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畠中祐、入野自由、蒼井翔太……優れたアーティスト性を発揮した男性声優シンガー新譜5選

リアルサウンド

19/4/14(日) 12:00

 歌手デビュー10周年を迎えた2018年にベストアルバム『MAMORU MIYANO presents M&M THE BEST』をリリース、今年2月には新曲「ぼくはヒーロー」で『NHKみんなのうた』に初登場し、5月には劇場アニメ『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』の主題歌を表題曲とするニューシングル『アンコール』のリリースを控えている声優・宮野真守。卓越した歌唱力とダンスパフォーマンス、そして幕間にコント映像を挿む独自のエンターテインメントを追求したライブステージも人気で、今年は台湾と上海公演を含む初のアジアツアーを開催することも決定しています。

 そんな彼と同じように、男性声優のなかには、歌手活動を行うことで優れたアーティスト性を発揮している人たちが多く存在。近年の2.5次元的な展開を含めたキャラクターコンテンツの隆盛も相まって、ステージやライブパフォーマンスにおいても華のある人材が続々とデビューを飾っています。ということで今回の新譜キュレーション連載では、男性声優アーティストの作品に絞って5タイトルを紹介します。

 個人的にイチ押ししたいのが、『うしおととら』の主人公・蒼月潮や『遊☆戯☆王ZEXAL』の九十九遊馬役などで知られる畠中祐の1stアルバム『FIGHTER』。セガゲームスとランティスの共同制作による音楽アプリゲーム『夢色キャスト』への参加が縁で、2017年7月にランティスから歌手デビューした彼。ハスキーながらも清涼感を感じさせるその声質は、前述の声優としての仕事歴からもわかるとおりナチュラルなヒロイック成分を含有していて、真っ直ぐかつ伸びやかに響く歌声は非常に魅力的なものとなっています。

畠中 祐 / 1st Album「FIGHTER」全曲視聴

 音楽的にはダンスミュージックの要素を取り入れたポップスを志向しており、デビュー曲「STAND UP」では宮野真守に多数の楽曲(「…君へ」「ヒカリ、ヒカル」など)を提供してきたTSUGEを起用して推進力のあるEDMポップを、佐藤純一(fhana)が作曲した「真夏BEAT」ではA-bee編曲によるトラップのフレイバーも含んだ爽快なエレクトロハウスを歌唱。今回のアルバムも全体的にダンス路線を貫いていて、中土智博の作編曲によるビートの効いたリード曲「Fighting for…」をはじめ、2ステップ調の「Addicted」、パーカッシブなリズムが小気味良い「オド☆リバ〜MUSIC IS MAGIC!〜」など、キャッチーで踊れる曲を満載しています。感謝の気持ちを自作詞で伝えるスケールの大きなバラード「あの日の約束」といった純粋に歌唱力で勝負した楽曲も素晴らしく、音楽的に非常に高いポテンシャルを感じさせる作品です。 

 続いては『千と千尋の神隠し』ハク役を皮切りに、『聲の形』の主人公・石田将也、『おそ松さん』松野トド松など幅広い役を演じる実力派・入野自由のミニアルバム『Live Your Dream』をピックアップ。今年で歌手デビュー10周年を迎える彼は、昨年発表したシングル 『FREEDOM』にてカップリングを含む3曲すべてをシンガーソングライターの向井太一に提供してもらい、近年のR&B〜アーバンポップス的な作法に挑戦。その前作となる2ndアルバム『DARE TO DREAM』でもMummy-D(RHYMESTER)、尾崎雄貴(Bird Bear Hare and Fish)、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND、シミズコウヘイ(元カラスは真っ白)らに楽曲提供を受けるなど、多彩なクリエイターの協力を得て自由に音楽の翼を広げてきました。

 今回のミニアルバムでは、初めてすべての収録曲の作詞をみずから手がけ(共作を含む)、より自分らしい音楽表現を探求。近年は(K)NoW_NAMEのボーカリストとしても活躍するNIKIIEが作曲したリード曲「誰からも愛されるあなたのように」では、たおやかなメロディとサウンドに乗せて様々な出会いがもたらす人生の豊かさを情感豊かに歌唱。アコースティックギターとサンバ風のリズムが心地良い景色を描き出す「Monet」、『DARE TO DREAM』に続きマツキタイジロウ(SCOOBIE DO)が曲提供したシティーポップ調のファンキーな「Lazy morning」、川谷絵音や休日課長らも参加するインストバンド・ichikoroを率いるichikaの変幻自在なギタープレイが光る「例えば歌が日記だったなら」など、入野自身の優しい視点によって育まれた歌詞と歌声が多彩な曲調で楽しめる一枚になっています。

