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「支援がなければ、実現できなかった」 朝ドラ100作目『なつぞら』を支えた北海道・十勝の協力

リアルサウンド

19/9/27(金) 14:00

 残すところ1話となったNHKの連続テレビ小説『なつぞら』。半年に渡って描かれてきたのは、戦後の北海道の大自然と、日本アニメの草創期を舞台に、まっすぐに生きたヒロイン・なつの夢と冒険の物語だ。

【写真】一般公開中の天陽のアトリエ

 本作は、朝ドラ100作目として、製作陣の力が注がれた作品でもあった。ドラマ内のアニメーション時代考証を小田部羊一が担当し、主演の広瀬すずをはじめとする話題の役者たち、歴代朝ドラヒロインの出演など様々なトピックで話題を集めた。

 本作の実現において、なかでも一番重要だったのが、ヒロインの故郷・北海道の十勝という舞台だ。およそ2年もの間、十勝に関わる撮影に協力してきたとかちフィルム・コミッション連絡協議会の松田里奈氏に、ロケハンを始めた当初の頃からの話を聞いた。

「最初は2017年10月に制作統括の磯(智明)さんと脚本家の大森(寿美男)さんが初めて訪れて、十勝の食事やお菓子屋さんのお話、特に女性で活躍されている酪農家さんのお話を聞かれていきました。その時はまだ『大型テレビドラマ』とだけ聞いていて、実際に十勝で撮ることも決まっていなかったので、11月頃に『なつぞら』でしたと発表があって、とても驚いたのを覚えています。初めは夏と冬に十勝でロケがあると聞いていたのですが、実際には合計35日間(2018年6月、2019年1月、4月、6~7月)も十勝の季節折々の撮影をしていただけて嬉しかったです。ロケハンから撮影まで十勝に関連するシーンについては全部立ち会ってきたので、私としても終わってしまうのが寂しいです」

 『なつぞら』ではなつの祖父・泰樹(草刈正雄)が、戦後、北海道・十勝地方に移り住み、土地を開拓し家族を築いていく。そんな開拓者の物語を描く上で、十勝のシーンで一番スポットが当たったのが「酪農」に関するパートだ。

「他の作品では、牧場で撮影したことはありましたが、今回、牛を撮影場所に運んで撮るというのが初めてで、その土地の地権者と酪農家の両方の許可を得た上で、農協に話に行って、実際に撮影に入るという流れでした。マコプロの皆さんが『大草原の少女ソラ』のロケハンのために十勝に来たシーンは、牛をバラバラの位置に移動させるのが大変でしたね。定位置に移動させようとするのですが、動物だから自分が行きたくないところには行きたくないだろうし、一頭が移動するとほかの牛も同じ方向に向かって動いてしまうんです。同じ大きさの牛を別の酪農家さんから揃えたり、牛を扱うシーンは特に大変でした。他にもじゃがいも畑のシーンは、撮りたいシーンのために逆算してジャガイモを育てたり、地元の方のご協力も得てやっていました」

 一方で、制作統括の磯智明氏も、『なつぞら』に関して「地元・十勝の協力がなければ、なにもできませんでした」と語っている。

「酪農をドラマで扱うのはとても難しく、今まで朝ドラで取り上げたことはありませんでした。牛はこちらの都合で動いてくれないですし、とてもデリケートです。安全管理や衛生管理もとても厳しく、神経を使います。出演者スタッフはいつも念入りに消毒してから牛との撮影に臨みました。ちなみに今の牛には耳に黄色い管理タグがついていますが、それはCGで消しています。牛を10~20頭必要なシーンもあり、1つの牧場だけで揃えていただくのは難しく、農協を通じて複数の牧場にお借りすることもありました。十勝のように規模があり、牧場のネットワークが発達している地域の全面的な支援がなければ、このドラマは実現できなかったと思います。それと十勝は歴史を大切にされているためか、昔の農機具や生活用品がとてもきれいに保存されているので、当時の生活を再現するのにとても役立ちました」

 撮影のために十勝に建てられた登場人物たちの住まいのセットは、帯広観光コンベンション協会や地元自治体に無償譲渡され、現在一般公開されている。それほど十勝からの協力を得て本作が作られ、地域に還元しようとしている姿勢が伝わってくる。

 松田氏は、『なつぞら』の十勝での反響について次のように語っている。

「今は天陽くん(吉沢亮)の家が真鍋庭園で無料で見られるようになっていて、アトリエにしていた馬小屋には、描いた絵を展示しています。新得町や陸別町にも譲渡してもらったセットが展示されていて、サイロや柴田家の道、看板、橋、牛舎なども見られるようになって、観光客も多く訪れています。小道具一つにしてもたくさんの数を譲渡していただいており、『なつぞら』の放送が終わっても、十勝で残していきたいと考えています。『なつぞら』を通じてたくさんの人に十勝を知ってもらえたので、これからもこの土地で大事にしていきたいです」

 十勝での最終ロケが行われた際、広瀬すずも草刈正雄も、北海道での撮影に特別な思いを抱き、また地元の協力に関して感謝の言葉を語っていた。ラストシーンにどんな結末が待っているのか。いよいよ半年間の放送が幕を閉じようとしている。

(大和田茉椰)

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