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そのとき、何を思い、何をしましたか? 第4回 それぞれの思いを胸に動き出す、劇作家、演出家、俳優、ダンサー、プロデューサーたち

ナタリー

20/5/5(火) 19:00

「そのとき、何を思い、何をしましたか?」第4回の寄稿者。

5月6日までとされていた緊急事態宣言の期限が、5月4日に5月31日まで延長された。日本では、新型コロナウイルス感染症の広がりがいまだ収まらず、予断を許さない状況だ。今や日々の景色や生活のスタイルは様変わりし、劇場も静かに再開のときを待っている。

ステージナタリーでは、さまざまな思いのもとに決断を下した舞台人たちの声を、これまで数回にわたって届けてきた。ジャンルを飛び越え、劇作家、演出家、俳優、ダンサー、舞台スタッフ、プロデューサーらが心境を明かした第1回(参照:劇作家、演出家、俳優、ダンサー、プロデューサーたちが語る | そのとき、何を思い、何をしましたか? 第1回)と第3回(参照:少しずつ前へと進む、劇作家、演出家、俳優、舞台スタッフたち | そのとき、何を思い、何をしましたか? 第3回)。そして第2回(参照:客席から舞台の明日を支える | そのとき、何を思い、何をしましたか? 第2回)では、観客が舞台を支えるための手段としてクラウドファンディングやドネーションなどを紹介した。

今回は、「そのとき、何を思い、何をしましたか?」というテーマはそのままに、この状況下で通常の劇場公演とは異なる形態の表現に挑んだ舞台人たちに焦点を当て、心の内を語ってもらった。“今、自分にできることは何か”を模索し、行動を起こした18組の思いとは。

【舞台人たちが思いをつづる】

劇場公演ではない形での創作活動を行った18組の舞台人たちが、それぞれの思いや実施後の心境を語る。

加藤拓也(劇作家・演出家 / 劇団た組)

インターネット公演「要、不急、無意味(フィクション)」をSkypeで実施

(インターネット公演「要、不急、無意味(フィクション)」を行ったのは)劇場で上演できないこと、上演しているものを中継するスタイルがいくつかのカンパニーで続いたこと、演劇を求める人々に応えようといくつかのカンパニーが過去作品の配信を行ったこと、けれどそれは普段僕たちが演劇と呼んでいるものとは違うということ、またそれを皆さん自覚のうえで行っていることから僕は改めて演劇の性質をどこに担保していて、求めて、また求められているのか等、対自分の中で再検討再定義するためです。
上演にあたって、今まで自分の中で蓄積されてきた個人的な演劇の性質を設定しようと試みました。この形での発表を経て、性質についてや、再検討再定義したもっと長めの所感を別途まとめており、その所感が僕にとっては一番重要でした。それから今後あるとすれば意識したいことは今回の形での鑑賞までの観客の導線でしょうか。劇場ではないので鑑賞するまでの導線にさまざまな可能性が残されてると思います。また、次回、この形での発表があるとするならばその導線へのアプローチをもっと試したいです。
一度取り組み終え、こういったプラットフォームでの作品には自分の求める性質は持ち込めるかもしれないし、持ち込めないかもしれません。という、まだまだ未開発な場所だということを感じました。作品の中身に良いようにも悪いようにも影響するポイントやリスク、可能性がまだ見えていないと感じました。しかし劇場公演とは明らかに違います。一緒にするべきではないです。これはこれ、それはそれです。この形式のものを何と呼ぶか、生放送のドラマや映画と何が違うのか等々は再定義の意図等をもって、ある程度取り組んだ人にしかわからないのではないかと思います。僕個人的には、このプラットフォームに作家が求める創作に必要な性質が担保できるのであれば、もっといろいろ試していいと思いますし、個人的にはまだ試すつもりでいます。いずれこの形の発表が何と呼ばれるようになるのかはわかりませんし、試していった結果、僕の求める性質の担保はできなかったからもう二度とやりませんとなるかもしれません。演劇は演劇でまた劇場でやりたいです。
観るハードルの低さに劇場公演のターゲットが広がるかもという意見がありました、が僕はイマイチ「ピン」とは来ていません。一般のお客さんが劇場公演とは直結するとは感じていません。

劇団た組HP
劇団た組 (@wawonkikaku) | Twitter
劇団た組 - YouTube

※現在はインターネット公演「要、不急、無意味(フィクション)」の視聴は不可。

上山竜治(俳優)

