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10-FEET TAKUMAが語る、コロナ以降の『京都大作戦』とライブハウス 「いいものに変わる日まで腐らず生きていく」

リアルサウンド

20/5/21(木) 12:00

 コロナ禍における音楽文化の現状、そしてこれからについて考えるリアルサウンドの特集企画『「コロナ以降」のカルチャー 音楽の将来のためにできること』。第2回は、『京都大作戦』を主催する10-FEETより、TAKUMA(Vo/Gt)へのインタビューを行った。ライブやイベントの延期・中止が相次ぐ中で、本来なら7月4日、5日に開催予定だった『京都大作戦2020~それぞれの一番 目指しな祭~』も中止が発表された。過去にも災害による中止や中断、それに伴う対策強化を積み重ねてきた歴史があるとはいえ、今回のパンデミックは本当に予測不能で頭を悩ませる出来事だっただろう。どのような過程で決断に至ったのか、これからもフェスやライブハウスで楽しむために何をすべきなのか、10-FEETの今後はどうなっていくのかーー様々な角度から、音楽とライブの未来について率直な想いを伺った。出口の見えない日々でも、決して希望がないわけではない。ロックバンドを愛するすべての人にじっくりと読んでほしい。(5月6日取材/編集部)

「いろんな想いも木っ端微塵だった」

ーー様々なイベントが中止になっている最中ですけど、今はどのように過ごしていますか。

TAKUMA:曲を作ったりしてますね。あとはあまりできてなかったブログを更新したりとか。こもって作業すること自体は嫌いじゃないんで、熱中してる時は自粛ってことを忘れられる瞬間もあるんですけど、やっぱりふとした時に窮屈だなって思ったり、ニュースを見てるだけでガクッと落ちてしまう瞬間はどうしてもありますね。ここまでくると、みんなのライブや音楽に対する情熱とか記憶が薄れていくんじゃないかなと思うことすらあるんです。それくらい衣食住のストレスが多かったり、生活に制限がありますから。音楽やライブが好きな人はいつまでも情熱を持ってくれてるやろうし、僕もそうやって信じてるんですけど、もしかしたらライブがないことに慣れたり、記憶が薄れたりするのかもしれないって思うと、「やっぱりライブっていいよな」って再燃してもらえるように、オンラインでもできる限りの熱量を伝えていこうって思ってます。

(関連:10-FEET『京都大作戦』が生み出す“忘れられない瞬間” 2017年開催を振り返る

ーーTAKUMAさんも弾き語り動画をアップしたり、映像コンテンツをたくさん載せていると思うんですが、そういった配信ライブへの感触はいかがですか。

TAKUMA:今までは機材車に乗って全国を回りながら、寝不足で体が痛くて、飯もあんまり食えないスケジュールとかでツアーを続けてきたので、やっぱりそういう分だけ人に伝わったり刺さったりしてきたんやっていう経験と自負と実感がありますから、なかなかオンライン配信に目がいかなかったんだけど、今は自分自身もいろんなライブ配信を見ていて救われたり、現場でやってた感覚を思い出したりすることもあるんで、前よりも親しみがあるというか。現場の熱量に勝るものはないと思うんですけど、「配信だから伝わらない」とは一概には言えないのかなって、今やから言える部分もあるかなと思いますね。

ーーそういった状況の曲作りでは、どんなことを考えていますか。

TAKUMA:激しい曲でもゆっくりな曲でも、楽曲ができる時ってストーリーがあると思うんですよね。なんでそういう気持ちになったのかを掘り下げていったら、単純にずっと激しい曲をやってたからゆっくりな曲を作ったのかなとか、コロナで自粛が続いてたから外に出て大暴れしてるような曲を作ったのかなとか、どの曲もストーリーを感じて聴いてくれる人が多いと思っていて、自分もそうなんです。大好きなMetallicaを聴いててもそういうことを感じるし、オンライン云々っていうのを一旦置いといたとしても、こういう寂しい時に音楽を聴いたらすごく沁みるし、それがその音楽とのストーリーになると思うんです。大変な時期に音楽をやったら残るんじゃないのっていう打算的なことよりも、今は音楽をしたい、音楽を聴きたいという欲求がすごく強いなと純粋に感じてるんで、YouTubeとか、できることの中からより良く伝えられる方法を探し出して音楽やりたいって思ってますね。「あの時はしんどかったな。お疲れさん!」って言い合ってどこかの場面で歌えるようになったら、それはそれで嬉しいですし、僕自身もしんどい時期に作った曲が思い出深いものになったりしてきましたから、曲のストーリーが続いていったらいいなと思います。

