Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

南沙良、“型にはまらない”が表現力のカギに? 「ずっと“いろんなもの”になってみたかった」

リアルサウンド

20/3/21(土) 12:00

 映画『もみの家』が3月20日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中だ。2017年に『真白の恋』でデビューを飾った坂本欣弘監督が自身の生まれ育った富山県を舞台に撮り上げた本作は、心を閉ざした16歳の彩花が、不登校やひきこもりなどの問題を抱える人々の自立を手助けする施設「もみの家」で成長していくさまを描いた人間ドラマ。

参考:南沙良×蒔田彩珠『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』対談 「2人なら大丈夫だと思っていた」

 主演を務めたのは、2018年に公開された『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』で、ブルーリボン賞や報知映画賞など数々の新人賞を受賞し、現在映画やCMに引っ張りだこの南沙良だ。撮影当時、主人公の彩花と同じ16歳だった南に、役作りや撮影について振り返ってもらった。

ーー今回の作品は1年かけて撮影が行われたそうですね。最初に脚本を読んだとき、どのような印象を抱きましたか?

南沙良(以下、南):初めて台本を読ませていただいたとき、その風景が頭の中にパーと広がったんです。それはなかなかないことなので、その風景を持ったまま1年間を過ごしたいと思いました。

ーー彩花は心を閉ざして不登校になった高校生という設定です。役作りはいかがでしたか?

南:自分と重なる部分がたくさんあったので、最初はあまり好きになれなかったんです。ちょっと近親憎悪みたいな……そういう感情を持ちながらお芝居をしていました。何かはっきりとしたきっかけがあったわけじゃなかったんですけど、途中で彩花が成長できていると自分で感じることができたんです。そこから少し気持ちが楽になったというか、これでいいんだなという安心感が芽生えました。

ーー重なる部分というのは具体的にどのあたりですか?

南:自分の殻に閉じこもってしまうところや、人との距離感をうまく測れないところです。逆に私自身とかけ離れた部分があまりなかったので、すごく入り込みやすかったです。

ーー撮影当時、彩花と同じ16歳だったということも大きかったのかもしれませんね。

南:全然考えたことなかったです(笑)。でも、確かにそうかもしれません。同い年だったのもたぶん関係があったと思います。

ーー映画の舞台にもなっている富山県での撮影はどうでしたか?

南:富山県には今回の撮影で初めて行かせていただいたんです。普段自然に触れる機会があまりないので、色々なことがすごく新鮮でした。特に、散居村の景色が一望できる夕日のシーンが一番印象に残っています。すごく美しくて、感動的でした。

ーー田んぼに落ちて泥だらけになるシーンもありましたね。

南:田んぼに落ちるシーンは本当に大変でした(笑)。泥の中から上がって道を歩くというシーンだったんですけど、撮影当日がすごく風の強い日で、泥がどんどん乾いてきちゃって。なので、自分で泥を塗り直しながら撮影していました(笑)。一発OKだったんですけど、失敗できないなと思って緊張しました。

ーー獅子舞や農作業に挑んだりと、いろんな経験もされたと思います。一番大変だったシーンは?

南:一番大変だったシーン……。やっぱり農作業ですかね。もちろんやったことはなかったので、農作業のシーンを撮った次の日は筋肉痛になっていました。特に背中が一番痛かったですね。それこそ泥が重くてまったく動けないんですよ。本当に大変でした。

ーー共演者も豪華な方々が揃っていますが、印象に残っているのはどなたですか?

