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いま、最高の一本に出会える

BiSが地下アイドルに与えた衝撃(後編) 姫乃たまがテラシマユフとの出会いを振り返る

リアルサウンド

14/7/27(日) 8:00

 BiS1stシングル「My Ixxx」のPVで「全裸で樹海を駆けるアイドル」として話題になる頃、私は周囲の人たちから、しきりにBiSを勧められていました。当時の私が、よくアングラ系のイベントで歌っていたせいかもしれません。過激なパフォーマンスが好きな人だと思われていたのでしょう。勧められるがまま観た全裸PVからは、これで話題になってのし上がるぞという本人たちの気概と、それを叶えるのに充分な周囲の環境を感じました。

 私は地下アイドルの面白さを「アイドルなのに奇抜なことをする」という姿勢にあると考えています。当時はその考えが今よりもずっと強く、偏っていました。奇抜なパフォーマンスは、大衆へのアンチテーゼとしてするものであり、メジャーへ行くための手段ではないと思っていたのです。そのため“全裸”と“アイドルとして売れる”を共存させようとするBiSの登場には衝撃を受けました。

 しかも、私と私の周囲の人間はこの後BiSに思いがけず衝撃を受けることとなります。それがテラシマユフ(現・寺嶋由芙)のBiS加入です。

 ソロシンガー志望だった由芙ちゃんとは、何度かライブで共演していました(アングライベントじゃないですよ)。清純でおっとりした彼女は、演者と観客の両方にとって、まさにアイドルでした。あの由芙ちゃんがスク水を着て、ライブハウスでダイブ? みんなに衝撃と疑問が走りました。私の頭の中を駆け巡ったのは、あの全裸PVです。しかし、みんなが混乱する中、私は意外な場所で由芙ちゃんと再会したのです。

 その日、私は知人の映画監督から頼まれて急遽、とある映画撮影に向かっていました。撮影は早朝なので、深谷へ終電で前乗りです。依頼人が知人のため安心していたのですが、電車に揺られている時、私はまだ、誰のなんという映画で自分が何役として呼ばれているのか知らないままでした(いま思うと危ない)。

 チェーン居酒屋すら閉店している深夜の深谷で、スタッフさんに案内されたのは暗闇に浮かぶ民家でした。真っ暗で室内はほとんど見えませんでしたが、狭い玄関には靴がひしめき合い、中では何人かの女の子が寝かされているようです。私は怖くなって民家を飛び出し、見知らぬ土地の真っ暗な駅前で夜を明かしました。あのまま大人しく寝たら、女の子たちと、どこかに売られるかもしれません(ひどい妄想)。

 夜が明けてみると本当に映画撮影なのか疑わしく思えてきたので、とりあえず真相だけでも確かめてやろうと民家にこっそり戻りました。そこにいたのは由芙ちゃんでした。これは映画「アイドル・イズ・デッド」の撮影だったのです。お互いに心底びっくりしてから、再会を喜んだあと、由芙ちゃんは「急にこんな忙しくなって、本当はゆっくり挨拶したいんですけど……みなさん、お元気ですか」と言いました。

 ちなみにその日の撮影は大幅に押したため、私の出番はありませんでした。ついぞ自分が何役なのか知らぬまま、監督にすら会えず、遠く深谷の地から下北沢まで帰りました。

 ちなみに数日後、加藤監督からは平謝りされ都内の某公園(すごく近所)で「BiSがアイドルを志すきっかけになる動画の中のアイドル役」として撮影していただきました。あれ、使われたのでしょうか。

 こんな風に書くとすごく大変だったみたいですが、深谷での撮影自体はとても楽しいものでした。由芙ちゃんと再会できたことはもちろん、実際に会うBiSのメンバーはそれこそちょっと衝撃的なくらい可愛かったのです。何より平日の早朝にもかかわらず集まっていた研究員(BiSファンの呼称)の熱さには圧倒されました(仕事はどうなっているんですか)。

 さらに、埼玉スタジアムで開催された「ぐるぐる回る2011」というフェスでBiSと共演する機会もありました。共演といっても、彼女たちは大きな野外ステージ、私は空調のきかない六畳ほどの空調室でしたけれど。

 その時に初めてBiSのテラシマユフちゃんを見ました。たくさんの研究員に見守られているユフちゃんは、ソロの時から何ひとつ変わらずに清純で凛々しく、驚きとともに誇らしいような気持ちになったのを覚えています。一方で私は空調室に照明がないというので、暗闇に懐中電灯ひとつ立ててアコースティックライブをしました。真夏の怪談でも話しださん会場で汗だくで歌っていると、BiS終わりの研究員たちがなぜか流れてきてくださって、入場規制がかかるほどでした。

 映画撮影の待ち時間に話してくださった研究員のみなさんも含め、その節はありがとうございました。嬉しかったです。

 解散ライブには行きましたよ。チケットがとても余っているというので、油断して開演ぎりぎりに行ったら、長蛇の列でした。思わぬ待ち時間に口論になってしまったのか、カップルの彼女が「もういい!じゃあ私とプー・ルイと、どっちが可愛いの!?」と叫んで泣いていました。彼氏は困ったような顔をしていました。あの日私が見た、唯一泣いている人でした。

 多くのアイドルと地下アイドルにとって共通していることがあります。それはいまの活動が通過地点であるということです。涙より汗を多く流して、華々しく次の地点へと向かうBiSと研究員が、私にはとても眩しかったです。

20140726-himeno.jpg姫乃たま。

■姫乃たま
1993年2月12日下北沢生まれの地下アイドル。2009年より都内でのライブ活動を中心に地下アイドル活動を開始、2011年よりライターとしても活動している。他に司会やDJ、イベンターなど活動は多岐にわたる。
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