 そして声優アーティストとして着実に支持を広げているのが蒼井翔太。2018年にはTVアニメ『ポプテピピック』にまさかの実写出演して話題をさらった彼ですが(今年4月1日放送の『ポプテピピック TVスペシャル』でもやってくれた!)、元々は声優になる前からSHOWTA.名義でシンガー活動を行っていたこともあって、歌唱力やパフォーマンス力においてはずば抜けたセンスを持っていることで知られています。何より特徴的なのが甘く滑らかなハイトーンボイス。その歌声にはジェンダーレスな魅力が備わっていて、実際にTVアニメ『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』では女性キャラクターのカリオストロ役を務めて、キャラクターソングも歌唱。水樹奈々のライブ(『NANA MIZUKI LIVE GATE 2018』)にゲスト出演した際には「Synchrogazer」を原曲キーのまま本人とコラボして会場を沸かせました。

蒼井翔太「Tone」MUSIC VIDEO (short ver.)

 そんな彼のニューシングル『Tone』の表題曲は、自身も神崎澪役で出演する2019年春の新作TVアニメ『この音とまれ!』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマ。作詞・作曲に園田健太郎(Machico「fantastic dreamer」、オーイシマサヨシ「Hands」など)、編曲に日比野裕史(AAA「777 〜We can sing a song!〜」「Wake up!」など)を迎え、ときに不協和音を起こしながらも重なり合うことでひとつになる人々の気持ちを「Tone(=音色)」という言葉になぞらえた、爽やかなダンスポップ曲に仕上がっています。カップリングには、蒼井自身が作詞・作曲した繊細なニュアンスの歌声が魅力的な「奪えないもの」、サビでブロステップ風に展開する壮大なダンスチューン「Bet On You」を収録。ジャニーズやLDHといった日本のヒットチャートを席巻する楽曲群と比べても何ら遜色のない、ハイクオリティーなポップス作品と言えるでしょう。

 また、この3月には『アイドリッシュセブン』和泉一織、『B-PROJECT』釈村帝人、『刀剣乱舞』加州清光ほか数々の人気TVアニメでキャストを務める増田俊樹がアーティストデビュー。その1st EPとなる『This One』は、小松未可子「Maybe the next waltz」のアレンジや7月にアニメ放送を控える『Re:ステージ!』関連楽曲(最近だとKiRaRe「ハッピータイフーン」が高速ディスコですごかった!)、TVアニメ『エガオノダイカ』の劇伴などで注目を集める音楽家・伊藤翼がサウンドプロデュースを担当(作詞・作曲はSETSUNA SPIRALの希瀬)。流麗なストリングスとドライブ感溢れるバンドサウンドの絡みに、主役の品格とエモーションを併せ持ったボーカルがマッチした「風にふかれて」を筆頭に、ポップスの粋を感じさせる全3曲を収録しています。オリコンの週間ランキングで初登場8位を獲得したことからも、その注目度の高さが伝わるのではないでしょうか。

増田俊樹「風にふかれて」Short ver. from 1st EP “This One”

 なお、5月には増田と同じトイズファクトリー所属の古川慎が、ニューシングル 『地図が無くても戻るから』をリリース。こちらは自身がサイタマ役で主演するTVアニメ『ワンパンマン』(テレビ東京)第2期のエンディングテーマに決定しています。さらに同月には、TVアニメ『アイドルマスターSideM』都築圭やイケメン役者育成ゲーム『A3!』瑠璃川幸役で知られる土岐隼一も、シングル『約束のOverture』でポニーキャニオンよりメジャーデビュー。彼はかねてより声優ユニットの&6allein(アンドシクスアレイン)でも音楽活動を行っており、待望のソロデビューとなります。

 そんな活況ぶりが影響してなのかはわかりませんが、なんと鈴村健一と寺島拓篤というソロ歌手活動の実績も十分な二人が、ここにきて新ユニットのKing&Rogueoneを結成。昨年12月に東京・両国国技館で行われた男性声優アーティストによる祭典イベント『Original Entertainment Paradise』にサプライズ登場し、ユニット結成を表明した彼らは、この4月にシングル『King&Rogueone』でデビュー。二人とも普段と違ってサングラスをかけたビジュアルなので、どんなにクールな楽曲が飛び出すのかと思いきや、「King&Rogueone=キンガンロウガン」ということで近眼・老眼を題材にしたユーモラスなナンバーになっています。曲の途中に『ヒプノシスマイク』ばりのラップパートがあったりと(リリックは寺島によるもの)、大人の遊び心を満載した本ユニット。肩ひじ張らずに楽しむことができるという意味において、ライブでのコント映像を恒例化している宮野と同様のエンターテインメント精神を感じずにはいられません。

King&Rogueone / 「King&Rogueone」Music Clip Short ver.

■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。

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