「Shows at Homeプロジェクト」を立ち上げ、総勢36名が歌う「民衆の歌」動画を投稿

自粛の日々が続き、自分にできることは何だろうと悶々と考えている中、「僕らには歌がある。歌を届けたい」、そう思いました。
まずは、俳優が自主的に立ち上がって発信していくことが大切だと思い、闘うすべての方へシンプルに歌を届けるということを重視しました。
「民衆の歌」の動画を発信するまでの間は、舞台の初日を迎えるような、希望と高揚感にあふれた日々でした。
自分1人では微力でも、一致団結して同じ思いが集まれば、こんなにも大きな力になるんだということを教えていただいたと思います。
動画には医療関係者の皆様を含め、たくさんの方から「いつの間にか涙が流れてきて、疲れていた自分に気付きました。明日からもがんばれそうです」といった、ポジティブなコメントをいただきました。歌や芸術は、溜まったものを発散させて、心に栄養を与えてくれるものだと信じています。
早く元気な姿で、皆様と劇場でお会いできることを心から願っています。

上山竜治 official site
上山竜治 official (@ryuchan_0910) | Twitter
上山竜治- Ryuji Kamiyama (@kamiyama_ryuji_0910) | Instagram

北尾亘(ダンサー・振付家・俳優 / Baobab・さんぴん)

「Baobab北尾亘×カラダレッスン」をYouTubeで継続的に展開

多くの人が集うことで完成する舞台芸術。自然と“いま自分にできること”を、探し求めるようになりました。というのも、身体・ダンスを通して舞台以外の場で人とつながれるときに、ようやく自身の存在意義を見いだせると感じたからです。
「Baobab北尾亘×カラダレッスン」を始めるにあたり、“誰にも求められていないかもしれない”という意識を持つようにしました。新たなアクションは0からの冒険です。誰しもが苦境に立つ今だからこそ、価値が生まれる可能性は未知でありながら無限でもあると信じています。とはいえ、慣れないことは発見の連続! レッスン映像の収録は反応のない霧の世界に身を投げるようでした。そのため、内容を精査する中で味わったのは、思考が研ぎ澄まされていくような感覚。これは作品創作に光が差す瞬間とも似ていました。
「Baobab北尾亘×カラダレッスン」(第1弾から第6弾までYouTubeにて公開中)をやってみて、予想以上の反響に驚きました。「毎日実践してカラダもココロも潤っている」という喜びの声が届いています。
この情勢は、身体の尊さに気付くキッカケにもつながっていると感じます。前向きに、0からのアクションを探していきたいです。

Baobab
北尾亘/Baobab (@wataru_159) | Twitter

北川大輔(脚本家・演出家・プロデューサー)

オンライン会話劇「『未開の議場』-オンライン版-」をYouTubeで配信

年初のニューヨークの会議で今年度の共同事業の話をした中国・香港の関係者と新型コロナウイルスの話をしていたら、瞬く間に日本にやってきた。経営している劇場を3月初旬の比較的早い時期に閉じたので、金策と風評の双方から苦しんだ。その後、制作を受託していた欧州からの招聘公演も中止になり、正直この時期の進行は各所への差配と会社の会計期末とが重なりもうあまり記憶がない。消沈の中で企画したオンライン会議劇「『未開の議場』-オンライン版-」を蛮勇猛々しい俳優陣の助力を得て4月半ばと5月頭(英語字幕版)に上演した。当然演劇向きにあつらえた台本なのだから生の空間のほうが良いに決まっているが、このインタフェースでできる限りをやったつもりだ。今の自分はといえば、今回の禍で飛び交ういたずらに耳目を引くだけの、半端で鈍らな言葉に疲れている。可視化したこの界隈と世間と自分のズレの一端を思い、これを容認し懐抱して今後を考えるには、どうにもまだ心が折れている。

だだんだん|note
未開の議場オンライン版 公式HP

きゅうかくうしお(辻本知彦・森山未來)

YouTubeで定期的にオンラインセッションを配信

演劇、ダンス、ライブなど、さまざまなパフォーマンスが中止・延期に追い込まれ、大した保証を受けられる確証もない大多数が息も絶え絶えな現在。
今だからこそできるパフォーマンスを目下模索中であり、その模索、それすらを観客、あるいは視聴者とどう共有できるかを、やはり模索中である。
現在の混迷を極めた世界より以前にあった、恐らく、混迷を極めた世界を見て見ぬ振りをしていた僕らの世界。
この模索まみれの先には、そんなかつての綻びかけていた世界が、実は少しはマシになるんじゃないかと想像している。
その想像を現実にするためには、今までのように、もしくは今だからこそ、みんなでやはり模索し続けること以外にはない、ということは確信している。

