサートも記録されたものの素晴らしさと永遠性を実感させてくれた。

7月14日に富山市ガラス美術館で見た「富山ガラス大賞展2021」「コレクション展」、最上階6Fの「グラス・アート・ガーデン:チフーリ・エクスペリエンス」の掛け値なしの素晴らしさと、その翌日に石川県立美術館で見た「文武の誉れ」の充実した内容。あとは下馬評通り直木賞を受賞した佐藤究の超強力な小説『テスカトリポカ』と100万人の大観客を集めたローリング・ストーンズの『ア・ビガー・バン:ライヴ・オン・コパカバーナ・ビーチ』のBlu-ray・デラックス・ヴァージョンが“買う値打ちがある現物”だと書いておきたい。ぴあアプリの“水先案内”で紹介したことがきっかけで呼んでいただいた『太陽と躍らせて』のリリー・リナエさんとの吉祥寺UPLINKでのトークイベントもとても楽しく、何かが生まれる予感がした。エンタテインメントの旅は永遠に続いていく。

太陽と踊らせてから (C) Pure in the Moon

データ

●イベント
「Rock Talks Movie Lab.~A HARD DAY'S NIGHT~」
公演:2021年6月16日
会場:よしもと有楽町シアター

●映画
『ハード・デイズ・ナイト』(1964年・英)
監督:監督リチャード・レスター
出演:ビートルズ

●本
『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE! 』
出版社:シンコーミュージック
発売日:2013年12月20

●イベント
「Rock Talks Movie Lab.~DONT LOOK BACK~」
公演:2021年8月15日
会場:よしもと有楽町シアター

●映画(ドキュメンタリー)
『ドント・ルック・バック』(1967・年米)
監督:D・A・ペネベイカー
出演:ボブ・ディラン

●特集上映
「ピーター・バラカンが選んだ音楽映画フェスティバル」
公演:2021年7月2日~7月15日
会場:角川シネマ有楽町

●映画
『MINAMATAーミナマター』(2020年・米)
公開日:2021年9月23日
監督:アンドリュー・レヴィタス
音楽:坂本龍一
出演:ジョニー・デップ/真田広之/國村隼/美波/加瀬亮/浅野忠信/岩瀬晶子

●映画
『ジャズ・ロフト』(2015年・英)
公開日:2021年10月15日
監督・脚本・製作:サラ・フィシュコ
出演:サム・スティーブンソン/カーラ・ブレイ/スティーヴ・ライヒ/ビル・クロウ/デイヴィッド・アムラム/ジェイソン・モラン/ビル・ピアース

●イベント
「円盤寄席(レコードヨセ)」
開催日:2021年7月24日
会場:北國新聞赤羽ホール

●イベント
「Salon de Zentis」Vol.1 “Billie Holiday”
開催日:7月17日
会場:Zentis Osaka

●イベント
「Salon de Zentis」“マイルス・デイヴィス”
開催日:2021年9月28日
会場:Zentis Osaka

●イベント
『ビサイド・ボウイ ミック・ロンソンの軌跡』
「立川直樹×SUGIZO トークショー」
開催日:7月8日
会場:シネマ・シティ

●映画(ドキュメンタリー)
『ビサイド・ボウイ ミック・ロンソンの軌跡』(2017年・英)
監督・製作:ジョン・ブルーワー
出演:ミック・ロンソン/ルー・リード/グレン・マトロック/ロジャー・テイラー/リック・ウェイクマン/ジョー・エリオット/スージー・ロンソン/アンジー・ボウイ
ナレーター:デヴィッド・ボウイ

●CD・レコード
『ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ』
ジョン・コルトレーン

●展覧会
『マン・レイと女性たち』
会期:2021年7月13日~9月6日
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
HPはコチラ

●TV
『サイモン&ガーファンクル コンサート イン セントラルパーク NY 1981』
放送日:7月24日
放送局:NHK BSプレミアム

●展覧会
「富山ガラス大賞展2021」
会期:2021年7月10日~10月3日
会場:富山市ガラス美術館
HPはコチラ

●展覧会
「文武の誉れ」
会期:2021年7月10日~8月8日(会期短縮により終了)
会場:石川県立美術館

●BOOK
『テスカトリポカ』
著者:佐藤究
定価:2,310円(税込)
発売日:2021年02月19日
出版社:KADOKAWA

●Blu-ray
『ア・ビガー・バン:ライヴ・オン・コパカバーナ・ビーチ』
アーティスト:ローリング・ストーンズ
価格:7,700円(税込)
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社
詳細はコチラ

●イベント
『太陽と躍らせて』トークイベント
開催日:8月2日
登壇者:リリー・リナエ/立川直樹
会場:UPLINK吉祥寺

●映画(ドキュメンタリー)
『太陽と踊らせて』(2020年・日本)
公開日:2021年7月24日
監督・製作・撮影:リリー・リナエ
出演:ジョン・サ・トリンサ/ケニス・バーガー/セシリア・サイモン/クリスチャン・アストラ/デヴィッド・モス

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著にSUGIZO、TAKUROとの対談集『CONVERSATION PIECE ロックン・ロールを巡る10の対話』(PARCO出版)、『I Stand Alone』(青幻舎)、『ラプソディ・イン・ジョン・W・レノン』(PARCO出版)。

アプリで読む