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能をモチーフに“鎮魂”を描く、岡田利規「NO THEATER」日本初演が開幕

ナタリー

18/7/6(金) 20:29

ミュンヘン・カンマーシュピーレ「NO THEATER」ゲネプロより。(撮影:井上嘉和)

チェルフィッチュの岡田利規が作・演出を手がける「NO THEATER」が、本日7月6日に京都・ロームシアター京都 サウスホールで開幕。これに先駆け、昨日5日にゲネプロが行われた。

「NO THEATER」は、昨年2017年にドイツ・ミュンヘンの公立劇場であるカンマーシュピーレ劇場のレパートリーとして上演された作品。能の様式を用いて、資本主義に飲み込まれていく現代日本のとある場面を切り取った本作では、カンマーシュピーレ劇場専属の俳優が日本人役を演じ、音楽を現代音楽家の内橋和久が担当する。また日本初演となる京都公演には、カンマーシュピーレ劇場専属の俳優陣に加え、15人のキャストがエキストラとして出演。なお今回の公演は、英語および日本語字幕付きでドイツ語で上演される。

日本の地下鉄の駅のプラットホームを彷彿とさせる精巧な舞台美術の中には、ホームドアやベンチ、4本の大きな柱、2つの階段が設置され、舞台奥に据えられた階段の間には、大きな盆栽の映像が投影された。また舞台の中央部は内橋の演奏スペースとなっている。

本作では、主に六本木駅と都庁前駅の様子が描かれ、六本木駅のシーンには、地下鉄に乗って彷徨する青年や、金融ディーラーの男性、駅員といった人物が登場。彼らが現代日本の経済をテーマとした対話を繰り広げる中、内橋はドイツの音楽家ハンス・ライヒェルが発明した楽器・ダクソフォンを用いて、人間の叫び、呼吸にも似た音色を即興的に奏でる。また能の謡のように、内橋のメロディに乗せて俳優がセリフを話す一幕も。

一方、都庁前駅の場面には、地方都市から東京にやって来た青年や、舞台女優をやっているという女性、都庁前に佇む女性、駅員らが登場。こちらのシーンでは、フェミニズムを主題とした会話が交わされ、内橋のオリジナル楽器であるレゾナントハープギターが、雪が降りしきる都庁前の情景を繊細な音で彩った。

また今回の作品には、13年上演のチェルフィッチュ「地面と床」や、16年の「部屋に流れる時間の旅」などでも描かれた“幽霊”というモチーフがちりばめられており、「“魂”を鎮める」というテーマが徐々に浮き彫りになっていく。

ゲネプロ後、取材に応じた岡田は「能というフォーマットを使うことによって、客観的な作品になったと思います」とコメント。さらに「良いことなのか、悪いことかわからないけれど」と前置きしつつ、「日本で上演するために作ったんじゃないかと思ってしまうくらいの作品になりました。まだ日本のお客さんの前でやっていないからわからないけれど、“何か”になるんじゃないかという気がしています」と手応えを語った。上演時間は約1時間45分。公演は7月8日まで。

ミュンヘン・カンマーシュピーレ「NO THEATER」

2018年7月6日(金)~8日(日)
京都府 ロームシアター京都 サウスホール

作・演出:岡田利規
音楽・演奏:内橋和久
翻訳:アンドレアス・レーゲルスベルガー
出演:マヤ・ベックマン、アンナ・ドレクスラー、トーマス・ハウザー、イェレーナ・クルジッチ、シュテファン・メルキ ほか

※「NO THEATER」の「O」は長音記号付きが正式表記。

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