KYUKAKUUSHIO きゅうかくうしお | we disclose the process of our thoughts
きゅうかくうしお (@kyukakuushio) | Twitter
きゅうかくうしお公式チャンネル - YouTube

劇団Patch(中山義紘)

過去公演のダイジェスト映像をYouTubeで公開、LINE LIVEを積極的に実施

「今年の劇団Patchはひと味違うぞ!!」と2020年の劇団結成8周年を、1年計画で活気付けようと企てていた企画がすべて練り直しに。
そこで、過去本公演作品のダイジェストを制作し公開しよう!!と、生配信イベント!! YouTube活性化!!を第1歩として企画を走らせました!!
企画を始めたときに意識したのは、まず自分たちが元気な姿を見せる!!ということ。
明日が楽しみになるエンタメを届ける!!という、劇団としての本質は曲げず、流されず、劇団Patchの歴史と今と未来を多くの人に面白がってもらうこと。
そして、応援してくれる皆様に寄り添って手を取り合って進んでいくということ!!を重視しました。
4月27日に劇団結成記念生配信をLINE LIVEで行い、生に勝るものはないにしても、応援してくれている方々とのつながりを強く感じることができました。
こんな事態だからこそ、応援していただいている皆さんと共に進んでいきたいと思っています。
手段が変わっただけで、これまでと劇団の動き方は変わっていないと思います!!
芝居作りと一緒でトライアルアンドエラーを繰り返しながら、光を目指して進んでいくしかないと思っております。
また、劇団員とのコミュニケーションも明らかに増えました。
この先には確実に劇団の未来が見えているので、どの選択肢を通ってそこへいくのか、その選択に劇団員が胸を躍らせてます!!
そして、劇団Patchは明日もさまざまな仕掛けを企てる!!
「今年の劇団Patchはひと味違うぞ!! 見てろよーー!!」

劇団Patch Official site
劇団Patch【公式】 (@west_patch) | Twitter
劇団Patch - YouTube

近藤良平(ダンサー・振付家 / コンドルズ)

「こんどうさんのたいそう」をTwitterで継続的に展開

ふりかえると今までは常に、人に出会ってする仕事でした。たまたまな感じで、「工作」するように試してみたら少し気分がよくなりまして配信してみました。おうちにいることを、ポジティブにとらえ、少しでもからだを動かしてもらえたらなと思います。
普段SNSをさほど利用していないので、人々への伝達、広がり方はよくわかりません。その場の思いつき程度の映像ですが、早送りや映像加工はせずに、皆さんもすぐにまねなどして参加できればと思ってます。
1人作業なので、良し悪しのチェックはなしで、思いつきを貫く!感じです。小学校の頃から、小さなゲームや手遊び歌などを作ってたのを思い出し、自分なりに「昔のままだー!」という発見。「日記」を書くような感じがする。
観客というかたまたま見てしまった感じかもですが、皆さん、それなりに楽しんでいるかなと。かつてのNHKでの「サラリーマン体操」を思い出すなど。どちらにせよ、動いたりすることを、ポジティブにとらえてもらえればうれしいです。

本日まで続けてみて、皆さま方もアイデアを出すなど、継続するヨロコビを感じています。「緊急事態宣言」が終わるまでは引き続き、やります。

近藤良平 (@ryoheikondo0) | Twitter
CONDORS - Dance Company
condors (@condorsofficial) | Twitter