ーーわかりました。では『京都大作戦』の話も伺わせてください。今年の開催中止がHPやSNSで発表されたのが4月24日でした。本当に断腸の思いがあっての中止の決断だったと思うのですが、発表のプロセス自体はどういう流れで進んでいったんでしょうか。

TAKUMA:完全な中止にするのか、それとも部分的に何かやろうとするのか、いろんな話はあったんですけど、最終的にはいろんな想いも木っ端微塵でした。音楽イベントだけでなく『京都大作戦』の日程より後のイベントとか、より規模の大きいイベントもどんどん中止になっていく中で、「中止だけはやめてください」「せめて延期に」「なんとか部分的にも開催してください」とか、想いのあるありがたい意見もたくさんもらったんですけど、「おい、まだやろうとしてんのか」「他のイベントが中止なのにできると思ってんのか」とか、そういう意見も出てくるわけで……コロナウイルスが命に関わる病気やから当たり前なんですけどね。そんな中でも、周りの意見や世の中の動向だけで判断せず、知恵も勇気も出し合ってちゃんと自分たちで決めていきたいので、なんとか開催できないかをメンバーもスタッフも全力で話し合ったんですけど、日が経つごとにどんどんニュースの内容が変わったり、大きいイベントとか友達のイベントが中止の発表をしたり、どんどん状況が変わっていってたので、いろんな理由が重なって無理かなという判断になっていきました。

ーー出演予定だったミュージシャンやライブ関係者からの反応はいかがでしたか。

TAKUMA:Dragon Ashの建志(Kj/降谷建志)からはすごいスピードで返信が来ましたね。僕らはスタッフ同士も仲良いし、情報出しの関係もあるんで先に窓口のスタッフさんに伝えてたんですけど、そこから建志も聞いてくれたらしく、「もう知ってんのか!」っていうタイミングで連絡くれました。「これは仕方がない。また来年一緒に頑張ろうよ」って言ってくれたのは嬉しかったな。でもね、今回はあまりにも中止要因が圧倒的すぎて、悔しいっていうよりも手に負えなかった感じなんですよ。もちろんめちゃくちゃ悔しいですけど、みんなの感覚としてもどうしようもなかったというか。

「ライブハウスはバンドマンを育ててくれる場所」

ーー主催者としては『京都大作戦』中止によって今一番頭を悩ませてるのはどういう問題でしょうか。

TAKUMA:ブログにも書いたんですけど、自然災害じゃなくて、疫病による中止っていうのは保険適用にならないんですね。その損失って想像できないような金額やったりするし、もっと大きいイベントや、準備や設営が完了しているイベントやったら何億円もの損失だと思うんです。仲間がやってるライブハウスのイベントやツアーとかでも何千万もかかったりしているレベルなので。ただ、例えばフェスやったら、グッズ販売とかで少し補填を効かせられるし、認知度と規模が大きい分、そういう情報が伝わる分母も大きいと思うんですよ。それでもしんどいことに変わりないんですけど、やっぱり周りを見た時に、ライブハウスの方が圧倒的にダメージが大きいというか。フェスって、Tシャツとかグッズを買うことも、ライブの次に醍醐味の一つになってるものやと思うんですけど、ライブハウスに行ってもそのライブハウスのTシャツとかグッズを買う場所だっていう認識がそこまでないと思うんですよ。クラウドファンディングもあると言えばありますけど、ライブハウスってなかなか補填を効かせられる手段が少ないんですよね。だから『京都大作戦』の損害どうこうより、ライブハウスの方に意識が行ってることが多いかもしれないです。

