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ヨーロッパ企画『九十九龍城』は「“生の営み”を観てもらいたい」上田誠×石田剛太 インタビュー

ぴあ

左より、『九十九龍城』で作・演出を努めるヨーロッパ企画代表の上田誠、劇団員で出演者の石田剛太 撮影:源賀津己

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ヨーロッパ企画の第40回公演『九十九龍城(きゅうじゅうくーろんじょう)』が12月から2月26 日の神奈川・関内ホールまで、全11都市を巡演中だ。

既に絶賛の声が届いている本作。2年ぶりとなる本公演の幕が開けて、今どのようなことを感じているのか。劇団の代表で作・演出を手がける上田誠、劇団員で出演者の石田剛太に話を聞いた。

2年ぶりの本公演は、コメディとシリアスが入り混じる「魔窟劇」

──実際に公演が始まっていかがですか?

上田 本当に良かったです。やっぱり「2年ぶりの本公演」というのは結構なブランクなので。お客さんを見ると安心しますよね。「よかった、お客さんがまた集まってくれて」って。

石田 僕も2年ぶりということで、「劇はやっぱり楽しいな」というのを実感しています。お客さんからもマスク越しでも反応がすごくあって、それに助けられていますね。

──お芝居の方はどうですか?

石田 『九十九龍城』は「魔窟劇」で、舞台美術も含め不穏な空気が漂うような劇なので、お客さんも「どんな劇が始まるんだろう」「何を見せられているんだろう、これは」ってドキドキしながら観てくださっているような感じがします。それに対してこっちは「やりきってやろう!」みたいな。魔窟の住人を演じるということで、みんなすごく気を高めてやってますね。



『九十九龍城』栗東プレビュー公演より

──魔窟の住人は気を高めて演じるんですね。

石田 はい。気を大きくして、荒っぽい言動になったりするところからやり始めて、そのまま舞台に上がっていく!みたいな。そんな感じはありますね。ネタバレになりますが、なかなかショッキングなシーンから始まるじゃないですか。

──そうですね。

石田 だからお客さんも「えらい物々しい雰囲気だな……」という感じだと思うんですけど、それが、劇が進んでいくうちに覆っていったり、コメディになっていったり、そういうところに快感を感じます。

──たしかに割とヘビーな出来事がどんどん起きますが、なんか笑えるんですよね。でも笑っていいのかなって出来事だから(笑)。

石田 多分、お客さんも最初は「笑っていいのかな?」「これ、どういう劇なんだろうな」と思うと思うんですよね。でも僕らはそのシーンを稽古場でゲラゲラ笑いながら作っていたので、序盤で「あれ、これは思いのほか重く取られているかもしれない」みたいなことは、幕が開いてから思いました。ただそこでじゃあコミカルに演じるとかコメディチックにやるんじゃなくて、よりシリアスに演じることの方が笑いに繋がっていくんだなってことを、やっていて思いました。

“ヨーロッパ企画の直球”で「演劇の熱」や舞台上の「生の営み」を感じてほしい



──おふたりがこの『九十九龍城』にグッとくるのはどんなところですか?

上田 魔窟ですから、やっぱりけっこうハードな状況の劇なんですよ。そういう状況の中でも力強く生きている人たちを描くっていうところです。香港映画とかでも、「うわ、すごいな」って、観るだけで疲れるみたいな感覚があるんですけど、そういう感じで今回、“生(せい)の営み”を観てもらう、みたいな気持ちでつくっていて。もちろんコメディなんですけどね。でも久しぶりの本公演で、だからちょっと演劇的な熱みたいなもの……お客さんが「演劇を観たな」とか「演劇だったな」と思うような劇をやりたいなと思っていたので。だから割とシンプルに、いろんな意味で演劇的歓びがあるんじゃないかなと思います。

僕が作るものは、コンセプチュアルだなとか、ちょっとスタイリッシュだなとか、変化球だなとかあるんですけど、それで言うと今回は意外と“ヨーロッパ企画の直球”みたいな感じなんじゃないかな。だからグッとくるのは、全部観た後、「演劇を観たな」「生の営みを観たな」って思えるところ。カーテンコールではすごくグッときますね。

石田 僕は役者間の台詞のやり取りが激しく展開していく劇だなと思っていて。そこはやっていても楽しいです。京都公演の時は2時間の劇だったんですけど、今、5分くらい縮まっているんですよ。こういうテンポ感でみせたほうが、より伝わるんだなっていうのもあったりするので。やっと今、掴めてきたなっていうのがあります。

