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赤ずきんが川でシンデレラと出会う探偵ミステリーとは? 文芸週間ランキングに“続編”が多数ランクイン

リアルサウンド

21/3/17(水) 9:00

週間ベストセラー【単行本 文芸書ランキング】(3月2日トーハン調べ)

1位 『推し、燃ゆ』宇佐見りん 河出書房新社
2位 『元彼の遺言状』新川帆立 宝島社
3位 『陰の実力者になりたくて!(4)』逢沢大介/東西 イラスト KADOKAWA
4位 『心淋し川』西條奈加 集英社
5位 『オムニバス』誉田哲也 光文社
6位 『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』青柳碧人 双葉社
7位 『何がおかしい 新装版』佐藤愛子 中央公論新社
8位 『麦本三歩の好きなもの 第二集』住野よる 幻冬舎
9位 『春菜ちゃん、がんばる? フェアリーテイル・クロニクル(4)』埴輪星人/ricci イラスト KADOKAWA
10位 『転生少女はまず一歩からはじめたい(2) 魔物がいるとか聞いてない!』カヤ/那流 イラスト KADOKAWA

 3月第1週の文芸書ランキング、1位は累計47万部突破と快進撃を続け、芥川賞受賞に続き本屋大賞にもノミネートされた『推し、燃ゆ』(宇佐見りん)。続く2位は発売からわずか1カ月半で18万部を突破した『元彼の遺言状』(新川帆立)。デビュー作『かか』で三島由紀夫賞を最年少受賞した宇佐見は、現在21歳の新鋭。新川は東京大学法学部を卒業後、24歳で司法試験に合格した現役弁護士、しかもプロ雀士の資格ももっており、両者ともにその経歴にも注目を集めているが、書店員にも熱烈に支持され続けているのは、ただひたすら作品が「おもしろい」からだ。

 「おもしろい」は理屈抜きで人を惹きつける。「どうしてこれほどまでに売れているのか?」「どうしたら売れるのか?」と考えるのは商売の基本で、分析すればさまざまな角度からもっともらしい理由はあがってくるのだけれど、あまりに心を揺さぶられる作品に出会うと、「ごちゃごちゃうるせー! おもしろいもんはただおもしろいんだよ!」と言いたくなってしまう。

 6位にランクインした青柳碧人『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』もそうした小説のひとつ。刊行されたのは昨年の8月なのだが、2月28日放送の情報バラエティ『シューイチ』で、読書好きで知られる芸人のカズレーザーが「めちゃくちゃクオリティーの高いミステリー」と紹介したことで一気にブレイク。……したように見えるが、たぶん実は、そうじゃない。もちろん大きなきっかけではあったろうが、芸能人のおすすめなんてわかりやすい契機がなくとも、遅かれ早かれ注目されて、ランクインしていたに違いない。

 同作は2019年4月に刊行された『むかしむかしあるところに死体がありました。』に続く昔話ミステリーの第2弾。2020年の本屋大賞にノミネートされたことをきっかけに、約1年を経て昨年もランクイン。2020年12月にはなんと第26刷重版を果たしている。常に、新しい誰かが「おもしろそう」と惹きつけられて、手をのばしているということだ。

 「一寸法師」や「花咲じいさん」「つるの恩返し」といった誰もが知る昔話に、突如として殺人事件が起きて本格的なミステリーに変わるというのだから、興味をもつなというほうが無理だろう。そして西洋童話を下敷きにした『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』では、同じ読み心地を想定して読みはじめた読者をいい意味で思いきり裏切ってくれる。

 冒頭、主人公の赤ずきんは川でシンデレラと出会い、ふたりそろって魔法使いの手によりドレスアップを果たし、ともに舞踏会へ向かうのだけれど、その道中、カボチャの馬車で男を轢き殺してしまうのである。実は男は、轢かれる前からすでに死んでいて、赤ずきんは身の潔白を証明するためにも事件の謎を追うのだが……。それぞれの昔話が独立していた前作と違って、本作は「名探偵・赤ずきん」の物語なのである。

 この設定で、おもしろくならないわけがない。しかも作者は、累計60万部の数学ミステリー『浜村渚の計算ノート』シリーズを筆頭に、キャラクターがいきいきと活躍するミステリーを書き続けてきた青柳だ。昔話の筋を逸脱しながら、たとえばシンデレラに登場する王子が死体愛好家の一面を垣間見せるなど、元ネタがちゃんと隅々まで散りばめられているのも、魅力的である。というわけで、新エピソードを掲載した期間限定カバーが巻かれているうちに、未読の方はぜひとも手にとっていただきたい。

 そもそも「シリーズ」になることじたいが、続編を渇望する読者がいるおもしろさの証である。累計488万部突破の姫川玲子シリーズ最新作である誉田哲也の『オムニバス』。BiSHのモモコグミカンパニーをジャケットにコンピレーションCDまで発売された、住野よるの『麦本三歩の好きなもの 第二集』。既刊とともに書店に並ぶシリーズ新作の刊行は、これまで触れたことのない「おもしろい」に出会うまたとないチャンスでもある。ぜひ触手の動く「続編」を探してみてほしい。

■立花もも
1984年、愛知県生まれ。ライター。ダ・ヴィンチ編集部勤務を経て、フリーランスに。文芸・エンタメを中心に執筆。橘もも名義で小説執筆も行う。

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