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『スカーレット』“川原家の奥さん”喜美子に向けられた期待 信作と百合子の関係は一旦保留?

リアルサウンド

20/1/7(火) 12:00

 かわはら工房に窯業研究所の柴田(中村育二)が訪ねてくる。けんかばかりしている2人の弟子にやめてもらう承諾を紹介元の柴田から得るためだった。そこに信作(林遣都)もやってくる。柴田は八郎(松下洸平)が主催する銀座の個展に向けて、喜美子(戸田恵梨香)にも「ハチの後ろに控えてお客さん出迎えてくれるんやろ」とたずねる。他の陶芸家を引き合いに出し、「川原八郎の奥さんやいう自覚忘れんといてな」と念を押して、柴田は帰って行った。

参考:『スカーレット』第81話では、黒島結菜が登場! 八郎(松下洸平)の弟子にしてほしいと頼み込む

 『スカーレット』第80回では、柴田や信作、八郎、それぞれが期待する喜美子のイメージが映し出された。信作は地元で有名になった八郎を火まつりに誘うが、なんとなく歯切れが悪い。「最近、全然飲みに行ってくれへんねんもん。昔は、よう2人であかまつ飲みに行ってたのに」とこぼす信作は、八郎との間に距離を感じている様子だ。

 信作の口から出た「あかまつ」という単語に喜美子は敏感に反応。百合子(福田麻由子)と頻繁にあかまつに出入りしている理由を問いただすが、返ってきたのは意外な返事だった。喜美子と八郎は、自分たちに向けられた「結婚して、今思い描いてた夫婦になってないやろ?」という問いに言葉を失う。信作は夫の成功の陰で雑用やサポートに回る喜美子の姿に、親友として不甲斐なさを感じていたのだった。

 「今の喜美子は喜美子やないねん。無理してたらな、いつかゆがむぞ」と言われ、喜美子は怒り出してしまう。ちなみに「百合子と付き合ってるんちゃうの?」という目下最大の関心は、「向こうがそんな気1ミリもないわ」ということで、またもやお預けとなった。

 信作から言われたことは、八郎も以前から気にしていた。その晩、八郎は喜美子に日本陶磁器次世代展への応募を持ちかける。「喜美子は喜美子でもっと世界を広げてな、もっとやりたいことやったらええわ」。それに対する喜美子の答えは「頼まれた花瓶、どんな色にしよう思てる?」。そして八郎の考えたイメージに喜美子はすらすらと釉薬の調合を答える。「10歩も20歩も下がっててもな、勉強はできるで」と喜美子。この2年半、喜美子は八郎の背中を見ながら必死に勉強していたのだった。

 世間や親友の視点を代表する柴田や信作に対して、公私ともにパートナーの八郎は同じ表現者として喜美子の実力を理解することができる。「すごいな。大したもんや」と褒めつつも、喜美子の急速な進歩に誰よりも驚いていた。その驚きが怖れに変わるのにそこまで時間はかからない。そんな男たちの期待や不安をよそに、自分の道を進む喜美子のしなやかな強さが伝わってくるエピソードだった。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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