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安田レイ、milet、Uru……ドラマを彩る女性シンガー 共通点はトレンドだけで語れない実力

リアルサウンド

21/3/4(木) 12:00

 今、注目を集めている話題のドラマ挿入歌がある。毎週日曜、22時30分から放送中の日本テレビ×Hulu共同製作連続ドラマ『君と世界が終わる日に』の挿入歌、安田レイ「Not the End」だ。このドラマと挿入歌のマッチング、そしてなんと言っても流れるタイミングが抜群に素晴らしいのだ。ドラマは、未知のウイルスに感染した人間がソンビ化し人を襲い、ソンビ化を免れた人間同士でさえも争いが起こるというサバイバルヒューマンドラマ。その中で人はどう生存していくのか、どう人間で在ることを維持していくのかが描かれていく物語。初回放送終了後からSNSでは「救いがなさすぎる」「今の世界に重なって、見ているのが辛い」という赤裸々な感想が目立っていた。しかし放送回を重ねるにつれ「絶望の中でも支え合える人がいるのが救い」「諦めない姿に勇気をもらえる」といった意見も徐々に増えていった。この変化には、ストーリーと音楽の親和性が影響していると思う。その証拠にドラマ放送終了後、YouTubeで公開されている安田レイ「Not the End」MVのコメント欄に次々とドラマの感想コメントが寄せられている。2月28日に放送された第7話では、こんなシーンとともに「Not the End」が流れた。

 ゴーレムウイルスに感染した大切な仲間を救うため、治験中のワクチンを手に入れようとする主人公・響(竹内涼真)が、傷を負いながらも仲間の元へ向かう。サビの〈Don’t say bye bye bye   この手は繋ぎ合うため〉というフレーズも含め、ミディアムバラードの楽曲の世界が、見事に映像とリンクしていた。

 ここ数年、テレビドラマ主題歌などへの起用をきっかけに先に歌声を認知され、その実力で世に名を馳せ、音楽シーンにしっかりと定着する女性シンガーが出てきた。最近で言えば、前述した安田レイ、milet、Uruなどが挙げられるだろう。

 安田レイは、英語と日本語が堪能なバイリンガル。先日発売されたばかりの「Not the End」は、彼女の15枚目のシングルだが、驚くのは、これまで全シングル曲を含め、29曲がタイアップに起用されていることである。そのジャンルも実に幅広いが、とりわけ今回の「Not the End」は注目度が高い。この結果は、それだけ彼女の歌声がマジョリティなものである証拠とも言えるだろう。彼女の歌声の魅力は、異なるファクターをワンフレーズで聴き手に感じさせるところだと思う。例えば、儚さと力強さ、孤独と包容力など。さらに、意識的にか無意識かはおいておいても、言葉の発音により声音までも変えられるところも、他人にはなかなか真似できない大きな武器だろう。

 miletを世の中に浸透させたのは、2019年の日本テレビ系連続ドラマ『偽装不倫』の主題歌に起用された「us」だろう。楽曲により、異なる表情を見せる彼女の歌声は、包容力というよりはつい引き付けられるような吸引力を持っている。1曲の中に、声だけで陽と陰のコントラストが感じられるのも個性だ。

 Uruは、ドラマ『コウノドリ』主題歌「奇蹟」、ドラマ『中学聖日記』主題歌「プロローグ」で認知されると、2020年“日曜劇場”として放送された『テセウスの船』(全てTBS系)で主題歌「あなたがいることで」を担当し、知名度を一気に上げた。彼女の歌声は、声質はクリアで優しいが喉の反響がドシンと響く珍しいパターンだ。何といってもその魅力は倍音のバランスだろう。低音、中低音、高音……と、水面に水滴の輪が広がるように綺麗な倍音を響かせることが出来る。繊細に囁くように歌うパートでも、倍音が響くのである。

 安田レイ、milet、Uruは、万人が認めるほど歌が巧い。しかも3人とも、ただ巧いのではなく、自分の声質を理解し、歌声を……もっと言ってしまえば言葉の発し方そのものまでも、しっかりコントロールしている。3人に共通するテクニックは、例えば、アップダウンの激しいメロディを滑らかに聴かせるファルセットを使ったアプローチ、サビと高音だけで勝負しようとしない、声を張るロングトーンを多用しない、喉を開きながらも息を潜めるように歌う低音、英語と日本語が混ざっていても語感に差異が感じられない歌詞などである。

 これらのテクニックは、宇多田ヒカルの登場が大きく影響しているのではなかろうか。彼女が登場するまでの日本の音楽シーンにおいて“歌がうまい女性ボーカル”の定義は、高音がスコーンと突き抜け、繊細なニュアンスよりも声量で勝負するような傾向にあったと思う。それが宇多田ヒカルの登場と活躍により、新たな定義が加わったのだ。ニュアンスや表現力の重視である。そして今、ニュアンスや表現力で聴かせることの出来る女性ボーカリストが、音楽シーンに出揃ってきた。

 音楽だけに限らず、すべてのジャンルにおいて、トレンドの変遷が急速化している昨今。それに伴いトレンドの細分化もスピードを増している感があるが、安田レイ、milet、Uruには、トレンドだけでは語れない実力が備わっている。

■伊藤亜希
ライター。編集。アーティストサイトの企画・制作。喜んだり、落ち込んだり、切なくなったり、お酒を飲んだりしてると、勝手に脳内BGMが流れ出す幸せな日々。旦那と小さなイタリアンバル(新中野駅から徒歩2分)始めました。
Piccolo 266 インスタグラム(@piccolo266)

■リリース情報
安田レイ『Not the End』
2月24日(水)CD発売
2月7日(日)先行配信スタート
初回盤:CD+Blu-ray Disc  1,800円+税
 <Blu-ray収録内容>
・「Not the End」Music Video
・「Not the End」Behind The Scenes

通常盤:CD 1,200円+税 
<収録曲>
M1.「Not the End」
(日本×Hulu 共同製作ドラマ「君と世界が終わる日に」挿入歌)
M2.「amber」
(映画「おもいで写眞」主題歌)
M3.「Not the End -piano ver.-」
M4.「Not the End -Instrrumental-」
M5.「amber -Instrumental-」

■番組概要
日本テレビ×Hulu共同製作ドラマ『君と世界が終わる日に』
放送日時:1月17日スタート 毎週(日)22時30分~放送
<キャスト>
竹内涼真 中条あやみ 笠松将  飯豊まりえ  マキタスポーツ  安藤玉恵  キム・ジェヒョン  横溝菜帆/ 大谷亮平  笹野高史  滝藤賢一
ⒸNTV/HJホールディングス

■関連リンク
安田レイ オフィシャルサイト
安田レイ オフィシャル Instagram
安田レイ オフィシャル Twitter
安田レイ Official YouTube Channel

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