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「誰もがアルヴィンにもトーマスにもなれる」田代万里生&平方元基ペア『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』稽古場インタビュー

ぴあ

田代万里生×平方元基

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ブロードウェイと韓国で大ヒットしたミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』が、12月13日に開幕する。

’19年の日本初演から2年ぶりに上演される本作は、亡くなった友達アルヴィンの弔辞を書くために、小説家トーマスが、空想世界でアルヴィンと共に記憶の旅に出る、切なくやさしい二人ミュージカル。2度目の上演となる今回は、日本初演ペアの田代万里生&平方元基に加え、新ペアとして太田基裕&牧島輝が出演する。

太田&牧島ペアに続き、今回は日本初演ペアである田代と平方に稽古に入っての感想を聞いた。

ふたりは日本初演では、2役を交互に演じる相互上演をしたが、今回は、亡くなった幼馴染アルヴィンを田代万里生、小説家トーマスを平方元基が固定で演じる。

“ふたりでひとつ”感は初演よりもさらに

――“日本初演ペア”のおふたりは、今日で稽古2日目ということですが、お稽古はどんな感じですか?

平方 初日から60ページ分くらい進みました。これはものすごいスピードなのですが、楽しいよね(笑)。

田代 前回はお互い2役演じたし、稽古と同時進行で日本語の台詞や歌詞もブラッシュアップしていくような状況だったんですけど、今回は再演ということで比較的かたまった状態でスタートできています。なので本質をちゃんと見極めながら、一個一個できているんじゃないかなと感じています。

――久しぶりの共演はいかがですか?

田代 やっぱり毎日、元基と会えるので。

平方 俺もそれ、すごく嬉しい。’19年のあの日々を過ごした仲間というか……当時はこの作品の前に『エリザベート』でも一緒だったから、半年間ずっと一緒にいられたんですよ。そういう、全部を話さなくても何を感じて何を考えているのか理解してくれるような人たちと一緒にやれているので、よりこの作品の親友感は出てくるんじゃないかなと思っています。それに今、あの頃の記憶を辿りながらやれていることは、この作品をイチから構築していくうえでも助かっているとも感じています。

田代 確かに。トーマスとアルヴィンが幼馴染という設定なので、初演の時よりそのニュアンスは出ているんじゃないかなって感じがしますね。

――お芝居ではどう感じられますか?

平方 万里生くんのこと、2年前も好きでしたけど、よりなんかこう……公開告白みたいだけど(笑)、なんか、目が合っただけですごく安心というか、すごい包容力。

田代 (笑)

平方 万里生くんのこの2年での変化があるとしたら、そこなんじゃないかなってすごく思う。この作品はふたりしかいないから、頼るのも相手しかないわけです。それが万里生くんでよかったなって、2年前よりももっと思います。

田代 この2年間で元基は大きい作品をたくさん担って、初演の時からさらに頼もしくなっている部分を感じるし、アルヴィン(田代)の一言一言がすごくよく染みてくれるっていうか。すごく影響を受けてくれるトーマス(平方)なので、そこはアルヴィンとしても、僕としても嬉しいです。ふたりだから、どちらかが決めつけてお芝居してしまったりすると、無意識のアクリル板みたいなものができちゃいますから。そういう意味では、“ふたりでひとつ”感は初演よりもさらに深まっていくのかなと思っています。

言葉をちゃんと、届けるために

――2度目だからこそ大事にしたいことはありますか?

平方 言葉をちゃんと伝えたいな、という気持ちがあります。
僕たちが台本を読んで、理解して話すことと、一度しか観られないお客様が耳だけで聴いて、それをどう解釈できるかってところはまた違いますうからね。 そこを大事にするためにも、言葉をちゃんと伝えていきたいな、と思いますね。

平方元基

――田代さんはどうでしょう。

田代 そうですね……

平方 元基じゃない? 元基のこと大事にしたいんじゃない?(笑)

田代 (笑)。この作品にはすごく哲学的な、深みのありそうな言葉もあるんですけど、でも伝えたいことはすごくシンプルなんです。難しそうだけど実は簡単、簡単だけど難しいっていう、その相反するところがたくさんある作品で。初演の時よりもっと明確に、お客様にスッと入るような言葉を届けたいと思っています。

――言葉をより届けるって、具体的にどのようなことになるのですか?