新国立劇場

オンラインで「巣ごもりシアター」を展開

3月の段階では公演再開に向けて、オペラ・舞踊・演劇の各ジャンルともリハーサルを行っていました。しかし、状況はどんどん深刻になり、次々と公演が中止に。少しでも成果をお客様に届けたく、3月末のダンス「DANCE to the Future 2020」の一部をライブ・ストリーミング配信し、4月上旬に上演予定であったオペラ「ジュリオ・チェーザレ」は、通し稽古とインタビューを映像収録、配信しました。
緊急事態宣言後はリハーサルすら不可能となりましたが、そんな中「再び安心して劇場にご来場いただける日が訪れるまで、舞台芸術の力を支えに“巣ごもり”していただきたい」という願いから、インターネット上で「巣ごもりシアター」を4月10日にスタートしました。オペラ、バレエの公演記録映像を無料配信し、演劇部門からは新国立劇場のために書き下ろされた戯曲をデジタルブックの形式で無料公開しています。これが大きな反響を呼び、映像配信は各作品3万回以上の再生を記録、オペラを全編観るのは初めてという方からも感動の声が多く寄せられたのは、うれしい驚きでした。戯曲もそれぞれ自由にお楽しみいただいている様子をSNSで拝見し、舞台芸術の可能性を改めて感じています。
ライブでの公演が舞台芸術の醍醐味であることは言うまでもありませんが、今はオンラインで皆様とつながり、劇場で再会できる日を待ちたいと思います。(文 / 新国立劇場 広報室)

巣ごもりシアター
[巣ごもりシアター]おうちで戯曲 | 新国立劇場 演劇

第7世代実験室

リモートリーディング「リチャード三世」をYouTubeで展開

演劇の魅力はもちろん、観客が作品を独占できる劇場にあるけれど、入り口として拡散できる側面があってもいいのではないかと思っていました。そこで、この機会に(外出)自粛中の演劇ファンの皆様はもちろん、今まで興味がなかった方の入り口となるコンテンツを作ろうと考えました。
重視したのは、古典を扱うことです。
動画は入り口にすぎず、視聴者に「劇場で観てみたい」と思わせたい。それにはリモート映像では完結しない、非現実的で壮大なドラマのほうがいいと思いました。古典は退屈で難しいイメージですが、演劇にしかない面白さが詰まっている。それをぜひ、なじみのない人にも知ってほしくて、ドラマのような連続モノとして1話15分程度の尺で、カッコいいサブタイトルを付けたり(笑)、できる限り工夫をしました。
実は、実験的に第1話を作ったとき、全員に“対カメラ”の演技をお願いしたんです。
基本的に演劇では、観客は客席という定点から舞台を観ています。そのため、舞台上では俳優がアップやルーズ、フォーカスを自分の演技で見せる必要がありますが、この状況下なら、定点カメラでも退屈しない画が撮れるのではないかと。一方、声はマイクが拾うので「映画を撮るときのような自然さで」とお願いしたところ、映画的要素と演劇的要素が合わさった面白い表現になったと思います。
数話を終えて、「劇場で続きを観たくなった」「いつか上演してほしい」と言っていただけてホッとしました。私たちのような若輩者が古典を扱うのは勇気が必要だったので、演劇ファンの方に怒られるのではないかと思っていたんです(笑)。観劇経験のない方にもご感想をいただき、もし入り口として貢献できているなら、とてもうれしいです。
たくさんの俳優さんにご協力いただいているので、あわよくば皆さんのことも応援してもらえたら……(笑)。

第7世代実験室 (@dai7sedaizikken) | Twitter

谷賢一(作家・演出家・翻訳家 / DULL-COLORED POP)

「コロナに負けず演劇を! ダルカラ配信祭」をYouTubeで実施

中止になったイベントを、配信でもいいからぜひ上演してほしいという強い要望が観客からありました。「お金を払ってでもいいから観たい」と言って、10万円もの金額をオファーしてくださって。大金ですが、それだけでは足りず、広くカンパを募れば成立する(=俳優・スタッフにギャラが払える)かなと思い、やってみました。
こだわったのは、まず基本無料で誰でも観られるということ。いわゆるフリーミアムの考え方です。そのうえで、我々の試みを面白いと思ったり、支援したいと思った人のみカンパにご協力いただく。そして映像のクオリティを高くすること。最終的に10名近いスタッフが携わり動画が作成されました。
やはり家で観られる・無料で観られるというのはハードルが低く喜ばれたようで、とても好意的な声が多かったのですが、いくら映像の質を高めても、演劇の代替にはならないのだなという至極当然のことを再発見しました。続編を期待する声も多くありましたが、あくまで私は演劇作家なので、早く演劇をやれる環境を取り戻したいです。

コロナに負けず演劇を! ダルカラ配信祭 | DULL-COLORED POP
谷賢一 (@playnote) | Twitter

辻圭介(トライフルエンターテインメント プロデューサー)

