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吉開菜央の特集上映12月12日より開催、ライブダンスやトークイベントも

ナタリー

20/12/11(金) 12:00

「吉開菜央特集:Dancing Films」メインビジュアル

新型コロナウイルスの影響で延期となっていた「吉開菜央特集:Dancing Films」が、明日12月12日から25日にかけて東京・ユーロスペースで開催されることがわかった。

米津玄師「Lemon」のMVなどで振付家やダンサーとして活動しつつ、映像作品の制作も行ってきた吉開菜央。本特集では、第72回カンヌ国際映画祭の監督週間に招待された「Grand Bouquet」、柴田聡子が音楽と出演を兼任した「ほったまるびより」、岡田式静坐法を取材したドキュメンタリーフィクション「静坐社」など中編と短編の計6作品が上映される。

このたび本特集に寄せた著名人の推薦コメントも到着。批評家の佐々木敦は「吉開菜央の映像には、触感や匂い、熱と湿度が宿っている。イメージの内側で動き、戯れ、蠢くからだたちの、生々しい、だがどこか非実在的な佇まい。それらばかりではなく、画面それ自体が、一種の生物のように思えてくる」とコメントした。

なお本特集では、本編終了後にミニライブダンスやトークイベントも実施。詳細は下記で確認してほしい。

吉開菜央特集:Dancing Films

2020年12月12日(土)~25日(金)東京都 ユーロスペース 連日 20:40~

<上映作品>

Aプログラム

「Grand Bouquet」
「ほったまるびより」
「静坐社」

Bプログラム

「梨君たまこと牙のゆくえ」
「みずのきれいな湖に」
「Grand Bouquet」
「Wheel Music」

※Aプログラム、Bプログラムを日替わりで交互に上映

ミニライブダンス(本編上映後・30分程度予定)

12月12日(土)
出演者:柴田聡子( ミュージシャン / 「ほったまるびより」音楽)、小暮香帆(ダンサー / 「ほったまるびより」「みずのきれいな湖に」出演)、吉開菜央

12月13日(日)
出演者:松本一哉(音楽家 / 「Grand Bouquet」音楽・作曲)、後藤ゆう(ダンサー / 「ほったまるびより」「梨君たまこと牙のゆくえ」出演)、吉開菜央

トークイベント

12月16日(水)登壇者:北田雅也(「Grand Bouquet」「ほったまるびより」音響演出)、吉開菜央
12月18日(金)登壇者:岩渕貞太(ダンサー)、関かおり(ダンサー)、吉開菜央
12月19日(土)登壇者:大寺眞輔(映画批評家)、吉開菜央
12月20日(日)登壇者:円香(魔女)、吉開菜央
12月23日(水)登壇者:石川直樹(写真家)、吉開菜央

佐々木敦(批評家)コメント

吉開菜央の映像には、触感や匂い、熱と湿度が宿っている。
イメージの内側で動き、戯れ、蠢くからだたちの、生々しい、だがどこか非実在的な佇まい。
それらばかりではなく、画面それ自体が、一種の生物のように思えてくる。
所詮は表象であるしかないはずの映像が、舞台上の、目の前の現前と完全に等価となる、異様な、しかし限りなく魅惑的な錯覚を、彼女の映画は、私に抱かせてくれる。

O JUN(画家)コメント

言われるままに大音量で観ていたら、胃袋をゆさぶられ奥歯と犬歯ガタガタいわせられた。もうないのに。
話し声、鳥の声、声か物音かわからない音、擦れ合う音、風の音、水の音、回転音、吐く音、吸う音、咀嚼音、機械音、落下音、そんなのが耳をつんざき、囁かれて、でも聴き漏らしたり…。昼夜、埃、果実、花、鳩尾、写真、品々。見たことない背中。見えているものに目を攫われて、聴こえる音は、こりつむえん。声や音がこの世の隅々まで届いては消え、そのあとにかたちが置きざりにされて、シンとしていた。放課後みたく。
つるんと見えた気がした。交信と交換。けっこうエロいんだよな、これ、余韻とかじゃなくて。
明日の騒乱。
吉開さん。
遠吠。

柿崎麻莉子(ダンサー)コメント

体からみた世界の景色。ダンサーだけが知っている世界の秘密を、吉開さんはあかそうとしている。
見て、匂い、聞き、触り、味わいながら体は世界と出会う。
意味が生まれる前の世界に、感覚の一粒一粒が、真珠のネックレスのように煌めく。