田代 今回、台詞でも初演からブラッシュアップされている部分が何カ所かあります。英語から日本語への訳し方についても、演出の高橋(正徳)さんや翻訳の保科(由里子)さんと相談して、僕と元基からもアイデアを出しました。脚本の英語をもう一度見つめ直して、「直訳はこうなるけど、本質はこういうことで、日本人の感性で音で聴いた時にはこっちのほうがいいんじゃないか」とかいろんな相談をしたので、そこでクリアになったこともあるんじゃないかなって。

田代万里生

平方 もちろん台詞は俳優が馴染むようにも持っていかないといけないっていう部分があるんだけど、今回の、ここの擦り合わせができたのはとてもよかったです。やっぱり1回目より2回目ということで、実感を持って舞台上にいられるためにもすごく必要な作業だったと思いました。

――高橋さんとは演出について何かお話されましたか?

田代 (稽古場にいる高橋にzoom画面を向けながら)こちらが高橋さんです!

高橋 どうも(笑)。今も毎日、相談しながら言葉をブラッシュアップしたり、役者の芝居自体ももう一度見つめ直しながら再構築している感じです。

田代 以上、現場からでした!

一同 (笑)

――音楽にはどんな魅力がありますか?

平方 台詞と戯曲と音楽がちゃんと馴染んでいるから、なんでこの音楽がここに入っているんだろうねっていうことがないんですよ。 常にアルヴィンやトーマスが感じていることが増幅されてその音が鳴っている。BGMにも必ず意味があって、内側から出てきているものが表現されているんですね。だからすごく自然にいられます。「よし次この曲来るぞ、がんばろう!」みたいなことがなくて、ちゃんと物語を踏んでいけばそのテンションになれるのも、素敵な楽曲ばかりだなと思う理由のひとつです。

田代 全部が「トーマスとアルヴィンの空気感が音楽になった」というふうになるまで一体化したいですよね。

一番明るい“お葬式ミュージカル”

――作品自体にはどんな魅力を感じられていますか?

田代 アルヴィンとトーマスは全然違うタイプの人間と思いきや、きっと観る方はどちらにも共感すると思うんです。自分の中のアルヴィンとトーマスっていう2面性を感じ取ることが、改めて自分を見つめ直すきっかけにもなると思います。あとはやっぱりふたりが6歳くらいの頃から大人になっていく過程を描く話なので、大人になることで選択しなくちゃいけないこと、捨てなくちゃいけないこと、色々なことがテーマとして扱われている。だから観る人を限定しないし、誰もがアルヴィンにもトーマスにもなれる作品だというのが、一番の魅力かなと思います。

2019年初演舞台写真 撮影:西木義和

平方 トーマスって一見ずっと悩んでいるし、なんでそんな可哀そうな選択をするんだよ!って人だと思うんです。だけど、どんなふうに生きてきても、置いてきてしまったものとか、見ないふりをしたこととかあると思うんですよ。親友だったのにそういえば今は連絡も取ってないしどこに住んでいるかもわからない友達とか、僕も全然いる。そういうことはきっとみんなあるんじゃないかなって。そしてそのことを、敢えて掘り起こさなくてもいいくらいの浅い問題として捉えている人のほうが多いと思う。この作品は、そういうものを敢えて物語にすることで、皆さんの心に投影できるというか。問題にはしなかったけど、こういうことってあったよねって。

2019年初演舞台写真 撮影:西木義和

だけどこの作品ではその人が亡くなるんですよね。そこで気付かせてもらえるものがある。トーマスにとっても、こういう機会がなければ振り返るような問題じゃなかったと思うんです。みんなそうじゃんっていうようなことだと思うから。

この物語は、そういうことを振り返るきっかけとかチャンスを授けてくれるんじゃないかなと思います。

――そのトーマスを演じるって、どんな気持ちになるのですか? 温かい?辛い?

平方 温かい気持ちがあったから辛いんですよね。あんなにも自分の青春を構築していた一つひとつのものを置き去りにしてきた自分の人生に突然気付くから。それを気付かせてくれて、また満たしてくれるのもアルヴィンだったっていうことですよね。それも辛いんですけどね。

――もう会えないですからね。

田代 でもこの作品は多分、一番明るい“お葬式ミュージカル”なので。

一同 (爆笑)

平方 ほんとそうだ(笑)。だって「弔辞読みます」って言って始まって、「弔辞読みます」って言って終わるからね(笑)

――明るいお葬式ミュージカル、楽しみにしています(笑)。



取材・文:中川實穗



ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』
2021年12月13日(月)~2021年12月25日(土)
会場:東京・よみうり大手町ホール

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