舞台スタッフにフィーチャーした番組をYouTubeで配信

自分たちの存在意義を見つめ直したときに、我々は「娯楽を提供すること」が使命なのではないかと思いました。舞台ができないのはどうにもならないことですので、今できることの中で最大限お客様に楽しんでいただけることをやろうと考えました。
今はたくさんの動画配信が行われておりますので、その中で埋もれない番組、そして「制作会社だからできる番組」を作ることを重視しました。
Zoom、YouTube、動画編集。ほぼゼロからの勉強でしたのでそこは多少苦労しました。うっかり自宅から無防備な顔を1分ほど生配信してしまったときは心が折れそうでした(笑)。
今は「あの配信も見たい。この配信も見たい」と、もしかするとお客様は舞台が普通に上演されていたときよりも忙しくなっているのかもしれないと感じています(笑)。舞台が再開されたら今度は動画配信ロスが襲ってくるのかも……?

トライフルエンターテインメント
トライフル辻 (@trifleP) | Twitter
トライフルエンターテインメント【公式】 - YouTube

中村修一(狂言師 / 万作の会)

「うちで舞おう」をTwitterで披露

星野源さんの「うちで踊ろう」を拝見し、自分も舞台に立てない中で何かできることはないかと考え、「うちで舞おう」と題して、星野さんの映像(歌)に狂言の小舞を合わせた動画を作りました。おそらく狂言をあまり見たことがない人たちの目にも触れる機会になるだろうと思い、狂言の小舞の中でもベーシックな、よく登場する型を組み合わせ、自分が狂言の小舞に感じる美しさを感じ取ってもらえるよう、基本に忠実にしっかりと舞おうと心がけました。
本来の能舞台は三間四方(5.5m×5.5m)の広さがありますが、自宅では2m四方くらいしか場所が取れないので、その中でいつもの序破急(最初はゆっくり、少しずつスピードに乗り最後に発散する)を表現することは難しかったです。
「うちで舞おう」をやってみて、「狂言の舞を習ってみたくなった」という反応があったのが一番うれしかったです。ただ、実際のところは、2歳半になる息子が起きてきて乱入したハプニングが、皆様に楽しんでいただけた一番の要因になったと思います。
自分が所属する「万作の会」のSNSやYouTubeなどでも、狂言に親しんでいただけるような企画を野村萬斎先生もなさっていますし、この渦中に狂言を通じて少しでも皆様の力になることができればと、皆で思案を続けております。

万作の会
野村萬斎@狂言ござる乃座 - YouTube
中村修一 (@marumaro4) | Twitter
中村修一 | Facebook

中屋敷法仁(演出家・劇作家・俳優 / 柿喰う客)

YouTubeで視聴できる劇団過去作の映像を追加

3月12日に東京公演が開幕しました「改竄・熱海殺人事件」(演出)は、3月28・29日の3ステージと大阪・福岡公演が中止。また、4月に上演予定だった舞台「タンブリング2020」(演出)は全公演が中止となり、現在は延期の日程を調整中です。所属劇団である柿喰う客も、参加予定だった「子どもいきいきプロジェクト」(3月 / 福井)と「ストレンジシード静岡2020」(5月 / 静岡)が延期。5月に予定されておりました新作公演「夜盲症」も、創作に必要な十分な準備期間を確保できないことから、延期を決定しました。この期間、私自身が考えたことは俳優、スタッフ、そしてお客様の心と体の安全です。圧倒的なフィクションを楽しみ、健やかなイマジネーションを育むためにも、安全な観劇環境の確保がなされるべきだと考えます。演劇を愛し、演劇を信じてくださるすべての皆様のために、今は何が出来るのか。試行錯誤の日々です。

中屋敷法仁 (@nkyshku) | Twitter
柿喰う客
柿喰う客チャンネル - YouTube

新妻聖子(ミュージカル女優・歌手)

