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ディーン・フジオカが語る、令和の『シャーロック』への挑戦 

リアルサウンド

19/10/7(月) 6:00

 『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-』、『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』と、古典文学の傑作をベースにしたフジテレビ系ドラマに連続して主演し、高い評価を得てきたディーン・フジオカ。今度は月9枠で、アーサー・コナン・ドイルが生んだ世界一有名なミステリー小説『シャーロック・ホームズ』を下敷きにした、“令和の東京”が舞台の『シャーロック』に挑む。

 今作では、フリーランスの犯罪捜査専門のコンサルタント“シャーロック”=誉獅子雄をディーンが、シャーロックのバディである医師・ワトソンに該当する若宮潤一を岩田剛典が演じて難事件に立ち向かっていく。

【写真】『モンテ・クリスト伯』のディーン・フジオカ

 脚本に『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』、『白い巨塔』の井上由美子、演出に『モンテ・クリスト伯−華麗なる復讐−』、『刑事ゆがみ』などの西谷弘らと、名作を手掛けてきたスタッフ陣の顔ぶれからも期待が高まる現代日本版『シャーロック』。主演を務めるディーンに、今作ならではの“シャーロック”像へのこだわりや、『モンテ・クリスト伯』に続いて組んだ西谷監督の演出などについて聞いた。

■「オリジナリティが生まれてくる」

――世界一有名な探偵“シャーロック”の日本版です。いわゆる“シャーロック”のイメージと、今作だからこそのイメージの両方をミックスされているかと思います。

ディーン・フジオカ(以下、ディーン):“シャーロック”にはいろんなアイコニックなところがあります。着ているものや帽子、バイオリン、ボクシング、口調やしぐさなど。そうしたものをとても緻密に取捨選択しながら進めています。

――確かにバイオリンやボクシングなど、“シャーロック”は多才です。今回のドラマでもそういった部分は楽しめますか?

ディーン:今のところ殴り合いはしていませんが、ボクシングをやっている人だからこそのアクションの身のこなしといいますか、そうした動きはあります。バイオリンは誉獅子雄が頭の中で物事を整理するときの、象徴的な道具として使われています。めちゃめちゃ苦労しながら取り組んでいます(笑)。

――誉獅子雄ならではの部分はどういったところでしょうか。

ディーン:謎解きをするときに、非常に長いセリフを呼吸せずに1ブレスで説明していきます。ゼイゼイ言ってはダメですし、言い終わってまたすぐに次のセリフが来るので、大変ですが、そうしたせめぎ合いの中に、オリジナリティが生まれてくるのだろうと感じています。日本語だからこそのリズムや言い回しにも気を付けていますね。

――日本語だからこそ、ですか?

ディーン:主語と述語、文章を構成する単語などを、どう紡いでいくと思考の流れが一番スリリングに見えるか。それって言語によって違うと思うんです。日本語だとこれを省略すべきだとか、途中をすっ飛ばしても、最後にもう1度代名詞ではなく、名前を言うとか。そうした細かいセリフの微調整を全テイクでやっています。てにをはや、語尾、倒置法など、すべてに気を配っていますね。ラップ、もしくは日本の詩、童謡の気持ちよさといったものに似た、どこか音楽的な感じもあると思います。

――“シャーロック”のセリフ回しは、その作品の色を決めると思いますし、とても楽しみです。外見や風貌でこだわっているところも教えていただけますか。

ディーン:“シャーロック”というと、常にロングコートを着ているイメージだと思います。そうした部分を踏襲しつつ、獅子雄には、ちょっとレトロな和テイストがディティールに入っています。一瞬、手ぬぐいかなと思うような生地といいますか(笑)。それから、謎を解いていく過程で、いろいろな扉の鍵を開ける必要が出てくるのですが、ピッキング犯が使う針金みたいなものを指に巻いていて、それが指輪のように見えます。それを使って、どんなドアでも開けていく。その感じは、今回のオリジナルなんじゃないかと思います

■「愛ゆえに一線を超えることもあるかもしれない」

――難しい質問かとは思いますが、人が犯罪を犯す心理、一線を超えるポイントとは何だと思いますか。罪を犯す者と犯さない者を、何が分けているのでしょう。

ディーン:うーん、難しいですね。(しばし考えてから)本来であれば愛があるからこそ踏みとどまれると思えますが、時には愛ゆえに一線を超えることもあるかもしれない。なかなか単純な世の中ではありませんし。難しいですね。ただ決して法律とか、そういったものではないと思うんです。一線を超える……。そのテーマでいくらでも映画を作ることもできますよね。たぶん、そこに対する興味というのが、この作品にとっての“シャーロック”のひとつのエンジンなのかもしれません。

――“シャーロック”のエンジンですか。

ディーン:人はなぜ罪を犯すのかということに対して、“シャーロック”自身、自分の中にあるそうした犯罪衝動みたいなものと向き合いながら対峙している。だからこそ謎を解くことに対して異常な執着心があるし、特殊能力ともいえる推理力にも説得力が伴うのだと思います。これだという答えは言えませんが、そこに向き合うことが、今回、“シャーロック”を演じるうえで、ひとつの大きな裏テーマでもあるのかなと思いますね。

――『モンテ・クリスト伯』の西谷監督との再タッグです。西谷監督らしさをどんなところに感じてますか?

ディーン:とにかく割本(台本から、その日に撮影されるする部分を抜粋し、カット割りや監督の意図などを書き込んだもの)が細かいですね。事前の段階で相当な準備をされているのが伝わってきますし、だからこそ現場で何かしらの対応や変化を加える場合にも、周りもついてこられるのだと思います。

――どういったところが細かいのですか?

ディーン:たとえばストーリーの中で主軸にならないようなキャラクターがいますよね。そうした人のバックボーン、設定も考えられているんです。エキストラにも細かい演出をされています。トータルとして、作品のクオリティをちゃんと上げようという意識があって、カメラのフォーカスが当たっているところだけではなく、全体を引き上げることへの執念みたいなものを感じます。だからこそ、みんなが西谷さんのジャッジに対して信頼感を持つのだと思います。

――今回、新しく感じているところはありますか?

ディーン:『モンテ・クリスト伯』のときに比べると、すごく丸くなられた気がします(笑)。こういうやり方もあるんだなと。『モンテ・クリスト伯』は本当に何でも出てくるイベント盛りだくさんの作品だったので、ストイックに、シビアにならざるを得ませんでした。『シャーロック』の場合は、フィジカル的には『モンテ・クリスト伯』より負担が軽い。肉体ではなく、脳みそを使って、そちらの神経をすり減らす感じですね。今回は、監督の仕切り方がすごく優しく、柔らかいです。柔軟に、状況によってリーダーシップの取り方を変えられる凄さを感じています。

この前、西谷さんが「これが令和のシャーロックの姿だと思います」と言ってくださったんです。その言葉が、自分にとってのひとつの自信に繋がっていますし、西谷さんのイメージに少しでもシンクロし始めているんだなと、手ごたえを感じています。

(望月ふみ)

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