ーーなるほど。

TAKUMA:ライブハウスの人たちって何かを売って儲けるというよりは、すげえライブを作るプロフェッショナル集団だし、そこにこだわりを持ってる人たちだから、こういう時にリスクを背負うことになってしまうというか……そもそもライブハウスは街中にあることが多いんで、家賃がすごく高いケースがほとんどで、人件費もありますから、日頃調子いい時でもそんなにガッポガッポ儲けてるわけじゃないんですよ。それでもやるっていう気合の入った人らが元々ライブハウスをやってくれてるんで、僕らはそういうところに育ててもらって恩恵を受けてるなってすごく思うし、何かできへんかなって毎日模索してます。ほんまにすごいところ、もう道場なんですよね。男塾みたいなところだから、バンドやってる人からしたら学校と同じぐらい大事な場所ですし、そんな人らがやってるライブハウスがないと、こんなにバンドマンがたくさんフェスに出れるようになってなかったと思うんで。

ーー本当にそう思います。中には、家にいても曲を聴くことができるから、ライブハウスがなくても困らないっていう意見も一定数あると思うんですよ。でも、ライブハウスってただ単にでき上がった曲を披露する場所じゃなくて、若手アーティストが育っていく場所だったり、曲が生まれるために必要不可欠な場所だと思うんですよね。今家で聴いてるその曲も、今好きなアーティストも、ライブハウスがなかったら生まれてきていないかもしれないっていう、そういう認識が世の中に意外と少ないんじゃないかなと思っていて。ライブハウスがないと音楽は生まれてこないっていうことがもっと理解されたらいいなって、お話を聞いていて思いました。

TAKUMA:本当にそうやと思います。美味しいお米もね、素晴らしい農家がいるから食べられてるわけで。ライブハウスって、ほんまにそういう風にバンドマンを育ててくれてる場所なんです。そういうところから出てきたすごいバンドを見て、次の世代が続いてきて今があるわけですし。応援したくなるようなライブハウスのストーリーをもっと伝えていけたらいいんですけどね。

ーーライブハウスが続いていくために、TAKUMAさんは今どんな施策が必要だと感じますか。

TAKUMA:グッズ販売とか投げ銭ライブもいいと思うんですけど、ライブハウスのスタッフもバンドマンも、ビジネスをやっていく上でお金だけを追求している人ってそこまでいない気がするんですよね。まずはお金に着目しないような、すっげえもんを作ろうとしている人がいるから素晴らしいアーティストが輩出されてきてるわけであって。だから、こういうお金がなくなってピンチになった時に、上手いことぽんぽんアイデアが出る人って意外といないんで、そういう分野で活躍してる人に入ってコンサルティングしてもらうだとか、ウェブやオンラインに詳しい人も入れて、思いもよらぬシステムとかインフラを作っていくとか、そういう意見にももっと耳を傾けていった方がいいんじゃないかなって思うことはあります。

ーーこれまでのライブハウスの常識では考えられなかったことも必要になるかもしれないと。

TAKUMA:まあこういう進言って難しいんですけどね。一番理想的なのはやっぱり音楽人同士だけで、名案を出してやっていけたらいいなとは思うし、そういう人やったらみんながライブハウスから足が遠のくようなプランを立てないと思うんですよ。そんなこととっくにやってるよって言われるかもしれへんけど、それくらい根本的なところから「その発想なかったな!」って思えるような叩き台をたくさん用意して、知恵を出し合った方がいいんじゃないかなって思います。「最後には現場のライブが勝つから!」って思う人がそういうことをやっていったら、いい手法を見つけてくれるんじゃないかな。

「思い浮かぶのは、お客さんの姿や声」

ーー『京都大作戦』については、来年以降開催するためにどんな施策が必要だと考えますか。

TAKUMA:今まで通りできる状況が一番の望みやし、そのために全力で取り組んでいきますね。でもこればっかりは本当にわからないんで、無観客でしかやりようがないってなったら、最善の策としてやるかもしれないです。ライブハウスもこれからはキャパ設定を半分にしてくださいって言われるかもしれないし、それが『京都大作戦』に適用されないとは限らないですよね。こういうことってあまり言いたくないんですけど……例えば、お客さんの数を半分にして、スペースを開けてあまり密着せんように楽しんでもらって、あと半分の人にはオンラインで楽しんでもらう特別なコンテンツを提供できるようにするとか。そういう局面になって欲しくないですけど、オンラインでも生でも、両方に感動があることを考えていかないといけないのかなと。半分は配信で見てくれたら十分だよっていう感覚が、自分たちに宿る時代も来るかもしれないですから。