「ボディガード」劇中歌を遠隔セッションした動画を投稿

3月下旬に「公演の続行は難しいだろう」となり、真っ先に思い浮かんだのは公演の収録(DVD化もしくはインターネット配信を見込んで)。だが、ミュージカル「ボディガード」の楽曲はすべてホイットニー・ヒューストンのヒット曲で、それぞれに異なる著作権管理団体があり厳密に著作権を管理しているため、映像化は不可能と断言された。ライブでしか届けられない演目ならば再演に希望を見出すしかないのだが、大型ミュージカルが上演できるサイズの劇場は限られている。それらはすべて数年先まで埋まっている状況で、オリンピックの開催時期がずれたことで会場となる予定だった一部の劇場が空くのではと一縷の望みを抱いたが、それも叶わなかった。現在、数年先の再演に向けて各所が調整を続けているところだ。同じキャストで再演が叶えば奇跡だろう。舞台とは、そこに集った者だけが“目撃”できる儚い娯楽。それがどれほど尊くエキサイティングなことだったのかと改めて思う。表現者として今私ができるのは映像の配信くらいだが、ライブとの差は埋めようがない。また、自粛が長引くならば全方向の舞台関係者に還元できるような課金型の新しいビジネスモデルを探る必要もあるだろう。そうしながら待つしかないのだ。集うことでしか達成できない、“あの空間”に代わるものはないのだから。

新妻聖子オフィシャルサイト
新妻聖子 (@seikoniizuma) | Twitter

三浦直之(劇作家・演出家 / ロロ)

オンライン配信通話劇「窓辺」をYouTubeで配信

予定していた「四角い2つのさみしい窓」の福島・三重公演の延期が決まり、空いてしまった期間を使ってロロでオンライン配信通話劇「窓辺」を始めた。思い付いたのは3月末のロロ会議のとき。メンバーの「誰かと話すだけで少し気が楽になる」という言葉がきっかけだった。
「四角い2つのさみしい窓」では、透明な壁によって客席とステージが隔てられて演劇が上演される世界を舞台にしていた。
僕は透明な壁に隔てられた世界では演劇は成立しないと思っている。観客が客席を越えて舞台へ上がってしまう可能性に演劇の本質はあると思うから。前説で「携帯電話の電源を切ってください」ってよく言うけど、「舞台上に上がらないでください」とは言わないから演劇が好き。
それでも僕は「窓辺」を無理やり演劇と呼んで、しばらく続けてみようと思う。透明な壁に隔てられた中でのステージと観客のつながり方をもう少し考えてみたい。その作業は、いつか劇場に戻ったときにロロの財産になってくれると信じている。

ロロ | official WEB
ロロ (@llo88oll) | Twitter

宮本亞門(演出家)

「上を向いてプロジェクト」を立ち上げ、多彩な出演者の歌やメッセージの動画を公開

3月5日、ニューヨークでミュージカル「ベスト・キッド」の公開ワークショップをして帰国。間もなく、ブロードウェイの劇場案内人がコロナにかかったと報道。
3月12日、ブロードウェイの公演がすべて中止される。それに伴い2021年の「ベスト・キッド」上演も未定に。
3月18日、オペラ「蝶々夫人」上演のため渡航準備をしていたとき、ドイツの歌劇場側から、「稽古中止、4月26日の初日延期」のメール。
3月25日、次々と公演中止になる状況に、演劇人にできることを、と「上を向いて~SING FOR HOPEプロジェクト」をネットで呼びかけスタート。
3月26日から、連絡先を知っている人や、紹介を通じて各所へ怒涛のように電話、LINE連絡。
即承諾してもらったり、断られたりしてアップダウンの日々。
4月10日、5月1日の「Hibiya Festival」ショーの再々演が中止される。
4月15日、ネット上で「上を向いて~SING FOR HOPEプロジェクト」を配信。翌日「DANCE FOR HOPE」を立ち上げ。

どの時代も、演劇は困難をバネに成熟してきたことを信念に、ただ突き進んでます。できる限りの方法を使って、人たちの心が折れないように。

SING FOR HOPE─上を向いてプロジェクト
DANCE FOR HOPE─上を向いてプロジェクト
宮本亞門(ミヤモトアモン) | ホリプロオフィシャルサイト
宮本亞門 公式 (@amonmiyamoto) | Twitter
宮本亞門 | Facebook

山田由梨(劇作家・演出家・俳優 / 贅沢貧乏)

