押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?
ファストファッションについて、どう思いますか?
月2回連載
第57回
Q.
ファストファッションについてお伺いしたく投稿しました。私もユニクロが大好きでしたが、中国の新疆ウイグル自治区の人権問題が取り上げられ、同社の生産方法に問題があるという報道を聞いて、なんだか着るのが億劫になってきました。そのせいもあってか、安くて性能が良ければ問題ナシというのもなんとなく違うような気がしています。自分では買い叩いたりするくせに、自分の仕事をそうされたら嫌な気持ちになるからです。押井さんはどんな考えをお持ちですか?
── 今回は、今年の7月くらいに取り上げられていたユニクロやスペインのZARAなどが、中国の少数民族であるウイグル族を強制労働させていたかもしれないという人権問題に関する質問ですね。
押井 ユニクロはいつも使っていますよ。10年前からユニクロ専門と言っていいくらい愛用している。下着のパンツからジーンズ、シャツからTシャツまでほぼユニクロ。たとえ失敗しても安価だから買い直せるし、値段の割には縫製が良くて長持ちする。アメリカで買ったTシャツなんて、4、5回洗ったらおしまいだからね。
── ユニクロは国民的アパレルですよね。お金持ちの人も貧乏な人も、ユニクロのお世話になっている。ファストファッションの代表格のような扱いですが、安かろう悪かろうじゃなくて、ちゃんと長持ちする。他の海外のファストファッションは、その季節だけでおしまいですから。
押井 でも、評判が落ちたんだよね。そのウイグル自治区の話が出てきてやり玉に挙げられたことは、私も知っています。賃金を安く叩くので子供たちが犠牲になっているとか、中国の少数民族の弾圧に加担しているとか。その辺の真実はよく分からないし、ユニクロがどんな弁明をしているかも知らない。
でも、こういう話は今に始まったことじゃない。脈々とある。ナイキだってその昔、アジアの凄まじく劣悪な労働環境で生産し、それを宣伝費をかけ、マイケル・ジョーダンなどを使って華やかに売っていた。靴や洋服などの庶民的なものに対しては昔からそういう構図ができていた。
── そうですね。マイケル・ウィンターボトムの映画『グリード ファストファッション帝国の真実』(19)でも描かれていました。イギリスのファストファッションの欲深いオーナーがアジアで労働力を思いっきり買い叩いていました。
押井 私の大きなお仲間たちが一時、夢中になっていた食玩も同じようなもんですよ。ワールドタンクミュージアムなんて、値段にはそぐわない凄いクオリティだからね。彩色からすべて手作業でやっていて、膨大な人的資源で作っているのが分かる。もちろん、中国だからできているわけですよ。
そういう食玩の場合、大人が爆買いするから、チョコレートの方は捨ててしまうんだけど、それじゃいかんだろうというので、『モデルグラフィックス』には、模型雑誌にも関わらずチョコレートケーキの作り方が掲載されたことがあった。「捨てちゃダメ、こうやって作れば美味しいケーキができるから」って。
── それは面白い企画ですね。
押井 じゃあ、なぜ食玩があれほどまでに大ヒットしたかと言えば、小さいから。タンクでもプラモで買えば、自分で組み立てて色も塗らなきゃいけないし、そもそもデカい。デカいとずらりと並べられないでしょ? 食玩なら集めて一個大隊くらい並べられるからね。
── ソコなんですか?
押井 ソコです。重要なんだって!
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