上田 探っていたよね、いろいろね。

石田 僕そうですね。会話もそうだし、どれぐらいの声のゲージなのかとか。どのくらいの感じでみせるのがいいかなというのはやっていて楽しいです。

──以前、新メンバーとして加入された藤谷理子さんの存在が大きいということを上田さんがおっしゃっていましたが。

上田 そうなんです。藤谷さんが劇団員になって初めての公演というのは今回だけなので、そこは意識しました。もちろん、これまでも僕らの劇に出てくれていましたけど、今回はデビュー感を目指して。役もショーパブの中の踊り子で、変な劇団に入っちゃったな、みたいな(笑)。二重の意味で見てもらえたらなって。彼女はバレエをやっていて身体のキレがあるので、今回はショーパブのベリーダンスとか、太極拳とか、カンフーとか、なかなか他の劇団員はやらないようなことをやってもらっています。

今までずっと、歌なし・踊りなしでひたすら会話劇でやってきたんですけど、藤谷さんが入るとバリエーションが増えますよっていうこともやってみたくて。だからちょっと新しいフォーメーションのヨーロッパ企画も観てもらえると思います。



『九十九龍城』栗東プレビュー公演より

──やっぱり客演の時とは違う感覚なのですか?

上田 感覚は全然違いますね。まあ理子ちゃんは「何も変わらないです」って言ってたけど。

──そのことを上田さんは前回の取材でも仰っていましたね(笑)。

上田 (笑)。ちょっと寂しかったですね……。

──よほど心に残ったんですね。

上田 そうです。棘として。返しのついた棘として。

石田 (笑)

上田 終わってみたら、「やっぱ違ってましたね」って言われたいです。

石田 (笑)。でもほんと、踊るのだって、ショーパブのあんなちっちゃい空間でやっているのに、アンケートにも「踊りが凄かった」ってことが書かれているので。一瞬のシーンだし、しかもおじさんたちが動いているから(笑)、ほとんど見えないと思うんですけど、それが「凄かった」と言われるって本当に凄いことだなと思います。でもその時、僕もいろいろやっているんですよ。だから僕の方も観てほしい気持ちもありますね(笑)。

上田 (笑)。でもあのシーンは理子ちゃんのちゃんとした踊りがないとできないですからね。

石田 そうね。対比ですね(笑)。

「ライブの醍醐味」を大切に、千秋楽まで日々修正を加えていく



──これから2月26日まで公演が続いていく中で、この劇はどんな風になっていくと思われますか?

上田 普段、公演は基本的にはあまり変わっていってはいけないというか、日々同じ焼き上がりにしなきゃいけないと思っているのですが、今回の『九十九龍城』に関しては、「“生の営み”が見えれば」というのが一番で、「我々は、生きて劇をやっている」ということを各地に見せに行くことだと思っています。だから例えば何かハプニングがあっても、それはそれでそういうものだし、調子いい日や悪い日も含めブレがあっても、「それがライブの醍醐味」みたいなところがある。だから割と今回はみんな、それもあってか日々ちょっとずつ変えたりしています。

普段、演劇で「アドリブOK」ってする現場ってそんなにないと思うし、僕らもアドリブOKではないですが、でも今回は、自分たちが楽しくて、あるライブ感が感じられるなら、多少の逸脱はお互い許容しましょうっていうような暗黙の了解ができている。それは健康的ですよね。

石田 そうですね。ストライクゾーンが広いシーンを見つけて、そこで日々、みんな投げる場所を変えたりしながら、でもちゃんとストライクには入るように、という感じでやっています。あんまり外すと上田さんが言いに来たりして(笑)、そんな感じで日々新鮮にやっています。



『九十九龍城』栗東プレビュー公演より

取材・文:中川實穗 撮影:源賀津己
舞台写真撮影:清水俊洋

ヨーロッパ企画第40回公演『九十九龍城』

■日時・場所
・福岡公演
2022年1月28日(金)~2022年1月30日(日)
西鉄ホール
・名古屋公演 ※完売
2022年2月3日(木)19:00
名古屋市芸術創造センター
・魚津公演 ※完売
2022年2月6日(日)14:00
新川文化ホール 小ホール
・高知公演
2022年2月11日(金・祝)14:00
高知県立県民文化ホール グリーンホール
・愛媛公演 ※中止
2022年2月13日(日)14:00
砥部町文化会館 ふれあいホール
・大阪公演
2022年2月19日(土)~2022年2月20日(日)
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
・横浜公演
2022年2月26日(土)13:00/18:00
関内ホール

■チケット情報:
pia.jp/t/europe-k

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