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『Free!』劇場版、『小林さんちのメイドラゴンS』と相次ぐ新作発表 京都アニメーション、再始動へ

リアルサウンド

20/9/16(水) 12:00

 京都アニメーションが、2021年に公開・放送される2本の新作アニメーションを発表した。

 一つめは、2017年に放送された『小林さんちのメイドラゴン』の続編、『小林さんちのメイドラゴンS』、そしてもう一つは人気シリーズ『Free!』の完全新作劇場版だ。

 新作発表のプレスリリースに記載された情報は、特段変わったところはなく、シンプルに2本の続編を伝えるものだった。しかし、この2本の新作発表は、「ただの新作発表」以上の大きな意味をアニメファンは感じただろう。いずれも人気シリーズの続編であるということでも注目されただろう。ただ、新作への期待感よりも、京都アニメーションがいつものように、普段通りであるかのように新作発表をしてくれたことがファンにとって最大の希望になったのではないかと思う。

『Free!』は京アニのビジネスモデルを代表する作品

「Free!」完全新作劇場版 ティザーPV

 『Free!』は、水泳にかける男子たちの情熱と友情を描いた作品だ。2013年にTVシリーズ一期が放送されて以降、TVシリーズは3作、TVシリーズの総集編を含む劇場版は4作品が製作された京都アニメーションの人気タイトルだ。

 男子水泳部員たちのそれぞれ異なる身体つきを描き分け、男性の肉体美を追求したキャラクターデザインに、真に迫った水泳の描写、水という流体を的確に描いて見せるなど、京都アニメーションの技術力と演出力の高さが存分に発揮された作品だ。

 この数年で多くのシリーズが製作されていることからもわかる通り、本シリーズは、2010年代の京都アニメーションを代表するタイトルだ。それは、人気や内容面にとどまらない、同社のビジネスモデルを象徴する作品でもある。

 本シリーズは、京都アニメーションが主催する「京都アニメーション大賞」小説部門で奨励賞を受賞した、おおじこうじの『ハイ☆スピード!』を原案にしている。同作は、受賞後、京都アニメーションの自社レーベルであるKAエスマ文化から書籍化された後にアニメ化された。

 京都アニメーションは、2000年代に入ってTVアニメの元請けとして頭角を現したが、他社の原作をアニメ化することが多かった。しかし、2010年代に入ってからは、京都アニメーション大賞で光った作品を自社レーベルから出版、後にアニメ化するという流れで、オリジナル企画を手掛ける機会を増やしている。これによって原作の著作権及び商品化権などを自社で保有することで製作委員会から分配される金額のみならず、原作権を持つことによってさらに大きな収入を得ることが可能になるし、製作におけるイニシアチブも握ることができる。

 こうして、他社の原作を高品質なアニメにするだけではなく、原作そのものを作り出す会社として変化しようとしていたのが、2010年代の京都アニメーションの特筆すべき点だった。

 『Free!』は、そんなビジネスモデルで生み出された作品の中で最大の成功例と言える。TVシリーズ3作、劇場版4作、そして来年に5作目の劇場版を公開するほどの人気を獲得し、数多くのキャラクター関連グッズの売り上げも大きく、レストランなどとのコラボも積極的に行っている。京都アニメーションは上場企業ではないため、収益の割合は不明だが、シリーズの製作本数とその展開の規模からすると、近年の京都アニメーションのビジネスを支える屋台骨とも言えるタイトルだったと思われる。

 もちろん、内容的にも期待は大きい。躍動感ある描写の多い本作は、スクリーンで観るのがふさわしい。本作の物語は、原作からさかのぼると小学生時代から始まり、TVシリーズ第3期では、主人公たちの大学生時代が描かれ、来年の劇場版では世界に挑戦する姿が描かれるという。スポーツを題材にした作品で、小学生時代から世界へとはばたくまでを追いかけた作品はそう多くない。製作者たちとファンの情熱が実を結んだ素晴らしい結果ではないだろうか。

 京都アニメーション大賞は、当面の間休止されることが発表された。この画期的な事業モデルがいつか復活することを願うためにも、『Free!』完全新作劇場版の成功を願わずにはいられない。

『小林さんちのメイドラゴン』で今ひとたび日常ものを 

 2010年代の京都アニメーションは、KAエスマ文庫発の自社オリジナル企画と、『響け!ユーフォニアム』など他社の原作のアニメ化をバランスよく作り続けてきた。今回第2期の製作が発表された『小林さんちのメイドラゴン』は、双葉社の『月刊アクション』で連載中のクール教信者による同名漫画を原作としている作品だ。

 本作の第1期は2017年に放送され、2019年2月には第2期の製作がすでに発表されていた。発表が2019年7月前であったため、企画がどうなるのか危ぶまれていたが、この度正式に2021年の放送が発表され、ファンは安堵したことだろう。

 本作は、システムエンジニアとして働く独身女性、小林さんの元に、異世界からドラゴンが人間体のメイドとして現れ、助けてもらったお礼のために住み込むことから始まるファンタジー日常系コメディだ。

 ドラゴンがメイドをやるというユニークな発想で、ドラゴンと人間の奇妙な共同生活の中で起きる様々な騒動をコミカルなタッチで描く作品で、京都アニメーションの細やかな生活描写が光る作品。

 本作は、基本的にはいわゆる日常ものだが、異世界で人間たちとも殺しあっていたドラゴンの血なまぐさい一面が顔をのぞかせる瞬間があり、平和な日常が薄皮一枚で壊れてしまいそうな緊張感を感じさせる場面があるのが特徴的だ。

 かけがえのない日常がいかに大切なものかを思わずにはいられない作品で、平和は決して当たり前のものではないことを描いた作品と言える。

 失った日常は決して戻ってこない。しかし、再び力強く新しい日常を生きることはできる。今、京都アニメーションが日常系アニメを作るということに、筆者はそういう強い意志を感じる。

 こうして、新作の発表がなされたことで、2019年7月以前にアニメ化が発表されていた『響け!ユーフォニアム』久美子3年生編や、KAエスマ文庫の『二十世紀電氣目録』アニメ化の企画も再び動き出すかもしれない。

 この2本の新作発表は、「ただの新作発表」以上の意味があると先に書いた。それは、京都アニメーションが、再び力強く、素晴らしいアニメーションを作り続ける日常を生きていることが確認できたからだ。9月18日から公開の始まる『劇場版 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』ともども、来年の新作を楽しみに待ちたい。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■公開情報
『Free!』完全新作劇場版
2021年公開
(c)京都アニメーション

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