ーー『京都大作戦』は初年度が台風により中止でしたが、そこから10年以上続いてきて様々なフェス運営のノウハウを積まれてきたと思うんです。災害時の雨対策はもちろん、お客さんのキャパシティに配慮してきた歴史もあると思うんですけど、長年やってきたから大丈夫だっていう感覚や自信があるのか、あるいはこれからを考えると不安の方が圧倒的に大きいのか。率直なお気持ちで構わないので、どう感じていますか。

TAKUMA:うーん……一旦収束しても再燃するのか、また次のシーズンもインフルエンザみたいに形を変えながら出てくるのか、わからないことだらけな未知のウイルスやないですか。こんだけ日に日に状況が変わってきているんで、なんとも言えないところはありますけど、『京都大作戦』に関して言えば、なんとなく今まで通りに戻るんじゃないかっていうイメージは不思議とありますね。こういう時に思い浮かぶのって、仲間のバンドが作ってくれた素晴らしいシーンでもなく、10-FEETのライブの名シーンでもなくて、お客さんの姿とか声とか、客席のあの雰囲気なんですよね。お客さんが「うおー!」ってなってる場面が頭に浮かんで、またあの『京都大作戦』に戻るんやろうなって思えるんです。もちろん僕たちがきちっと準備して開催しなくちゃいけないんですけど、最後はお客さんみんなが戻してくれるんじゃないかな……なんとなく、そんな気がしてます。

ーー2月末から全国的にライブが自粛になって、チケット払い戻しのアナウンスが一斉に出はじめた時に、「そのせいで事務所が潰れちゃうんだったら、払い戻しなんてしなくていいから」という声が本当にたくさん聞こえてきて。アーティストとファンの信頼関係というか、金銭を超えた音楽愛の強さを感じた瞬間でした。

TAKUMA:ほんまにすごいことやと思いますよ。「金返せ!」って言われるのが普通のシチュエーションですからね。その権利はあるから当然返しますけど、みんな、ほんまにアツいですよね。

ーーそれって音楽だからなのかもしれないですよね。形がないものだからこそ、ずっと存在していて欲しいっていう想いもより強い気がしていて。

TAKUMA:たしかに。海外はわからんけど、日本のロックのお客さんってほんまにそうだと思う。たまにSNSとか見てても、「今日の〇〇のライブヘボかったな。まあこんな日もあるよな。次また!」とか言って、それでも「次行くぞ!」ってなってるじゃないですか。飲食店だと、いきなり知らんとこ入って不味かったらもう行かないですよね。でもロックの場合、お客さんが激アツですから。めちゃくちゃかっこいいですよね。

ーーロックバンドのライブって、きっといい時も悪い時もあるからこそ、その人間らしさに惹かれるんですよね。あまりよくない時があったとしても、その次に100点満点で1000点ぐらいのライブをする瞬間もありますし、その両方があるからこそロックバンドに夢中になれると思うんです。

TAKUMA:ほんまに同意です。ドンズバですよ。

10-FEETのこれから

ーー初開催以降、『京都大作戦』と10-FEETの歩みはともにあったと思うんですけど、こうしたイレギュラーな中止を受けて、10-FEETのこれからの活動にはどういう影響があると思いますか。

TAKUMA:何もプランはないですけど、ライブの中身自体はよくなると思います。っていうのは、これまでライブをたくさんしてきましたけど、もはや「ライブやりたいからやろう」なんて言わないんですよね、当たり前すぎて。ライブっていうものがパンツみたいになってたんです。「パンツ履こう、俺」ってみんないちいち言わないじゃないですか(笑)。それが今は、「ああ、パンツ履きてえ!」っていうシチュエーションに初めてなったんじゃないかな。リハーサルも練習もライブもそれぐらい期間が空いてるから、「10-FEETやりたい」「ライブやりたい」と純粋に思っていて、それってまさにバンドやり始めた時の気持ちなんですよ。そういう時のライブって悪くなるわけがないと思っていてーーまあブランクある分ヘボいかもしれへんけど(笑)、何かしら突き抜けるんちゃうかなと思ってるし、それくらい今はライブがしたいし、バンドしたいからね。そのチャンスが来たらちゃんと感覚を掴み取れるように、家で曲作ったり、ギター弾いたり歌ったりっていうのは、なるべくしてたいなって思ってます。

