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アルルカン×DEZERT×キズに感じた新たな時代の幕開け スリーマンイベントで見えた共通する姿勢

リアルサウンド

19/8/14(水) 7:00

 “ヴィジュアル系”が新語・流行語にノミネートされ、世間に浸透してから20年以上が経ち、ヴィジュアル系は海外からも注目される日本の文化となった。しかし、当時のように地上波への出演やお茶の間への露出はというとゴールデンボンバーくらいのもので、世間的に見てもアンダーグラウンドなジャンルという位置付けは否めない。人によってはすでに終わってしまったジャンルと捉えている人もいるかもしれない。そんな中、ネオヴィジュアル系ブームが落ち着いた2010年代に結成されたアルルカン(2013年結成)が中心となり、DEZERT(2011年結成)とキズ(2017年結成)に声を掛けたスリーマンイベント『STAND ALONE COMPLEX』を8月4日に東京・TSUTAYA O-EASTで開催した。

(関連:アルルカン、DEZERT、シェルミィ、ユメリープ…歌詞や世界観がティーン層に刺さるV系バンド

 2010年代のヴィジュアル系シーンにおいて欠かせない存在であるアルルカンとDEZERTに加え、結成2年ながら凄まじい勢いでシーンを駆け上がるキズの組み合わせを待ち望んでいたファンは少なくない。その証明として1300キャパをソールドアウトし、2階席まで超満員の人が駆けつけた。

 紗幕に映像を映し出す演出の中「0」からライブをスタートさせたトップバッターのキズは「ステロイド」「ELISE」とハードな楽曲を間髪入れずに演奏。「救われたいヤツだけついて来い」という来夢(Vo)の言葉の通り、徹底的にオーディエンスを突き放し、観る者を寄せ付けない圧倒的なステージを見せつける。reiki(Gt)は地鳴りがするほどにステージを蹴り、感情のままに叫び、きょうのすけ(Dr)も力いっぱい殴りつけるようにドラムを叩く。一見クールなユエ(Ba)もひとたびスイッチが入ると人が変わったようになるのだからこのバンドは面白い。そもそも彼らは理性というリミッターなどはじめから持ち合わせておらず、剥き出しの感情をそのままにぶちまけたようなライブこそが最大の魅力なのである。

 そして、来夢が「さぁお前らは何を信じて生きる? 神か? 人か?」とフロアに問い掛けた「十五」や、〈一緒に死のうよ〉とアコースティックギターを掻き鳴らして歌う「平成」で見せたような圧倒的な“救いのなさ”をこのバンドで歌うのが来夢だ。さらに彼はこの日唯一のMCでこう語った。

「今日は、このヴィジュアル系っていうジャンルを、時代を、変えてやろうって気持ちで立たせていただきました。世の中的には今はパッとしないジャンルかもしれないけれど、まだ生きているってことはまだやれるなって感じました。今日からみんなで新しい時代を作っていきませんか」

 救いのないこの現実において、安易に背中を押すようなお手軽なものではなく、自らが生きる姿を以って、「じゃあお前はどう生きる?」と問うMCで彼らは大きな拍手を浴び、ラストナンバーとして「黒い雨」を演奏しステージをあとにした。

 続いて、SEなしの無音状態でステージインしてきたのは前日に『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』に出演したばかりのDEZERT。怒号のような声が飛び交う不穏な空気の中、Sacchan(Ba)が「包丁の正しい使い方~終息編~」のイントロを奏でるだけでフロアは熱狂の声があがり、ウォールオブデスが巻き起こる。Sacchanが鍵盤を弾きながらベースを操った新曲「Dark in Black Hole」をはさみ、久しぶりに披露された「『不透明人間』」にひときわ大きな歓声があがった。

 最近の曲に重きを置いたものとは違う、ちょっと懐かしささえ覚えるセットリストの組み方ではあるものの、彼らのターニングポイントとなったアルバム『TODAY』のオープニングを飾る「沈黙」や、最新シングル曲「Call of Rescue」でフロアをグッと引き込むことも忘れない。そして、「セクハラさせていただきます! 嫌な奴は今すぐ帰れ! ここは治外法権だ!」と“千秋節”が炸裂した「『君の子宮を触る』」で再び会場の熱を上げると、「『殺意』」「『変態』」とキラーチューンを立て続けにお見舞いしたところで千秋(Vo)が口を開いた。

