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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

現代日本を泳ぐ気鋭のクリエイターに聞く「現代クリムト講座」

野村訓市とクリムトは、次代に向く

特集

第4回

19/3/23(土)

現代クリムト講座の第4回は、編集者でありながら幅広いジャンルのクリエイティブ・ディレクションを手がける野村訓市さんに話を聞きます。20代の頃に多くの識者に出会い刺激を受けてきた野村さんは、いま「若い人といるのが楽しい」と語ります。クリムトの次代への関心と重ねて考察します。

文=田尾圭一郎(ライター)

誰しもが抱えるとおり、10年も超えて働いていると「見たことのない仕事」が少しずつ減っていく。いままで知らなかったことを知ったり、新しい気付きに興奮したりする機会が減り、既視感のある、過去に経験したことに“似た”仕事が増えていく。こうしてアートに関わる仕事をしている自分にとって、アーティストと話す機会というのは、それらを打ち破り新たな刺激を得る機会として、非常に尊い時間だったりする。

去年の夏に10歳年上の写真家と3週間ほど北欧に撮影旅行に行く機会があった。それだけ年が離れていると世代観が異なるようで、好きな音楽や小説、印象深い平成の出来事といった、いわゆる価値観みたいなもののちがいを、ぼくらは旅の合間に話しながら楽しんだ。そこでぼくは(みっちりと)編集者としての姿勢やプロとしての意識、長期取材の心得といった様々なことを叱咤され、そして学んだ。彼は宮沢賢治やヨハン・ヨハンソン、原一男などの先人を引用し、その作品や業績に多くふれるよう言った。それはカラカラに乾いた毎日の仕事に潤いを与え、ぼくは貪るように吸収した。飢えていた。

その写真家が教えてくれた人物のひとりが、野村訓市だった。当時26歳だった野村が世界中を旅し様々なジャンルで活躍する80人もの人にインタビューした一冊『sputnik:whole life catalogue』(2000年)は、20年近く経ち絶版となったいまでも中古市場で高値で売買されている。写真家は、砂漠を歩くぼくに、その本を読むことを勧めてくれた。いま振り返れば、この本が乾きを癒してくれるのでは、という彼の優しさだったのだと思う。それから数ヶ月経って、ぼくは野村訓市本人に、その書籍をつくったときのことを聞く機会を得た。

「自分のキャリアを自分でつくった人たちが、どうやってそれを実現したのか。それが、当時の自分にとってはいちばん知りたいことだったんですよ。例えばグラフィティ・アーティストとかでも、格好いいとは思っているけど、本当にこの人たちって独学なのかな、とか、どこから来たんだろう、だとか。素朴な疑問。スチュアート・ブラントの『ホール・アース・カタログ』みたいに、(様々な人のインタビューを集めた)人生のカタログができたら面白いんじゃないかと思ったんです。要は、それが自分の必要なものだった」。

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