ーーポジティブな気持ちを聴けて嬉しいです。『京都大作戦』初回が中止になった2007年って、TAKUMAさんの喉の不調で10-FEETのツアー自体も延期になった年だったんですよね。NAOKIさんがインタビューで「初めて10-FEETが止まった瞬間だった」と言ってたんですけど、その時の気持ちを今思い出したりしますか。

TAKUMA:あの時はね、違う意味で余裕がなかったかな。お医者さん曰く、聴いてる人はわからんレベルで回復したよとか言うんですけど、明らかに声が変わったのが自分ではわかったから、もう同じ声が出えへんかもって絶望していて。ずっと精神的にきてたんですよね。で、『京都大作戦』が中止になってしまったことで、休み明け1発目のライブが『ライジングサン』(RISING SUN ROCK FESTIVAL)やったんですけど、その直前も「大丈夫かな、大丈夫かな」ってずっと思ってて。

ーー不安だらけだったんですね。

TAKUMA:実際始まってみたらめっちゃ楽しかったんですけどね(笑)。コロナ禍が収束してライブができるようになったら、同じ気持ちになるかもしれないです。

ーー過去と今がリンクするのは楽曲にもあるんじゃないかと思って、例えば「OVERCOME」の〈この世界の不治の病を 全部ぶっ壊してやりたいよ〉という歌詞が、今の社会にすごく響くものになってると思うんです。MVのコメント欄に「コロナに負けない」ってコメントしている方がいたりとか。

TAKUMA:そうなんや……! 昔からなんですけど、病にかかってしまうことに対して、イメージがすごく深いところまでいってしまうことがあって。そういう強迫観念で、自分も重い病気にかかってるんじゃないかって思ってしまったこともあるんですけど、その時に「こんなに不安と闘ってる人が世の中にはいるんや」っていうことに気づいて、その気持ちをわかってくれるような音楽があったらいいなと思ったんです。病気と闘ってる人のブログを見たり、10代の子が余命数カ月で闘ってる姿をたくさん見て、俺ええ年して何やってんねん……とか思ったりね。〈不治の病を 全部ぶっ壊してやりたいよ〉なんて、はっきり言って音楽的には歌詞心が全然ないし、そのまんま素直に歌ってるだけなんですけど、なんか急にそういうダサくて工夫がなさすぎるものへの気持ちが、あの時は勝ったんですよね。

ーー今10-FEETの新曲を作ったら、そういうメッセージが際立つものを作りそうだなっていう感覚もありますか。

TAKUMA:それも半々じゃないですかね。パッパラパーでアホな曲を書く可能性も50%ぐらいある気はするし、今の心境のまま歌詞をとことん大事にした曲ができるかもしれないし。どっちにしても、何かしらのバロメーターがドーンと突き抜けてる曲を作りたいなと思います。

ーーTAKUMAさんが作る楽曲の根底に感じるのは、悲しみは消すことはできないけど、悲しみをちゃんと明日の楽しみの糧にしていこうっていうことなんです。ライブでおっしゃったこともあると思うんですけど、世界中が悲しみで溢れている今、音楽にできることの可能性を感じたりしていますか。

TAKUMA:もはや音楽というより、一人一人がそうなっていかなくちゃいけないと思うし、悲しいことも辛いことも、「あの時があったから今がある」っていう風に変えていかなくちゃいけないんですよね。僕も、それができて初めて深みのある音楽に結びついていくと思いますし、飲食店してる人も、建築やってる人も、工場で働いてる人も、先生やってる人も、みんな一緒やと思うんですよね。それぞれの分野で、取り組み方とか、周りの人に投げかける言葉の内容がより深いものになっていくんじゃないかなって。だから、悲しいことを乗り越えていいものに変わる日まで、生きていかなあかんなと思います。腐らず生きていけたら、そうなっていくと思うんですよね。

ーーありがとうございます。最後に、コロナ禍の状況の中で、ライブを楽しみにしている人たち、音楽を愛する人たちに声をかけるとしたら、どんな言葉になりますか。

TAKUMA:俺もどうしたらいいのかわかんないんで、一緒に考えよう、ですね。でも、“ライブ”は絶対戻ってくるよ。本当にそう思ってます。
(信太卓実)

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