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『おちょやん』杉咲花×成田凌、“親”として伝えた愛の形 寛治の笑顔の仮面が剥がれる

リアルサウンド

21/3/26(金) 12:00

 鶴亀の大山社長(中村鴈治郎)にお願いされ、身寄りのない寛治(前田旺志郎)を預かることになった千代(杉咲花)と一平(成田凌)。子供のいなかった天海家は天真爛漫な寛治が来たことによってさらに賑やかになるが、その笑顔の裏で寛治はおつかいのお釣りをくすねたり、家庭劇の大切な準備金をこっそり盗んでいたことが発覚する。

 実は、寛治は自分を見捨てた父親を恨んでおり、千代たちと同じように家族の温かさを知らないまま成長した子供だった。『おちょやん』(NHK総合)第80回では、千代と一平が寛治に自分たちの過去を明かす。

 千代は幼くして母親を亡くし、ロクに働かずお酒と博打明け暮れる父親に苦労をかけられたこと。半ば追い出される形で奉公先の岡安で働き始めたが、明るい道頓堀の人たちに助けられ、テルヲが積み重ねた借金の取り立てから逃げるように行った京都でも大切な人たちに出会ったこと。再会した弟と生き別れになるも一平と家庭を築き、ずっと恨んでいた死に際の父親を最後に少し許すことができたこと。

 一平も母親が他所に男を作り出て行き、父親を早くに亡くしたこと。どこにでもいるような人たちが楽しめる芝居を届けるために家庭劇を立ち上げたこと……。それらは千代と一平が歩んできた山あり谷ありの人生だ。泣き笑い、悩み苦しみながらも、周りの人たちに支えられて2人はここまで生きてきた。

 2人は寛治に一緒に暮らすことを提案する。どんなに逆立ちしても本当の親にはなれないが、千代は寛治のことが心配でたまらないという。それはかつて家庭劇でやった「マットン婆さん」のテーマだった“母の無償の愛”、千代と一平が出会ってきた数々の人たちから受けてきた愛情だ。今度はみんなに教えられた温かさを誰かに届ける番ーー。笑顔の仮面で悲しみを隠してきた寛治を千代と一平は優しく抱きしめる。血は繋がっていなくとも、寄り添い合う3人は誰の目にも家族の姿に見えるだろう。

 そして、年明けに幕を開けた舞台には千代たちと肩を並べる寛治の姿があった。演目は一平が、ソ連に亡命した百合子(井川遥)と小暮(若葉竜也)への餞に作った「人生双六」。人生のどん底にいる男2人が5年後の成功を約束し、別れるという物語だ。

「これまで辛いことばっかだったかもわかれへん。でもいつかきっと、心の底から笑える日がくる」

 それは百合子と小暮だけではなく、寛治にも向けられた言葉だろう。どんな不遇に見舞われても、人生を諦めず生きていってほしい。双六のように進んでは戻って、進んでは戻って。それでもきっと、その先で千代や一平のように「色々あったなあ」と笑える日が来るから。そんなメッセージを「人生双六」は観客に伝えた。

 しかし、時代は戦争へと突入していく。昭和16年12月、太平洋戦争が開戦。日本が優勢だと伝えられていた国民は手放しで喜ぶが、平和に暮らしていた千代たちの元にも暗い影が少しずつ差し込んでいた。

 前作の朝ドラ『エール』は踏み込んだ戦争描写で痛ましい現実を伝えたことで話題になった。『おちょやん』はどんな形で戦争を描くのか。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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