南:緒形(直人)さんが、撮影中にずっと私のことを気にかけてくださっていたんです。私が出演した『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』も観てくださったそうで、「すごいよかった。瑞々しいね」と言っていただけたのがすごく嬉しくて。お芝居の面でも、「こうした方がやりやすい?」と聞いてくださったりして、私は緒形さんをすごく頼りにしていました。「もみの家」のみんなもすごく仲が良くて、みんなで喫茶店に行ったり、休憩時間も一緒にお話をしたり、本当の寮生みたいな関係でした。

ーーそんな中、南さんは現場では最年少でありながら主演という立場だったわけですね。

南:そうですね……ちょっと無責任かもしれないですけど、主演についてはそんなに重くは考えていなかったです。みなさんに引っ張っていただくことが多かったので。

ーー特に気負ったりプレッシャーを感じたりすることもないですか?

南:あまりないかもしれません。現場に行って、監督や共演者の皆さんとお話しをして作ることが多いですね。今回も坂本(欣弘)監督と話し合いながら進めていけたのがすごくよかったです。坂本監督は間の取り方などに強いこだわりを持っていらっしゃって、「彩花だったらどうしたい?」とか「彩花だったら今どうすると思う?」と私に聞いてくださったり、ご自身が違うなと思ったら何回もやり直しをされる方だったので、すごく信頼できましたし、とてもお芝居がしやすかったです。

ーー事前に作り込むのではなく、現場で調整していくタイプですか?

南:そうですね。あまり作り込まずにやるタイプかもしれません。デビュー作『幼な子われらに生まれ』のときは、どうやってお芝居をしたらいいのかよくわからなかったんですけど、三島(有紀子)監督に、「しようとしなくていい」と言っていただいたんです。「相手からもらったものに対して、沙良が役として思ったことをそのまま投げればいいだけだよ」と言ってくださったのが、今でもすごく印象に残っていて。今もその言葉を大切にしながら、ずっとお芝居を続けています。

ーー『幼な子われらに生まれ』もそうでしたが、映画初主演となった『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』、そして今回の『もみの家』も、すべて難しい役どころのように感じます。

南:重なる部分が多かった今回の彩花もそうでしたが、台本を読んだ時に、「この感覚分かるな」とか「この感じちょっと知ってる」みたいな部分がどの役にもあるんです。やりやすいというか、自分と同じ部分を見つけやすいので、その部分を引っ張り出しながらお芝居ができるのが大きいかもしれません。

ーー逆にすごい明るい役だったりめちゃくちゃはしゃいだりする役はあまりないですよね?

南:私自身もあまりイメージできないです(笑)。でも、クラスの中心にいるような明るい役もやってみたいですね(笑)。あと、ずっとグレたいと思っているんです。

ーーグレたい?

南:そうなんです。“グレたい願望”があるので、ちょっとヤンキーだったり、グレた感じの役もやってみたいなと。

ーーそれは見てみたいですね。では、役者としての目標はありますか?

南:具体的に「こうなりたい」みたいなものはないんですけど、型にはまらないというか、そういう表現ができる人になりたいなとはずっと思っていて。私、小さい頃から女優さんになりたいと思っていて、ずっと“いろんなもの”になってみたかったんです。インコになってみたかったり……(笑)。なんかそういう時期があったんです。なので、お芝居の中でもそうですけど、お芝居以外の部分でもいろんなことで何かを表現できたらいいなと思っています。

ーーお芝居以外というと、何でしょう?

南:お洋服をリメイクしたりするのが好きなので、ファッションだったり、あと文章を書いたりするのも好きなので、そういうことでも表現をし続けられたらなと。今回、1年という長いスパンで1つの作品を撮影するのが初めての経験だったんです。どうしても間が空いてしまうので、その瞬間に思ったことや感じたことを手帳に書き留めていて。それで、日記とかをつけるのは大切だなって、改めて思ったんです。期間が空いてまた撮影に戻るとなったときに、以前書き溜めていたことを読み返すと、まだそのときの感覚が残っていたり、当時のことがすんなり入ってきたり、そういうことがすごく多くて。今回の作品をとおして、そのときに思ったことや感じたことを、何らかのかたちで残しておくのは、すごく大切なことだなと気付きました。(取材・文=宮川翔)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む