劇団員とインスタライブを実施

劇団のトークイベントが中止になったので、劇団員と一緒にインスタライブをしました。それから、城崎国際アートセンターでの滞在制作も実施見送りになったので、今後の創作に役立ちそうな本を劇団員それぞれに送りました。今だからできるやり方で、みんなとつながっていたいなと思っています。
(実施にあたっては)自分の負担になりすぎないように、できる範囲でやろうと思っています。劇団員と話すことやインスタライブを見てくれている方と話すのは私も楽しいし、そういう時間を共有できるのはいいなと。本を送ったのは、こういうときだからこそ、それぞれが知識を蓄えて勉強できたらと思って。
こんなに気軽につながれるということや、家にいながら楽しむことができるのは新たな発見でした。それは出演予定の木ノ下歌舞伎「三人吉三」のオンライン稽古をしていても感じることです。でも、実際に集まることの代替には絶対にならないということもわかりました。
インスタライブはコメントをリアルタイムで送ってもらえるので、普段のトークイベントや公演とは違うコミュニケーションが取れて新鮮です。今だからこそ雑談できるところとか、気軽に集えるところは必要だと思う。劇団員たちの本の感想も気になるので、また配信したいと思います。

贅沢貧乏
贅沢貧乏(@zeitakubinbou) | Twitter
贅沢貧乏/ZEITAKU BINBOU(@zeitaku_binbou) | Instagram

山本卓卓(劇作家・演出家 / 範宙遊泳)

過去作の映像をYouTubeで公開し、毎週1本ずつラインナップを追加

私は「コロナが終息したら思う存分演劇をやるんだ」とは考えていません。なぜならいつ来るかわからない未来を待つよりも今作りたくてたまらないからです。確かにことごとく上演予定の公演は中止になりました。とほほな感じではありますが、何年かかっても絶対上演してやる、と思っているのも事実なのです。私は私の演劇活動を中止し社会の正常化を待つ気などさらさらなく、むしろこの異常な生活の日々こそ演劇、と捉えています。これまで勝手に我々が作り上げてきた演劇の定義なるものが、瓦解し再構築されることを私は歓迎したい気持ちでいます。それは従来の、舞台上の俳優と客席に座る観客という形式からはズレるかもしれません。しかし、こうした状況で作ることは、演劇とは何かという本質的な問いを深掘りすることにほかならないと信じています。気高くやってゆきたいものです。あとは多くの命が尊重され差別されることのない世界でありますようにと心の底から願うばかりです。

範宙遊泳/Theater Collective HANCHU-YUEI
範宙遊泳 (@HANCHU_JAPAN) | Twitter
TheaterCollectiv HANCHU-YUEI - YouTube

【舞台人たちの思いを知って】

このコラムでは、4回にわたって舞台人たちに「そのとき、何を思い、何をしましたか?」というテーマで思いを語ってもらい、舞台が直面している現状を見つめてきた。ここでは、これまでのコラムを振り返る。

じわじわと、しかしたった3カ月程度の短い時間で加速度的に、新型コロナウイルスは舞台の世界にも大きな影響を及ぼした。まずは命を守るための行動が第一だが、舞台に関しては身体を媒体にする生の表現、それを観に多くの観客が集まる形態だからこそ、姿の見えないウイルスとの闘いは、厳しいものになるだろう。

このコラムが動き出したのは、4月半ば。急な依頼にもかかわらず、第1回では17組がコメントの執筆を引き受けてくれた。その頃は政府による緊急事態宣言発令後だったので、中止か続行かの判断に揺れていた時期の葛藤をつづってくれた人が多かったように思われる。中にはオンラインでの映像配信や作品制作にフットワーク軽く挑戦し、新たな表現方法を探し始める人たちもいた。続く第2回は、“劇場に足を運べない今、観客は何ができるのか”ということに重きを置いて特集を組んだ。ステージナタリーでクラウドファンディングのニュース記事が出始めたのは、3月末。以降、現在ではさまざまな規模での支援の形が立ち上がってきている。第3回では、26組もの舞台人がそれぞれの心境を寄せてくれた。創作を断ち切る苦悩、公演中止に伴うさまざまな問題、今後の活動への不安……それらを抱きながらも、いったんはこの事態を受け入れ、思考を先に進めようとする意思が感じられる言葉ばかりだった。第4回では、これまでのような上演スタイルとは異なる状況で、新たな表現方法にトライした18組からの思いが届いた。“集まる”ことができないため、オンラインを介した活動にシフトせざるを得ない“今”。演劇とは何か、自分の使命とは何かを内省する、さまざまな意見が並んだ。

このコラムでは、“今、舞台界で何が起きているか”の一部を可視化することを目指した。クリエイターやアーティストたちがこの事態にどう向き合い、決断を下したのか、その思いを受け止めつつ、再び劇場の扉が開かれる日を待ちたい。

構成 / 大滝知里、興野汐里、熊井玲 文 / 大滝知里(P2)

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