「僕たちはある信念を持って活動しています。それは顔も名前も知らない誰かに何かを届けようという難しいことですが、この一年間次の曲をやり続けてその楽しさが身に沁みるようになりました。だから君たちもこれからの人生、今日だけ楽しいではなく、明日良くするために今日頑張ろう。そのためには足りない頭で乾き果てるまで考えてください。そして、乾き果ててしまったらまた僕たちに会いに来てください。君たちの幸せも不幸も支えることは出来ないけど、一緒に乾き果てることなら出来ると思うので」

 そう言って演奏されたのは彼らのアンセムである「TODAY」。彼らはこの曲を演奏し続けることで、オーディエンスの心を動かしたのはもちろん、それを受けて彼らの中でも何かが変わり、さらに一歩先に進んだことを実感した。そして、このスリーマンがソールドアウトしたことを受け、千秋は来年3月に同じくO-EASTでまたこの3バンドでDEZERT主催イベント『This Is The “FACT”』を開催することを宣言。

 「仲良くじゃなく本気で潰し合いませんか?」「3バンド、マジで戦おうと思ってます。だから僕はここで開戦宣言を致します!」と去り際に言い放ち帰って行った。

 トリはもちろんアルルカン。千秋の言葉を受け「(角耳が)ビンビンのアルルカンです。宜しくお願いします!」と暁(Vo)の挨拶もそこそこに8月21日にリリースされるシングル『ANIMA』より「息の根」でライブをスタート。さらに「さぁ欲しいものに手を伸ばそう」と呼びかけた「餓えの自覚」ではファットなグルーヴを聴かせてくれた。ファストナンバー「墓穴」でライブの加速度は増し、フロアが声を上げ、ヘッドバンギングで応えるその様は「影法師」で暁が叫んだ「答えなんてなんでもいい。お前が吐き出したいものを持って来て、何かを掴んで持って帰ってくれ。不幸せを薄めるんだ」という言葉をそのまま表しているようだった。

 今回、面識のなかったDEZERTとキズを繋いだ張本人であるアルルカン。この役割は彼ら以外に出来る者はいなかっただろう。そのヒントは中盤に演奏された「Always」の〈認め合える事はそんなに楽なことじゃないけど それでも僕は明日を信じたい〉という歌詞にあるのではなかろうか。続く「人形-ヒトガタ-」で暁はキズとDEZERTに関して「潰し合おうっていうDEZERTもいいし、一緒に時代を作ろうっていうキズの言葉もいい。全部受け止めます」とアルルカンらしい答えを出した。そして、なぜその答えを導き出したかは次の曲のタイトルが示していた。演奏されたのは「価値観の違いは唯一の救いだった」。人の数だけ答えがあり、その価値観の違いによる軋轢で痛みが生じるが、その痛みこそが救いであることを知っているアルルカンだからこその答えなのだ。

 「先のことなんてわかんないけど、答えがあってるかとか、間違ってるかどうかも興味がない。見て見ぬふりをするくらいなら、わかったふりをするくらいなら、俺は一生ダメ人間でいい。そして、いつか! いつか! いつか! 俺は自分を自分で幸せにしたいんです。お前らも自分で(幸せに)なれよ!」と暁が叫び、「ダメ人間」のイントロが響くと、オーディエンスはそれに応えるように、自らを幸せにするべくこの日一番の声をあげ、イベントは幕を閉じた。

 今回このスリーマンを通して、三者三様の姿勢を見ることが出来た。そのどれもが正解であり、現在のシーンにおいてこの3バンドのように誇りをしっかりと持ち活動しているバンドが時に手を取り合い、時に切磋琢磨ながら、新しい時代を作っていくのだろう。また、価値観はバラバラな今回の3バンドではあるが、他者に救いを求めるのではなく、あくまで“自分を救えるのは自分自身”という姿勢は共通していた点も興味深かった。音楽性も価値観も自由。近年、文化として定着するあまりジャンル内でテンプレ化する傾向もあったが、ここにきて再び他と違うことをやろうというバンドも多く見られるこのジャンルがすでに終わっているとは到底思えない。むしろ来たる2020年代を目前に新しい時代の幕開けを感じている。(オザキケイト)

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