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若者はなぜTikTokにハマるのか? 調査で判明した「Z世代」特有の嗜好

リアルサウンド

 「TikTok、流行ってるらしいけど理由がわからん」と思っている30代以上の人は少なくないだろう。

 しかし2020年にヒットした瑛人の「香水」はTikTok経由でZ世代(今の10代前半~25歳くらいの世代)に話題になり、4~5月にかけて音楽チャートにランクインするなど、マーケティング的にも無視できないものになっている。

 気になる――と思っている人も少なくないだろう。

 それを考えるヒントになるのがTikTok Ads Japanが今年6月に発表した「Z世代白書2020」とこれを元に書かれた原田曜平『Z世代~若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?~』 (光文社新書)だ。

 ポイントを3点、紹介していこう。

(1)ウソくさい広告が嫌いだからインフルエンサー未満が好き

 「広告を見るのが好き」という人は広告業界人以外にはなかなかいないだろうが、それにしても世代が下るほど広告を嫌悪する割合は上がる。

 「Z世代白書」では、

「広告臭がする、やらせっぽく感じるものは苦手だ」71.9%
「好きなブランドでも広告っぽいと見たくない」38.5%
「誤魔化しのないリアルなメッセージは信用できる」83.0%
「自分の日常に近い動画・投稿は信用できる」50.2%
「失敗などのネガティブな面がある動画・投稿は信頼できる」49.0%

というアンケート結果が出ており、これらは25歳以上の世代より基本的に高い。

 Z世代はウソくさいものは嫌いで、身近なもの、スレていないものを支持する傾向にある。

 そこに来てTikTokには原田が言うところの「インフルエンサー未満」――世に出始めたばかりのインフルエンサーのことで、フォロワー数もまだものすごくは多くなっておらず、スレていない人たち――が多い。

 Z世代にとっては著名YouTuberなどの企業案件の投稿は信用しづらいものになっており、むしろ一部の人しか知らないTikTokerのほうが信頼できるのだ。

(2)発信型SNSとともに育ったZ世代の「自己承認欲求」「発信欲求」に応える

 原田の整理によると、思春期時代の「ゆとり世代」(Z世代の一回り上の世代)は“SNS上で叩かれたくない”という「同調圧力」と「防御意識」が強かったが、Z世代は周囲の心象が悪くならない範囲で自己アピールしたいという「同調志向」と「発信意識」が強い。

 Facebookやかつてのmixiは「交流」するSNSだったが、Z世代はTwitterやインスタ、TikTokで「発信」して承認欲求を満たすことを求めている。これらの発信はいずれも短文や短尺で済む(ただし頻繁にではなく吟味して狙って投稿する)。

 まわりがやってるのと同じ程度の発信をすればまわりから「いいね!」をもらえる。これがいい。

「Z世代白書」によると、

「上に立つリーダーになりたいと思う」(Z世代30.3%、 25 歳以上 17.1%)
「今の自分の社会的地位を維持しさらに高めることに力を注ぎたい」(Z世代38.0%、 25 歳以上 26.5%%)
「近い将来、実現可能な目標(夢)がある」(Z世代 58.1%、 25 歳以上 41.8%)

と、最近の若者は消極的ではないことがわかる。

(もっとも、この差が「Z世代とゆとり世代の違い」なのか、年を取ると現実を知って積極性が下がっていくのかは、経年で比較できる調査がないからなんとも言えないが)

(3)かじる世代

 「Z世代白書」はZ世代を「かじる世代」とまとめている。

 ある動画を観ながら「おもしれー」と思いながらもスキップして次の何かを探す、いろいろなことに手を出したがることをアンケートやコメントから導き出す。

 情報量が多い時代らしい飽きっぽさ、気の散らせ方、マルチタスクが特徴的だ。

 TikTokはひとつひとつが非常に短く、合わないもののスキップも簡単、しかも見知らぬ(しかし身近な)インフルエンサー未満の動画に次々出会える。

 ウソくさいのは嫌いで、発信するのは好き、そしてどんどん飛ばしてかじるように消費する。

 それがZ世代にTikTokが刺さった理由なのだ。

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

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