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稲垣吾郎、グラデーションを楽しむ人生 ラジオでの発言から感じた、矛盾すら受け入れる力とは?

リアルサウンド

21/2/22(月) 6:00

 SNSで花のある生活を楽しむ様子を発信している稲垣吾郎。昨年に発売されたフォトエッセイのタイトルにも『Blume』(ブルーメ)と、ドイツ語で“花”を意味する言葉を用い、稲垣の生活にとっていかに花が欠かせないかが伝わってきた。だが、17歳のころの稲垣は「花が好きではなかった!?」という疑惑が、ラジオ『編集長 稲垣吾郎』(文化放送)2月17日放送回で持ち上がる。

 きっかけはリスナーから送られてきた一通のメールだ。17歳の稲垣が登場した雑誌のインタビューで「花を見てキレイだとは思うけどね。男ってあまり花に興味はないから。お母さんや好きな人にあげるときぐらいしか、花を買おうなんて思わないんじゃないかな。お花を自分のために買うなんて、ちょっとやばいヤツなんじゃない?」とコメントしていたというのだ。

 今の稲垣からは想像できないような内容に、どのようなリアクションを見せるのかと思いきや「もう(花が)好きな片鱗は隠れていますよね。あえて好きだけど、ちょっと逆をいってますよね。嘘インタビューですね(笑)」と軽やかに笑ってみせる。

 稲垣の分析によると「お母さんや好きな人にあげるときぐらいしか、花を買おうなんて思わない」と言っている時点で、すでに「大切な人には“花”」という考え方が17歳なりに確立されているというのだ。にもかかわらず、嘘インタビューになってしまったのは、「まだ自分のために買うということに対する照れがあったのかな」とも。

 要は意識をしていたかどうかだったようだ。我慢をして本当は好きなのに隠していたわけでもなく、単に自分のために買うほど好きかどうかを自覚することができていなかっただけ。記憶を紐解けば、20歳のころにはすでに花柄のシャツなど花のモチーフが好みだったことを考えると、当時から潜在的に“好き”という気持ちがあったはずだ、と続ける。

 そこから部屋に花があるのが当たり前の景色になったのは、30歳のころ。特別なきっかけがあったわけではなく、徐々に“好き”が顕在化してきたようだ。周囲には花に詳しい人も増えていき、行きつけの飲食店で美しいアレンジメントが飾ってあるフラワーショップを紹介してもらった……そんな嬉しい出会いたちも、少しずつ変化していった要因のひとつだった。

 「面白いですね、こうやって振り返ってみると」と続けた言葉に、改めて“稲垣吾郎らしさ”を感じた。現在の感性とは真逆なコメントに、本来なら「変わってしまった」と過去との断絶を感じるものだが、稲垣の中にはたしかに連続したグラデーションが感じられるのだ。

 自分にも見えているものと見えていないものがあり、そしてその見えていないときの感性もまた自分自身であること。自覚をしていないだけで、潜在的な想いがあること。それは、明確に白黒をつけるのは難しいがそれも人生の流れの中にあること。そんなグラデーションを描く自分自身を受け入れ、楽しむ様子が、稲垣のミステリアスな魅力の根源のように感じる。

 例えばワインや写真、文学を愛する姿勢など、稲垣のいわゆるパブリックイメージ通りの言動とは逆に、バラエティで思い切ったコントに取り組んだり、ラジオで饒舌な姿を見せたりする、つまりは「意外だ」と思われる言動も、新しい稲垣を見られたという新鮮な喜びになる。「っぽいところ」も「っぽくないところ」も、どちらもあって“稲垣吾郎らしさ”。一見すると矛盾してしまうような部分をスッと受け入れられるところが、彼の持つ不思議な力だ。

 そして、そんな稲垣だからこそ、新作舞台『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』に挑めるのではないかとも思う。今回、稲垣が演じるのは歴史上実在したシャルル=アンリ・サンソン。死刑執行人という現代を生きる私たちからするとショッキングな役柄だ。生まれながらに決められた死刑執行人という職業。だが、サンソンは死刑廃止論者でもあったという。

【稲垣吾郎 主演】舞台「サンソン ールイ16世の首を刎ねた男ー」2021年4月上演

 厳しい運命と自らが抱える大きな矛盾に苦しみながらも希望を求めたサンソンと、多くの人が抱くイメージと自分自身のギャップの間をしなやかに生きてきた稲垣がリンクする。一体、どんな舞台に仕上がるのか、今から楽しみだ。

 激動のフランス革命期と、生活様式がガラリと変わり誰もが混乱している現代。新しい時代を迎え入れていこうという意味では、きっと共通する部分がある。その渦中では、白黒つけられないことも多々ある、そのことを身をもって感じている今。稲垣の見せる、断絶ではなくグラデーションな人生をより意識していきたい。

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