荻野洋一(映像演出 / 映画評論家)コメント

吉開菜央によるダンス/映画の融合が力づよく露呈させるのは、映画史のすべてがダンス映画であったという事実。吉開映画ではチリやホコリも、記憶/忘却を互い違いに反転させつつ、美しい舞いを見せる。死骸の腐乱作用ですらダンスだ。きっとウィルスなりで人類が滅んだあとも、ダンスは残るだろう。セシウムやプルトニウムが、次代のダンサーを引き受けるだろう。吉開映画が無言のうちに示すのはその引き受けの、あられもない火口である。

大寺眞輔(映画批評家)コメント

吉開菜央は睫毛である。あるいは足裏であり水流であり脇であり風の淀みであり歯茎に伝わる小さな違和感でもあるだろう。吉開は風景を撮らない。会話を録音しない。彼女はただ、山の斜面が生み出す重力の歪みを触知し、肉が腐り落ちる匂いをかぎ分け、舌と歯と果実が擦り合う咀嚼音に耳を傾けるだけだ。とは言え、そこにもまた物語はある。吉開の背中にはホモンクルスが棲まい、瞼の裏ではドッペルゲンガーたちが今夜の夢の到来を待ちわびているからだ。いまだ物語の微生物と呼んで構わない彼女たちがこれから一体どのような成長を見せるか、生成変化を遂げるのか。それはまた、映画作家としての吉開菜央という物語の続きともきっと繋がるだろう。

住吉智恵(アートプロデューサー / RealTokyoディレクター)コメント

1980年代生まれの「ミレニアム世代」は、幼少期からテクノロジーに親しみ、社会的・精神的・身体的意識が高く、嘘がきらいだといわれる。吉開菜央はこれら同世代の特長を持ち合せながら、さらに彼女を突き動かす「情動」をきわめて意識的に原動力に変える。世代で括られるのはごめんだと、きっと彼女はきっぱりと、花の礫を吐きながら訴えるだろう。同調する空気の力で見過ごすことなどできない、そんな違和感や抵抗感がまさに吉開のモチベーションの一部になる。映画的な線形の物語や音楽的な時間軸に頼ることなく、自身の身体の動きに導かれて撮影・編集した映像から溢れだす「情動」をすくいとり作品化する。振付家がスタジオで構築していく身体表現とデジタルツールを駆使した映像表現が、眩しく、頼もしい結合を見せる。馴染み深い肉体と機械が「情」の力を味方につけ、同世代の想像を超えていくアートである。

柴田聡子(ミュージシャン)コメント

吉開さんの映像を見ていると、気分が良い。一つ目には、生命が蠢いている!と感じるから。吉開さんの自然や人間への想像力や愛情が惜しみなく注がれているのが伝わってきて、言葉にならない類の感動があり、単純に元気をもらう。二つ目には、そんな言葉にはしにくい感性を保ちながらも、吉開さんによって全てを言葉に出来そうなくらい、映像がすごく精密だから。逃げも隠れもしないでその両立に臨む姿が清々しい。そしてその結果、出来上がる映像がすごく面白いというのが何よりも爽快。面白くって、だから素直に泣いたり笑ったりして、気分が良くなる。私はそう思いますが、観る人それぞれの感覚を引き出す、懐の深い作品群だと思っています。

山田健人(映像作家)コメント

まずなんといっても作中すべての身体表現の美しさとその完成された独自の捉え方に感動し続けます。Dancing Filmsという言葉の枠に収まらない素晴らしい映像ばかりで鑑賞直後から脳裏に焼き付くシーンがいくつもあり、きっと吉開監督自身が振付師でありダンサーであることに由縁する身体と精神の結びつきの独特な切り取り方に魅了される濃厚な作品集です。

五所純子(文筆家)

バラバラ蘇生事件。なつかしい少女毒性の、あたらしい音響映像技術の。フランケンシュタイン博士はいまはもう、北極の海におぼれるでなく、地表の陽だまりにおどって。息を吸って肺を破り、息を吐いて障子を切り裂き、頭皮を揉まれ、鼓膜を刺され、そんな勢いにのせられて、視るの、聴くの。からまるの、肉体と、家屋敷と。骨と、果実と、永遠と。

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