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もう一度“胸キュン”を取り戻そう 『恋はつづくよどこまでも』は少女漫画的展開が全開!

リアルサウンド

20/1/15(水) 12:00

「助けて……助けて誰かっ……助けてください!」

 火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)は、「これぞ少女漫画的展開!」と膝を打ちたくなるような、王道のラブコメだ。

参考:佐藤健が考える“自分を見失わない”仕事のやり方 「ベストな道が見つかるまで考える」

 主人公・七瀬(上白石萌音)は、どこにでもいそうな普通の女の子。夢も見つからないまま、高校卒業を直前に控え、修学旅行で東京へ。すると、神社の前で見知らぬ女性が突然倒れ、思わず「助けて」と叫んだところに、ドクターの天堂(佐藤健)が通りかかるという運命の出会いが待っていた。

 天堂に憧れ、看護師の道を目指し、ついに5年かけて同じ病院で働く夢を叶えた七瀬。初日に会った瞬間「ずっと好きでした!」と告白するも「ド新人が、なんで俺に告白してる? 頭は無事か? 脳波は正常か?」と、厳しい言葉で返り討ちに。そう、天堂は自分の持つ親切を全て患者で使い切る、同僚には超がつくほどドSドクターだったのだ。

 「魔王」との呼び声も高い天堂の心を射落とそうとする七瀬は、職場の先輩たちから「勇者」というニックネームをつけられ、温かく迎え入れられる。天堂の同期・来生(毎熊克哉)も「応援するよ」とシュークリーム大作戦を繰り広げるほど。

 もちろん、七瀬は新人看護師ゆえに失敗も多い。「バカッ」と天堂からキツい言葉を投げかけられて、落ち込むことも。だが、技術的にはまだまだな七瀬だが、持ち前のポジティブさで患者との距離を縮め、その変化に気づくいいところもある。そして自分だけではどうしようもないことに直面したとき「助けてください」と、とっさに声を出せるところも、素直な七瀬の良さ。

 「助けて」と叫べば、必ず駆けつけてくれる。何もできない自分を毎回叱ってくれる上に、「お前にいいところがあるとすれば、とっさに動けるところ」と小さな部分を認めてくれる。「誰だお前?」と言いながら、5年前のこともしっかり覚えてくれている。そんな天堂に、七瀬が惚れ直さないわけがない。

 天堂の「ド新人」「岩石」「この仕事向いてない」「実害出す前に消えろ」などなど、今のご時世ヒヤリとしてしまうドSな言動にも、何やら理由がありそうだ。来生が「勇者が魔王を倒すところが見たい」というのは、決して興味本位なだけではなく、七瀬なら天堂から消えた笑顔を取り戻せるのではという期待からだろう。天堂の抱える過去と向き合うことが、魔王の真の姿に近づくキーとなりそうだ。

 ……と、普通の女の子が、ワケありドS王子に恋をして、周囲のやさしい人たちに囲まれて、恋に仕事に体当たりで成長していく本作。近年、テレビでこれほどわかりやすいラブコメドラマは少なくなった気がする。主人公がどこか息苦しさを感じていたり、周囲に毒の強い人がいたりと、恋にまっすぐにひた走る以前の物語が増えているような。

 それは、私たちが生きる現実がそれだけ複雑にこじれているからなのかもしれない。どこか冷ややかな眼差しで、斜に構えて生きていくほうが、省エネで、傷つかずに済むからだろうか。誰かを好きになって必死になることが、かつては「王道」と呼ばれていたが、今の私たちにとっては「ファンタジー」でしかないのかもしれない。

 「助けてください」なんて言えない自己責任の時代。新人を「バカ」なんて叱れない、人の恋愛に口を出せないハラスメントの時代。多様性を認め合おうとしながら、今逆に距離を取りすぎて、人とぶつかることそのものが少なくなっているのだとしたら。この作品は、もう一度王道の胸キュンを取り戻そうという挑戦作なのかもしれない。凝ったパンをいろいろ食べてきて、王道のクリームパンの美味しさに気づくように……。

(文=佐藤結衣)

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