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Age Factoryが到達した新境地ーー3作品連続リリースで起こす「日本ロック界における革命と挑戦」

リアルサウンド

19/10/4(金) 18:00

 バンドシーンの異物であり続けるAge Factory。怒り・孤独・寂しさを飲み込み、情緒を揺らす独自のサウンドを各地のライブハウスで鳴らし続けてきた彼らは、UK.PROJECT内のレーベル<DAIZAWA RECORDS>に移籍。この夏、「CLOSE EYE」、「HIGH WAY BEACH」、「nothing anymore」の3作品をデジタルリリースした。今回この3作品についてレビューし、前作『GOLD』からさらなる進化を遂げる彼らのこれからを掘り下げる。

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 2018年にリリースされた2ndフルアルバム『GOLD』。これを引っさげ行われた渋谷WWW Xでのワンマンライブで、彼らのライブを初めて見た。「このバンド、ヤバいな。」が、第一印象のロックバンドってそう多くないと思う。彼らは完全にいい意味のそれだった。血が沸き立ち、滾り、鉄を打ったかのような熱を感じる場面もあれば、心の奥底に眠る寂しさや孤独を、コーラスを交えながら優しく歌い上げる。今のバンドシーンに在るありふれたポップさ、わかりやすさ、共感では得られない満足感が彼らの音楽には存在していた。「お客さんの顔が変わった」と、この日のワンマンライブでもメンバーが口にしていたが、『GOLD』というアルバムは、彼らの音楽に出会う間口を広げ、彼らの音楽性・精神性に惹かれる新たな層を獲得した作品だったように思う。表題曲でもある「GOLD」は、圧倒的にフィジカルで戦える強さを持ち、闘争心を掻き立てるアンセム。ライブの初っ端からフロアにブーストを掛けていく様は、ある意味、宗教的だなとも思うくらい圧巻で、まるで王のような佇まいすら感じる。本当に今、面白いバンドであると言い切りたい。

 冒頭にも書いた通り、彼らは7月に<DAIZAWA RECORDS>に移籍した。そのタイミングで今夏リリースされた3作品の第1弾シングルが「CLOSE EYE」。彼らの核にあるハードコアの衝動が色濃く反映されている。一貫性や脈絡のない散文詩を書き連ね、〈目を閉じろ〉と、何度も叫ぶ。この散文詩の羅列は、現代社会で私たちを取り巻く「なにか」に置き換えられると思う。情報に包囲され、無意識にそれらに侵食され、事の深部に辿り着くことも容易ではなくなった。その一切から「CLOSE EYE」=「目を閉じる」ことで、自己と対峙し、向き合い、己の真の感覚・感情に気付き、本質を見つめることができる。その先に、不必要な「なにか」の淘汰、破壊、逃避に繋がっていく。〈2020年 もう形に意味はなくなり 新しい人の時代 僕らはどうしたい〉という歌詞があるが、来たる新時代、”己の精神を強く持て、自分で考えろ”という警鐘のようにも聴こえてくる。あくまで解釈はこちらに委ねているし、考えさせる余白を残しているところもこの曲の妙だ。MVからも怒りや、狂気、徹底的なバイオレンスを感じさせる。尖りきったこの曲で、フロアが踊ると思うとより宗教的だし、はやく目にしたい光景だ。

 「CLOSE EYE」から一転、心地の良いメロディアスなフレーズから展開されるのが第2弾シングル「HIGH WAY BEACH」だ。この曲は、清水エイスケ(Vo)がARSKNのRY0N4と地元である奈良県での作業中に、高速道路の音が波の音に聴こえたことから歌詞ができたという、疾走感漂うエモーショナルロックナンバー。瑞々しい爽やかな青春ではなく、若者の気だるさを纏った青春が思い浮かんだ。もう子供でもなく大人でもないモラトリアムの真っ只中で歌っているのは、限りない“青さ”。若さゆえの焦燥・脆さ・儚さ・繊細さ、どこか満たされない空虚な雰囲気すら漂っている。私自身、その真っ最中に居るからだろうか、凄く自然に体に入ってくる。MVには、制作を共にしたRY0N4も出演。この曲のエモーショナルな部分が、若者が酒と煙草を片手に深夜の街を歩くシーンで描写されている。退屈な日常も、もう少し年をとってしまえば幻になってしまって、その幻が目覚めてしまうことも知った上で、目覚めてしまわないようにと歌う。幻の中で見える景色や、感性が若者にしか感じることのできない尊く美しい感覚であることを悟っているかのようだ。若者が生み出すカルチャーが、いつだって時代を創っていく。その一翼をこの曲は担っているのではないだろうか。

 そして、長い夏の終わりに第3弾シングル「nothing anymore」がリリースされた。この曲は、〈帰り道の匂い〉〈駆け抜けた団地〉〈祭りの夜〉など、清水の脳裏に焼きつく忘れられない憧憬の数々が登場する。聴いていてやはりどこか懐かしいし、映画のような物語性を感じるのは必然だろうか。もしその映画のエンドロールでこの曲が流れていたら間違いなく心がギュッとなる。またコーラスに、清水が高校生の頃から聴いていたきのこ帝国の佐藤千亜妃を迎え制作された。コーラスはこれまでも彼らの楽曲において大切な要素であったが、この曲でも最大限に活かされている。アコースティックギターの揺るやかなアルペジオから始まり、清水のしゃがれた声と佐藤の透き通った声が調和していく。ハイハットがリズムを刻みどっしりとベースが腰を据える。相反した声の重なりは、切なさも美しさも何倍にして曲に還る。最高のバラードだ。

 『日本ロック界における革命と挑戦』と銘打ってリリースされた3曲。ブレたり、ズレたりすることなく脈々と激情的で芯の通った精神性を貫き、サウンド面を磨き上げ新たなフェーズへ突入したAge Factory。現在のバンドシーンにメスを入れ、孤高の存在であることを選択する彼らは、覇王のような強さや逞しさを持つ反面、弱さも孤独も知っている。だからこそ彼らが歌うことに意味があるし、確固たる自信にも繋がっているのだと思う。フロントマンの清水は、自ら壁をぶち破り多角的に描いたイメージに向けて自分たちをプロモートしていく力があり、西口、増子はバンドの土台をしっかり固めているように感じる。バンドへの信頼があるからこそ、この3人のバランスで、清水が大きく旗を振れるのではないだろうか。この挑戦と革命で彼らがスタンダードを創り上げる過程を共に見ていたいし、Age Factoryが舵を取るロックシーンが楽しみだ。現在、キャリア初のワンマンツアーを開催中。各地、革命の夜をその目に焼き付けてほしい。(石見優里佳)

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